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最終更新日:2023/10/10
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梶田 晴司 自然科学研究科 多様性科学専攻 研究職
仕事内容研究職
当研究所へ入社したのは、「電子状態計算が使え、トライボロジー(摩擦や潤滑の学問)分野で研究をおこなう人を募集」という公募を見たことがきっかけです。大学院では電子状態計算法を用いた研究を進めており、トライボロジーは知らない分野でしたが、サイエンスとして発展途上にあり、工業的に意味のある点に魅力を感じて入社を決めました。 入社後、2008年からトライボロジーの研究に従事。グループ企業や他の研究機関との共同研究も積極的に進め、電子状態計算や分子動力学法による現象解析と新手法の開発を進めてきました。自動車関連においては、より高性能なエンジンオイル添加剤の設計・探索につながるため、現在もトヨタ自動車と共同で、シミュレーションによる摩擦現象の解析と新規材料の探索に関する研究を続けています。コンピュータを用いたシミュレーション結果を実験検証するため、原子間力顕微鏡を使ったナノ摩擦試験も自身で行いました。また、大型放射光施設での摩擦面リアルタイム分析にもチャレンジし、成功することができました。もともと学生院時代に理論計算と実験の両輪で研究を進めてきたことが新規手法の確立につながりました。
2014年から2年間、トライボロジーの研究を進めるために、イタリアの国立研究所へ技術留学しました。行ってみて驚いたのは、研究者としてのスタイルや個人の技量において、日本が決して遅れをとっていないことです。 現地では、妻が頑張ってイタリア語を習得してくれたことが交友関係の充実につながりました。親しい友人もでき、生活面でトラブルに見舞われることがあっても、その都度助けられたものです。柔軟な対応が印象的だった運営部門のサポートにも感謝しています。腰を据えて学べる環境に恵まれて吸収が早く、海外というアウェーな場所でもアピールしていくタフネスさが身につきました。 帰国後の2016年からは、新分野として当研究所が立ち上げたスマート材料デザイン研究領域に異動しました。研究対象は、マテリアルインフォマティクス。機械学習と電子状態計算をペアにして、新しい物質を探索する方法を考えています。これまでの研究分野とは異なりますが、さほどバリアは感じず、自分にはフィットしていると思っています。機械が学習していく過程を目の当たりにすると、新鮮な驚きを得られます。
マテリアルインフォマティクスは新しい分野のため、決定的な手法がまだ見つかっていません。現在、研究室で注力しているのは、AIの新しい技術と自分たちが培ってきた分子シミュレーションや電子状態計算をいかに融合させるかということです。 異なる分野をうまく足し算してイノベーションにつなげるには、柔軟な発想と広範な知見が必要です。将来、材料探索において、コンピュータが材料のレシピをはじき出してくれるところまで到達することをめざしています。これまでの研究においては、目的をクリアしようとする過程で、新しいアイデアや手法を見出してきました。目的志向で考えていると、従来の手法や手段にこだわってはいられません。そして、そんな時に自分の軸となるのが、基礎的な学力です。 技術の変遷が激しい現代において、ひとつの専門性だけを究めることは、時代にそぐわないと私は考えています。大切なのは、状況に合わせて柔軟に変わっていける、しなやかさです。これからは、どんな応用にも使える基礎的な思考力や知識、能力を備えていることが大きなチカラとなります。学生時代に、基礎学力という体幹を鍛えておくと良いと思います。
記事の内容は取材当時のものです。ご了承ください。