エリアナビ長野_観光・ホスピタリティ特集

Special interview

長野県は、美しい自然や温泉など日本でも有数の観光資源を持つ県であり、多くの環境産業が成立しています。観光関連業界では「ホスピタリティ」という言葉が、今後の業界のあり方のひとつのキーワードとして語られています。10月からは、長野県主催により、「ホスピタリティの向上による『もう一度訪れたくなる』信州づくり」をテーマに、「信州おもてなしカレッジ」が中野・上田・辰野・松本の4会場で開催されています。

同様に「ホスピタリティ」という言葉が良く使われる産業として「福祉」関連の業界が挙げられます。こうしたスタッフがお客様やユーザーをお世話する・サービスするという仕事内容の事業分野で「ホスピタリティ」という言葉が盛んに取り上げられるようになってきました。

スタッフがサービスをお客様に提供する従来の「サービス産業」と「ホスピタリティ産業」との違いと、今なぜ「ホスピタリティ」なのか、観光産業や福祉産業はどういった方向に向かい、どんな人材を求めているのかを松本大学 総合経営学部 観光ホスピタリティ学科の学科長である佐藤教授に伺ってみました。


これまでの「サービス」というものは、お客様は神様でスタッフの側が一方的に仕えるということで、従来の旅行業・サービス業というのはそういった考え方でやってきたんですね。
一方「ホスピタリティ」というのは、お客様とサービスを提供する側とがある種対等の立場で、それぞれが関わり参加する。働く側は、お客様を鏡としてサービスの中身を上げていくと同時に、お客様も一方的にサービスを受けるだけではなく、かかわりの中でサービスを向上させていく。例えば現場をひとつの舞台と考えると、両者がともに参加して、相乗効果でより良いもの、より良い空間を作っていこうということなんです。 また、その過程の中でお客様だけでなく、働く側も含めた両者の満足度をより高めていこうという考え方でもあります。
観光業などのサービス業は、どうやってお客様とサービスを提供する側両者の満足度を上げていくかという、「人づくり」的な、あるいはサービスそのものをつくりあげる、仕掛けをつくっていく産業になりつつあるんです。

sato1

これからの企業は、お客様、従業員両者の満足度を上げることを考えていかなければやっていけない、また地域社会への貢献ということも考えていかなければならない、「ホスピタリティ」はそうした思想の土台になる考え方です。

従来のサービス産業は一方的に仕えるというネガティブに捉えられる面もあったと思いますが、現在は新しい価値観を創り出していく産業になりつつある、非常にクリエイティブな産業へと、こうした観光や福祉などの「ホスピタリティ」産業は転換する段階にあると思います。 実際に海外などではそうなってきています。
観光業というものは、単に観光ではなく、みんなで一緒になって「町をつくる」こと、さらに言えば「人をつくる」こと、その中で自分も成長するということでやっていく必要がある、そういったことが分かり始めてきているのではないでしょうか。

sato1

その意味では、福祉分野でも同様で、体の不自由な方やお年寄りなどに、ただ一方的に世話をするという考え方ではなく、万人に対応するような方向性が生まれていますね。つまりだれでもなにがしらハンディを持っているのですが、それでもそれぞれやりたいことがあって、その人たちのやりたいことを見つけ、達成させることでともに達成感を得、ともに成長し、さらにともに生活する地域コミュニティをつくっていく、という考え方がうまれてきて、社会もそういった方向に向かっています。

地域や社会にどれだけ貢献できるか、自分もどう成長できるのかそういった視点で観光というものを捉えるようになってきていて、実際「松本大学」ばかりではなく、学びに観光的な要素を取り入れているところは、この「ホスピタリティ」という分野に目をつけ始めています。
まだ国内での捉え方では多少かみ合わない面がありますけれども、海外で観光やこうした「ホスピタリティ」産業について学んでいる大学とはまったく一致しますね。

sato1

また「ホスピタリティ」は、観光産業や福祉などの分野ばかりではなく、本来どのような産業でも使える柔軟性があり、万人型のものです。したがって、あらゆる産業や生活にも生かすことのできるものでもあります。
先日もある銀行の方に本学の学生向けに講義をしてもらったところ、「ホスピタリティ」はまさに銀行でも求めるもだという感を強くしました。信頼関係のない産業は将来性がない、その根幹を支える考え方が「ホスピタリティ」であるともいえると思います。

松本大学では3年前から松本市と協力して、市民のホスピタリティ力向上に向けて市民カレッジを開催してきました。昨年からは文科省からも事業が認められて国の受託事業にもなりました。こうした経験を受けて、長野県でもこの10月から、他大学も参加した人づくり社会講座として、「ホスピタリティ」についての理解を深め、訪れる人にとっても住む人にとっても魅力ある信州づくりという考え方で、「信州おもてなしカレッジ」という講座を県内4会場で開催するなどの取り組みを開始しています。

Special Guest Profile

sato1
 佐藤博康(さとう ひろやす)
 松本大学 総合経営学部
 観光ホスピタリティ学科 学科長・教授
 長野県観光振興審議会 会長
 YOKOSO!JAPAN大使
 NHK番組「Cool Japan」出演中
ページTOPへ