三井物産株式会社
執行役員 サステナビリティ経営推進部長
恩田 ちさと

北海道出身。一橋大学社会学部卒。1995年に入社以降、主にプロジェクト本部の中南米を担当。2024年より三井物産初の女性執行役員に就任。

自分は目の前のやるべきことを、とにかく一生懸命にやってしまうタイプなのだと思う。やり始めてしまえば「なぜやるのか」といった疑問は、さほど持たない。学生時代からそうだった。大学時代に夢中になったのは、ラグビー部のマネージャー。きっかけは兄が学生時代にラグビーをしていたから、という単純なものだった。
自宅から大学のある国立のラグビー場までは、電車で1時間半の距離。授業のない日も含め、ほぼ毎日通っていた。仕事はテーピング、ケガの手当て、部費の管理、スコアの記録など。時には、倒れた選手に水をかけるために、ヤカンを抱えて全力疾走もする。ラグビー一色の毎日だった。
フィールドに立つメンバーは15人。ポジションには体型や能力に応じた向き不向きがあり、適材適所もポイントとなる。レギュラー以外の選手やマネージャーも含めてそれぞれがチームに貢献し、自分にはできないことは、誰かが担う。だからこそ、他のメンバーへのリスペクトはもちろん、自らへの責任感と主体性も欠かせない。
例えば、私がテーピングをすることで、選手が走れるようになる。「自分も、誰かのためにここに立っている」と感じられることが嬉しかった。チームのために頑張るときにこそ、自分のモチベーションが高まることにも気がついた。会社に入ってからもチームで仕事をしたい、漠然とながらそんな思いも抱くようになった。
三井物産に入社したのは1995年。総合職採用の同期の女性は3人だけ。不安がなかったと言えば嘘になる。それでも、学生時代の経験から、きっと自分にも活躍の場はあると思うことができた。
後年、プロジェクトのリーダーとして、また管理職としてチームを率いる立場になってからは、コミットメント(責任を果たす意思)とオーナーシップ(当事者意識)を忘れないこと、そして、明確な価値や目標を共有し、適材適所で取り組むことを重視してきた。改めて振り返ってみると、学生時代に没頭したラグビー部での経験が常に自分を支えてくれていたのかもしれない。
ラグビー部のメンバーとは、フィールド以外でもたくさんの時間を過ごしたし、今でもとても仲がいい。一生モノの付き合いも、没頭した経験によって培った宝物だ。価値のある時間だったと、今になって思う。
学生への応援メッセージ
学生時代に何か一つでも一生懸命取り組むことで、ぜひコミットメントとオーナーシップを培ってください。一人が手を抜くと、チーム全体が機能しなくなることもありますから、仕事を始める前に、充分な経験を通じて、その価値や重要性を体得して欲しいと思います。この二つがあれば、自分の努力や成長の方向性も、見失わずにすむでしょう。“一生懸命さ”も、続けるうちに身についてくるという側面があると思います。