最終更新日:2025/5/9

(株)東邦

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「ウタマロ」はカタチを変えて次の時代へ

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65年の時を超えてファンを魅了!こだわりの品質が強み

西本 武司
株式会社東邦 代表取締役社長
「トップダウンの会社づくり・ものづくりは、すべきでない」と語る西本社長。会社を一つのチームとして考える全部署の一体感が魅力だ。

鮮やかなエメラルドグリーンが売り場でひときわ目を引くウタマロ石けん。気になる商品名の由来は、江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿からとったそう。1957年に誕生して以来、知る人ぞ知る洗濯石鹸として愛用者を増やしてきた「ウタマロ石けん」は、今やSNSをきっかけに空前絶後の大ヒット商品へ。そんな同社の歴史から人気製品の開発秘話まで、代表取締役を務める西本武司社長による生の声をご紹介します。

「ウタマロ石けん」の舞台裏をご紹介

スマホ一つで簡単に情報が手に入る、この時代。西本社長は「“リアル”な体験を大切にしてほしい」と熱を込めて語る。
西本社長と総務部マネージャーの勝田社員とのタッグによって会社の仕組みを随時改革中。若い人材を積極的に登用している。
洗濯石けんの「ウタマロ」から“家事全般に使える”「ウタマロ」へ。洗濯や掃除のなくてはならないキーアイテムとして老若男女のユーザーに愛されている。

電気洗濯機の普及に、びわ湖の環境問題…度重なる難題に粘り強く向き合った《創業期》

 1920年、当社の前身となる西本石鹸製造所を立ち上げたのは、私の曽祖父。当時から一貫して大きく掲げていたのは「品質にこだわった製品づくり」でした。単に品物を作り出すことで精一杯だったこの時代に、同業他社に先駆けて、その質にまで重きを置くような価値観を貫いたようです。その後、1949年には社名を東邦油脂株式会社と変えています。

 さて、「ウタマロ石けん」が誕生したのは1957年。当初は取引先のOEMとして製造されたもので、約300万個もの売上を誇り、汚れがよく落ちると人気が広がっていきました。

 ところが1960年代に入り、高度経済成長の流れと共に白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫という家電3品が“三種の神器”として普及しました。一般家庭に洗濯機が行き渡ったことで「ウタマロ石けん」の出番は減り、洗濯に使われるのは主に粉洗剤、そして液体洗剤へと変わっていきました。当然「ウタマロ石けん」の出荷個数も大きく減っていきます。

 さらには1975年、当社にとってさらなる大きな出来事が起こります。家庭用排水に含まれる“リン”によって「びわ湖の赤潮」が社会問題となったのです。リンは当時、安価で汚れ落ちの良い成分として家庭用洗剤に多く含まれていました。ところが、そのリンが環境に負荷をもたらしてびわ湖の生態系を壊しつつあったのです。プランクトンが増えて一面が真っ赤になったびわ湖の様子に、地域の住民は怯えたものでした。

 事態を重く見た当時の社長である祖父は、関西圏の洗剤メーカーと力を合わせてリンを使用しない洗剤の開発に乗り出すことに決めました。この体験から、当社は環境問題と共に歩む石鹸・洗剤メーカーとしての意識を一層強くしていきます。

 その後、1990年代に当社は父の代へと移り変わり、世間にはドラッグストアが台頭するようになりました。それまで百貨店や専門店でしか買えなかった化粧品がドラッグストアで気軽に購入できるようになったことから、当社もドラッグストア向けのシャンプーやボディソープの製造に乗り出していきます。

廃番の危機を乗り越えて…根強い愛用者の声に支えられた《成長期》

 「ウタマロ石けん」が誕生してから40年余りが経つ1998年、OEM製造の発注元だった取引先が廃業してしまいます。「ウタマロ石けん」も廃番の危機に晒されたのですが、愛用者の皆さんから“なくさないでほしい”という声が続々と届きました。そこで当社が「ウタマロ石けん」の名前を引き継いで、製造から販売までを担うこととなるのです。

 その後、2000年頃には消費者から洗濯機だけでの通常の洗濯では汚れ落ちに悩む声が際立って聞こえてくるようになりました。そんなとき、エリ・ソデ汚れ、泥や食べこぼし等の汚れに強い「ウタマロ石けん」を部分洗い・予洗いとして使うといった手法が主婦の皆さんの間で広がり始めたのです。当初は幼稚園や少年野球チームのお母さん方のリアルな場での口コミで、次第にインターネット上のブログ等で拡散スピードが上がり、おかげさまで、一時は大きく落ち込んだ「ウタマロ石けん」の売上も次第に回復していきました。

 この頃、私は大学・大学院で化学を学び、大手化粧品メーカーに入社し、2008年、家業である当社へと戻ってきました。一方で当時、ドラッグストアもすでに飽和状態に。異業種参入が盛んに行われていて、競合も増えていました。これからの時代を生き残っていくには一体どうすべきか、と会社の方向性を模索する日々が始まったのです。

 そんなある日、私はハッとしました。誕生から半世紀も経つのにも関わらず「ウタマロ石けん」には日々、愛用者の声が届くのです。さらには社員たちも、「ウタマロ石けん」について語るときにはとてもうれしそうに目を輝かせるのです。根強いファンが当社の外にも中にもたくさん存在していることに気がついたとき、私は「ウタマロ石けん」に秘められた可能性を一層伸ばしていくことを決意しました。

「ウタマロ」と共に歩む未来…社内改革に乗り出す《これから》

 こうして「ウタマロ石けん」を中心とした社内改革に着手した私ですが、まず初めに行ったのは商品企画部の発足。そして、それまで販促費に一切の予算をかけずにきた当社としては初めて広告代理店との契約を結び、新聞・雑誌等の広告を展開することにしました。また、外部のデザイナーに依頼してHP・会社のロゴマーク・「ウタマロ石けん」のパッケージデザインに至るまでを一新させることにも成功しました。

 そして2012年、家事全般に役立つ新シリーズを追加し、「ウタマロ」はリブランディング。ウタマロリキッド(部分洗い用液体洗剤)、ウタマロクリーナー(住宅用クリーナー)、ウタマロキッチン(食器洗い用洗剤)という3商品を生み出しました。開発期間は実に3年と長くかかったのですが、汚れ落ちと手肌へのやさしさを両立させるには、これだけの時間が必要でした。その後、InstagramをはじめとするSNSの広がりと共に「ウタマロ石けん」の活用法が多く知られ、売上はさらに伸びていきます。また、2019年にはウタマロ石けん専用ケース付きも新発売。「ウタマロ石けん」そのものは大きく変わっていないのですが、古き良きものに目新しい要素を加えた商品開発に成功したことでヒットとなりました。

 こうした経験から、私がいつも社員に話しているのは「会社も商品も立ち止まってはいけない、変わり続けていかなければならない」ということ。当社が4世代に渡って100年超の歴史を紡いでこられたのも、曽祖父・祖父・父のそれぞれがそのときの世情や市場に合わせて商機を見つめて商品を柔軟に変化させてきたからです。変わることは、自分自身をも成長させることにつながります。当社では何よりもそうした姿勢を大切に働いてほしいと願っているのです。

 また、いつも共に働いてくれている社員のためには働き方も大きく改革してきました。仕事と私生活は相互に影響しあっているに違いありませんので、残業時間は極力削減。福利厚生では3年前に住宅手当を制度化して若年層の社員が働きやすさを実感できるよう工夫しました。事実、社長の私が40代で、社員は20代・30代ばかり。40代以降のベテラン世代は数えるほどとなり、風土は活発そのものです。業務ではノルマを課さない仕事の仕方をとっており、上司と会社がしっかりサポートすることで若い社員には自由に挑戦しやすい環境をつくり、様々な経験を通して成長してほしいと願っています。

学生の方へメッセージ

 私個人のこれまでの経験を振り返ってみても、仕事への向き・不向きは自ら経験してみた上で検討していくほかないように感じています。ただ、何事もまずは最初を踏み出すところから。最初からいきなり運命的な企業との出会いを目指すよりも、興味の向いた業界や企業へとじっくり足を運んで情報収拾に努めてほしいと思います。
 一方で、少しでも違うなと感じたならば勇気を出して立ち止まることも大切です。あとは、頭で考えすぎて必要以上に歩みを止めてしまうことのないように気をつけてみてください。たくさんの情報に晒されている時代ですから、思い悩むこともあるかもしれません。そんなときには、いつも自分の心に正直に耳を傾けながら行動してくださいね。(代表取締役社長・西本 武司)

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年に必ず1つ、社内制度の改革を行なっている東邦。マンネリに陥らない組織体制を重視しているからこその取り組みだ。

マイナビ編集部から

 今から100年以上も前に創業されて以来、洗濯石けん・洗剤・化粧品メーカーとして徹底した品質を守り続けてきた東邦。時代の変遷と共に形を変えながらも、常に念頭に置いてきたのは「やさしさ」への配慮だ。汚れ落ちの良さと、環境、使う人の手肌へのやさしさを両輪に携えながら、いつも消費者の期待に応えて歩んできた。
 今回は4代目の西本社長にインタビューを敢行したが、中でも印象的だったのは社員の仕事への取り組み方についての話題。「社内にずっと留まっているとアイディアも枯渇してしまうでしょう。ですから、社員には積極的に社外の関係者に会う時間を作るように伝えています。一人では到底成し遂げられなかったような仕事も、他社と力を合わせることで成功させられますから」と、自らが社長に就任して以来、多くの外部ブレーンとの化学反応によって事業の舵をとってきた経験になぞらえて話してくれた。
 また、最後に強調して語ったのは未来の東邦のあり方について。まずはウタマロブランドを確立していくことを目標としていること、そして新ブランドの立ち上げも視野に入れているとした上で「これから当社の仲間となってくださる皆さんと、力を合わせて一緒に作っていきたいと思っています」とエールを送った。

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2023年12月に本社横の敷地には新工場が完成。さらなる増産体制が敷かれることで「ウタマロ」と「東邦」の名は一層広がっていくことだろう。

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