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食品ロス削減に向けて、日本や世界の潮流を踏まえた上で、 グリコだからこそできる新しい挑戦を提案してください。

江崎グリコ株式会社

田中 弓雄さん


子どもから大人まで、たくさんの人に愛されるお菓子や食品を提供してきた江崎グリコ。創業から100年を迎えた2022年からは、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」という新たなパーパスのもと、人々の健康につながる製品づくりを一層強化しています。今回は、「食品ロス」というテーマに込めた思いや、グリコならではの挑戦についてお聞きました。

「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を、すべての人に。

───はじめに、江崎グリコについて、どんな企業か教えてください。

田中さん 当社は、「食品事業を通じて人々を健康にし、社会に貢献したい」という創業者の思いから、栄養が不足しがちな子どもたちのために、カキの煮汁に含まれるグリコーゲンを練り込んだ栄養菓子「グリコ」を発売したことから始まりました。創業から100年以上が経った今も、この思いを大切に、お菓子はもちろん、アイスクリームやヨーグルト・乳飲料、加工食品など、幅広く事業を展開しています。


───『ポッキー』や『パピコ』などのロングセラー商品だけでなく、健康を意識した商品も多いのはそのためなんですね。

田中さん そうなんです。2005年には一時的なストレスを低減するチョコレート『GABA』を、2016年には脂肪や糖の吸収を抑える成分を加えた『LIBERA (リベラ)』を発売するなど、時代に先駆けて機能性チョコレートを提供してきました。

また、2017年には、糖質を10g以下に抑えたアイスクリーム『SUNAO』を発売しました。通常、アイスクリームは生クリームなどの油分や砂糖でつくられており、油分を減らすとコクが出ず食べ応えを感じにくいのですが、何度も試行錯誤をした結果、糖質を抑えながらもおいしいアイスクリームを実現。現在は、クッキーやパスタなど、どんどんシリーズを拡大しています。


───ここ数年はとくに健康機能商品に注力しているとのことですが、なぜでしょうか。

田中さん 「人生100年時代」とも言われる今、本当に大切なのは健康寿命です。健康寿命とは、健康上の問題で制限されることなく生活できること。いくつになっても、自分で買い物に行って、食べたいものを好きに食べられたらいいですよね。しかし、栄養が偏っていたりカルシウムが不足していたりすると、骨粗しょう症やサルコペニア(筋肉減少症)になって歩けなくなるおそれもありますし、普段の食事で塩分を摂り過ぎてしまうと、高血圧や動脈硬化になってしまう可能性もあります。

そんな人々の健康状況を踏まえ、当社も原点回帰すべきだと考えたのです。そこで2022年には、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」という新パーパスを策定。「おいしいから食べたい」だけでなく、「健康になるために食べたい、飲みたい」と思っていただけることを目指しています。


───新たなパーパスの策定によって、どんな変化がありましたか?

田中さん 健康という観点から、それまで出していたお菓子や食品をすべて見直しました。とくに苦労したのは『プリッツ』です。塩分を極力抑えたいけれど、塩分がおいしさにもつながっているので、単に減らしてしまうとおいしくできなくて。「塩分を減らせないなら、『プリッツ』をやめる?」という覚悟で、みんなで諦めずに商品開発をした結果、なんとか健康とおいしさを両立できる配分を見つけ出し、販売し続けることができています。ロングセラー商品を売り続けることよりも、人々の健康を大切にする。創業の精神が、今もしっかり続いている証とも言えるでしょうね。


───そんなグリコで働く社員は、どんな方が多いのでしょうか?

田中さん 健康意識が高い方が増えてきました。グリコでは、社員の皆さんにも「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を過ごしてほしいと考え、社員の健康増進に向けたさまざまな取り組みをしているのですが、これを楽しんでいる方が本当に多い。たとえば、会社から貸与されている携帯電話には健康管理アプリが入っていて1日の歩数がわかるようになっているのですが、目標の歩数に到達できるように同僚と一緒に歩いている方もいますね。また、産業医や保健師の方にすぐに相談できる環境が整っていたり、グリコの商品の栄養素に関する知識や健康について理解を深めるためのカリキュラムがあったりと、働く中で自然と健康意識が高まっているのではないかと思います。ちなみに就業時間中は禁煙です。

前例がなくても、それが最適解なら挑戦してみる。

───ここからは課題解決プロジェクトについてお聞きします。まずは、このテーマに決定した背景を教えていただけますか?

田中さん 今、日本における食品ロスの量は、年間472万tと言われており、お菓子や食品を届ける当社としても重要な課題の一つです。そこでグリコでは、「Glicoグループ環境ビジョン2050」を掲げ、2050年までに食品廃棄物を95%削減することを目標に取り組んでいます。

───現在、グリコではどんな取り組みをしているんですか?

田中さん まず、グリコでは、食品廃棄物を大きく二つに分けて考えています。一つが、工場などの生産工程で生じる「フードロス」、もう一つが、売れ残りや食べ残しから出る「フードウェイスト」です。 「フードロス」のわかりやすい事例でいうと、生産工程で欠けてしまったり、割れてしまったりと、出荷基準に満たなかった商品が挙げられますが、これらをふぞろい品として販売することで、削減に努めています。 さらに当社では、生産工程でのロス発生を抑制する取り組みだけでなく、発生してしまった食品廃棄物のリサイクルにも注力。肥料や家畜の飼料として再利用したり、食品廃棄物からガスや発電エネルギーを生み出したりと、工場における「ゼロエミッション*」を目指しています。

*生産活動から出る廃棄物のうち最終埋め立て処分にする量をゼロにすること

───一方、売れ残りなどから出る「フードウェイスト」についてはどんな取り組みがありますか?

田中さん 賞味期限の延長と年月表示化です。従来、カレーでは、賞味期限は日にちまで表示するのが一般的だったのですが、それを月までの表示に切り替えました。小さなことに思えるかもしれませんが、これにより、食品ロスを削減するだけでなく、商品の配送や管理にかかる業務効率も向上しました。しかも、これはカレーの業界では初の試みでした。菓子の事例を模倣しながら、前例がない業界でも、最適解なら挑戦してみる。グリコだからできたことだと思いますね。他にもさまざまな取り組みを行っているので、ぜひ調べてみてください。

菓子業界から、食品ロス削減に切り込んでいく。

───田中さんは、ずっと昔から食品ロスについて考えていたそうですね。

田中さん 私が初めて食品ロスを意識したのは、30年ほど前のこと。入社して数年間は営業担当だったのですが、スーパーなどに卸した商品が売れ残ると、すべて返品となり、廃棄処分になってしまうんです。手袋をつけて、ずいぶん多くの時間を費やして、一つ一つ返品処理作業をしていくのがすごく悔しくて、悲しくて。食品ロスは絶対になくさないといけないと思っていました。

それから時が経った2011年ごろ、私が渉外部の課長となったタイミングで、農林水産省を筆頭に食品ロス削減に向けたワーキンググループが発足し、当社が参画することになりました。さらに現在は、全日本菓子協会の代表として東京都の食品ロス削減パートナーシップ会議にも参画し、行政と一緒に食品ロス削減に向けた活動に取り組んでいます。


───社内のみならず、社外とも連携しながら取り組んでいるんですね。

田中さん そうですね。食品ロスなどの社会課題になると、各企業での取り組みはもちろん、社会全体で動いていく必要があると思います。しかも、さまざまな業界で取り組みが進められている中だからこそ、他の業界に先駆けてどんどん進めていかないと。「他社がこうだからグリコもそうしよう」など、横並びで考えるのではなく、もっと広い視野で考えながら進めていく。グリコは、その先陣を切っていく存在でありたいと思っています。

とことん調べていく過程に、ヒントが隠れているかも。

───5つの審査項目(※)のうち、とくにどの点を意識して取り組むといいでしょうか。

(※)テーマ・企業分析、多面的な視点、独創性、社会貢献度、実現可能性

田中さん 独創性を重視して評価したいと思っています。当時はまだ一般的でなかった機能性チョコレートを他社に先駆けて発売したり、業界で初めて賞味期限の表示を変えたりと、前例がない挑戦こそが、グリコらしさだと思うからです。
しかし、前例のない取り組みなんて、そう簡単には浮かばないかもしれません。そんな時は、食品ロスについて調べる過程で興味を持った組織や活動について、よく調べてみてほしい。たとえば、その組織が設立した理由や、どんな理想を持って何に取り組んでいるのか、そして、なぜ自分が興味を持ったのかなど、いろんな角度から深掘りしていく中で、ヒントが見つかるかもしれません。

また、こだわってみてほしいのは、提案スライドの表紙に書く言葉。「一言で言うと?」という“スローガン”を書くつもりで、わかりやすく、目を引くものにできないか考えてみてほしいです。


───最後に、学生のみなさんに期待することを教えてください。


田中さん せっかくやってみるのであれば、やる前よりも「自分、変わったな」って思ってほしいですね。ちゃんと調べてみることで視野が広がったとか、チームで取り組むのであれば、リーダーに挑戦してみたとか。どんなことでも構わないので、この経験を通して学んだことや成長したことが、自信につながればと思います。
また、学生の皆さんにこういう課題を提示するといつも期待を超える提案が出てくるので、本当に驚きますし、私も勉強させてもらっています。中には、関連部署の担当者に電話したこともあります。「学生からこういうアイデアが出てきたんだけど、チーム内でこんなアイデアは出ていないの?」って。今年もぜひ、驚かせてほしいですね。皆さんの提案を、楽しみにお待ちしています。



───本日はありがとうございました!

江崎グリコ

田中 弓雄さん

1995年入社。首都圏のスーパーマーケットやドラッグストアへの営業を経験後、2003年からはロジスティクス部や総務人事部、販売促進課などで多岐にわたる業務に従事。2012年には、農林水産省や経済産業省などとやりとりをするグループ渉外部の課長となり、東京都食品ロス削減パートナーシップ会議の委員も兼任。2016年以降は、グループ人事部タレントマネジメントグループの人財育成チームで担当課長も兼務し、食品ロスの削減からデジタル人財の育成まで、幅広く取り組んでいる。