関西大学
学長
高橋 智幸

山形県出身。東北大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。2018年に関西大学 社会安全学部長。理事、副学長を経て、2024年10月、学長に就任。

大学に入学したのは、バブルの絶頂期。好奇心旺盛だった私は、学業はもちろん、アルバイト、友人のイベントへの参加など、様々なことに没頭した。多忙な学生生活となったが、どの経験も無駄なものはなく、その後の人生に活かされている。
学業が本格化したのは四年生になってから。研究室に配属されると、たちまち研究の面白さに魅了された。私の専門分野は津波や洪水、水災害に関することだが、指導教員がその分野の第一人者であったこともあり、充実した研究生活を送ることができた。卒業論文が専門誌に掲載されるなど、研究の成果が認められるようになると自信もつき、いつしか目標は、自分の研究分野にとどまらず、一般の人々も共感できるようなインパクトを与えることに変わっていった。
正直、研究はしんどいことが9割だったが、その中でも、新しい発見や価値ある結果を導き出せたときの喜びはひとしおで、その達成感があるからこそ、研究に集中できた。また、研究室に入る前、アルバイトに没頭した経験も、私の研究生活を支えてくれた。
アルバイトに打ち込んだのは、学部の三年生になるまでの間。飲食店をはじめ、日雇いの工事現場、食品製造工場、専門学校の講師、ビリヤード店の店長代理など、ジャンルを問わず、さまざまな仕事に挑戦した。最初は生活費を稼ぐことが目的だったが、多種多様なアルバイトを経験するうち、様々な世界や価値観を知る面白さに魅力を感じるようになった。
価値観が違えば、意見のぶつかり合いもある。しかし、本音で語り合うことで、自分にはない視点や考え方に気づくこともできる。ダイバーシティの重要性に気づくきっかけともなったし、相手が何を考え、自分の主張とどう違いがあるかを冷静に考えることで、結果として洞察力を養うことができた。この経験は、その後に没頭する研究の場でも大いに役立ち、当時出会った仲間たちは、ケンカした人も含め、いまでも良きライバルとして、または相談相手として関係性が続いている。
学長を務める現在、研究に専念できる時間は少ない。「社会にインパクトのある研究がしたい」という学生時代の目標は必ずしも達成できたとは言えないが、今は関西大学が社会にインパクトを与えることが、学長としての大きな目標となっている。思い描いていた未来とは少し違うが、自分なりの夢を持ち、何事にも全力で取り組んだあの頃と同じように、今も挑戦を続けている。
学生への応援メッセージ
自分にとって価値のあるチャレンジを見つけ、そして挑戦してください。関西大学でも、学生にさまざまな挑戦の機会を提供していますが、大学が用意したコンテンツに限らず、自ら貪欲に興味関心を持てることを見つける努力をし、失敗を恐れず挑戦してほしいです。挑戦に失敗はつきもの。その経験から学び、次の挑戦につなげてください。大学での経験は、将来の選択にも役立つはずです。大切なのは、自分の価値観に基づいた挑戦を続けることです。