<前編>ルールを「守る」ものと考えないで。ルールは「使う」道具であり技術です。法律家・水野 祐さんに聞く、ルールの柔軟性

プロフィール

水野 祐さん
法律家。弁護士(シティライツ法律事務所、東京弁護士会)。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。九州大学グローバルイノベーションセンター(GIC)客員教授。グッドデザイン賞審査委員。慶應義塾大学SFC非常勤講師。note株式会社などの社外役員。テック、クリエイティブ、都市・地域活性化分野のスタートアップから大企業、公的機関まで、新規事業、経営戦略等に関するハンズオンのリーガルサービスを提供している。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』(フィルムアート社)など。
Q3.資格って大切ですか?
A.たしかに、資格は大切な「武器」です。その武器を「何のために」使いたいか、考えてみてください。

ここまでお話ししてきたことを踏まえて自分の仕事を説明すると、とにかく創作活動や世の中に新しいものを生み出す人たちを広くアシストしたいという欲求があって、そのために法律を道具として活用しているんです。
僕は10代の頃からサブカルチャーが好きで、映画、音楽、文学……。いろいろな作品に救われてきました。表現とそれを生み出す人たちに対する敬意と感謝の気持ちは、人一倍強く抱いています。

一方で、中学・高校とサッカーにも打ち込んでいました。ポジションはミッドフィルダーで、シュートして得点を決めるよりも、アシストするほうが好きなタイプでした。
もともと裏方志向だったんだと思うんですが、自然と創作や創造を、環境・しくみ・制度という裏側から支える仕事が自分には合っているのかなあ、なんて思っていました。
たまたま法学部に入学して、卒業するくらいのタイミングでロースクール制度ができるという時期だったことも幸いして、弁護士資格を取ってクリエイターをサポートしたらおもしろいんじゃないか、と思い、ロースクールへ進学し、司法試験を受けました。
弁護士資格を取って法曹の世界へ入る時点で、「法を武器に、クリエイターを下支えする」という明確な目標、初期欲求があったのはよかったですね。
資格取得やその職業に就くこと自体が目的ではなく、その世界でやりたいことがはっきりしていたことで、最初から迷いなく仕事に取り組めましたし、その一貫性が、自分にはものすごい強みになっています。
資格をとって満足してしまう人も多いなかで、自分にとっては資格をとってからがスタートだったので、まさに「水を得た魚」でしたね。

よく「好きなことを仕事にしたほうがよい」「いや、『好き』と『仕事』は分けておいたほうが幸せだ」といった論争がありますよね。
僕としては、もしちょっとでも人と違うことをしたいとか、何かを解決したいとか、何らかの世界で名を成したいという意志があるのなら、好きを仕事にしたほうがいいと思います。
好きなことだったら、四六時中それについて考えていても苦じゃないし、夢中度が高く取り組めます。そういう対象を仕事にしたほうが、他のそうでない人よりも強いからです。感覚的な話ではなく、論理的にそう思います。

世の中の「ルール」をうまく使いながら、みなさんがそれぞれの欲求を持って、進む道を切り拓いていくことを願っています。
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スタッフクレジット:
取材・執筆:山内 宏泰
イラスト・漫画:中山ゆき
撮影:菊田 香太郎