最終更新日:2025/5/1

(株)ベジテック

  • 正社員
  • 既卒可

業種

  • 商社(食品・農林・水産)
  • 食品

基本情報

本社
神奈川県

取材情報

事業について伝えたい

“再価値化”の観点から、持続可能な農業の実現とフードロス問題の解決に取り組む

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全国の生産者・パートナー企業と共に持続可能な社会を目指す

■代表取締役社長 遠矢 康太郎さん
■取締役 金田 真行さん

仲卸事業・加工製造事業・プロセスセンター事業という3つの事業を展開するベジテック。多くの青果物を扱っている同社には「従来の生産流通過程で生まれてきたフードロスをなくしていこう、持続可能な体制に作り変えていこう」という強い思いがある。未来志向を持ってさまざまな取り組みを促進している同社の社長と取締役のお二人に、その詳細について語っていただいた。

<同社の取り組みに該当するSDGs目標>
「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「12:つくる責任つかう責任」「13:気候変動に具体的な対策を」「15:陸の豊かさも守ろう」

当社のSDGsの取り組み

旬のおいしい時期に収穫し、瞬間凍結。サクッとした食感が特徴の冷凍フルーツです。規格外などのフルーツを原料とし、新しい商品へ姿を変えています。
豚汁やけんちん汁など様々な料理に使える「万能汁の具」。使用している野菜だしは、市場に出せない規格外野菜・加工工程で出る端材や皮などの野菜クズから抽出しています。
これまで焼却処分されていた食品残渣を、微生物の力によりきれいな水に分解できるPOITO。自社工場での活用に加え、商業施設等への普及推進にも取り組んでいます。

「捨てる」を減らし「再価値化」を図る

かつて、大量消費の時代にフードロスの問題は見落とされていました。今ではSDGsという言葉が登場していますが、当社は以前から作り手のため、そして「もったいない」という思いからフードロス問題に取り組んできています。まずは、「“捨てる”を減らし“再価値化”を図る」という当社の取り組みをご紹介します。

青果物が収穫されてから食卓に届くまでに、多くの廃棄が出ることを皆さんはご存じでしょうか。例えばレタスなら、形の悪さ、大きさの大小などから、産地で廃棄されるという現実があります。当社の人気加工商品である「カットサラダ」は、このような味や品質に問題がないのに廃棄されていた野菜を活用できないか、という観点から生み出された商品です。徹底した低温流通を実現することで、安全で長持ちし、かつ手軽に野菜の栄養が摂れる商品として好評をいただいています。

今でこそ消費者に支持されているカットサラダですが、発売当初は大赤字でした。そこから、単身世帯や核家族世帯、共働き世帯が増加している社会背景も相まり、若い世代から少しずつ受け入れられてきました。コロナ禍の消費行動の変化により、食べたい分だけを購入できる便利さが高齢者層にも受け入れられたことで、今まで以上にコンビニエンスストアやスーパーなどでも定番商品として広く販売されるようになっています。これは、私たちが信念を持って作りつづけてきたからこそです。

野菜の端材からは美味しく栄養価の高い出汁を取り、「ベジブロス(野菜だし)」として商品化しています。また昨今、焼き芋ブームで特定の大きさだけ需要が急騰しているサツマイモを仕入れる際にも当社は大きさの大小に関わらず、畑丸ごとすべて引き受けます。デザート用のピューレやレトルト加工食品に使えるからです。

果物も同様です。バナナは青い状態で輸入をしますが、国内で色付け加工をし、房分けやパッケージ包装をするまでの間には多くの廃棄が出ます。そうした規格外のバナナもペースト状に加工することで、お菓子やドリンク商品として生まれ変わっています。いちごやマスカット、キウイなどについても、凍らせても品質が落ちない最新技術を導入することで、味や鮮度が自慢の「冷凍フルーツ」商品として、再価値化を成功させています。

微生物の力で焼却処分を減らすなど「省エネルギー化」にも注力

「“捨てる”を減らし“再価値化”を図る」取り組みと並行して、「省エネルギー化」にも取り組んでいます。

従来、青果物の加工工場で出た残渣(原料くず・汚泥)は焼却処分されていました。「大量の二酸化炭素を排出するこの処分方法は、未来志向ではない」という視点に端を発し、自発的にできることをやろう、と処理方法をゼロベースで検討してきました。その結果、微生物の力により、廃棄野菜をきれいな水に変える生ごみ処理機「POITO(ポイト)」の導入につなげています。

POITOはメンテナンスも容易なため、全国各地の給食センターや病院、空港、商業施設など多くの施設で導入が進み、持続可能な循環型社会の実現に貢献しています。現在は一度で500Kgほどの処理が可能ですが、さらに大きな処理能力を備えた機械にできないかとメーカーと連携を進めています。

24時間365日稼働している加工工場の屋根では太陽光発電を行い、使用電力の一部を賄える状況を作っているほか、生産流通工程のエネルギー効率を上げる取り組みにも注力しています。カットサラダの製造流通工程では、約3℃に冷却した大量の「チラー水」を用います。徹底的に冷やすことで安全な品質を維持していますが、毎回常温から水の温度を下げるのはエネルギー効率が悪いことから、熱回収装置「ReCalo+(リカロプラス)」を用いることで、使用電力を減らす取り組みを進めています。

さらに未来の農業を考える当社では、植物工場の青果物の流通も手掛けています。青果物は季節ごとに、国内外のさまざまな産地から仕入れていますが、天候や災害により収穫量に致命的な影響が出てしまう年もあります。植物工場での栽培は、露地・ハウス栽培と比べるとまだ価値は高いですが、安定した生産量と高い歩留率、虫の混入リスクの低さから一定の需要が出てきています。年間を通じて安定的に青果物を供給することが当社の使命と考えており、「産地と植物工場との補完関係」を重視しながら、今後もバランスの取れた供給体制を作っていきたいと考えています。

客観的なデータ分析にも注力。これからも作り手と共に成長を目指す

「ベジテック」という社名のとおり、当社はテクノロジーを積極的に取り入れ、土壌や青果物の成分や効果を徹底的に数値化できる体制を整えてきました。具体的には「理化学分析センター」という自主検査機関に積極的な設備投資を行い、産地で収集した基礎データを有効に活用しています。

理化学分析センターは土壌の状態や安全性、青果物の栄養や抗酸化力に加え、味も8つのセンサーで数値化することができます。そのため、当社の顧客は数値化することで商品の効果をわかりやすくアピールして付加価値を高められるのです。一例として、血圧が高い人の血圧を下げる機能がある「GABAバナナ(機能性表示食品)」は、生産加工販売企業と当社が組んで商品化できた事例です。

当社がこうした取り組みに力を入れてきた背景には、作り手への思いがあります。精魂を込めて育てた作物を属人的に評価したくない、客観的な数値や効能を付加して市場で戦える武器として活用してほしい、そんな思いで取り組んできました。2年前には、企業使命を「私たちは作り手と共に成長し、時代に応じた豊かな食文化を創出することで、ヒトの健康に貢献し続けます」というものに刷新しました。「作り手と共に」という内容を冒頭に置いているように、すべての取り組みは、作り手と一丸となって取り組んでいくことが最も重要であると考えています。

助け合いの精神も重視しており、地理的条件や天候による産地のトラブルをできる限りフォローしています。私たちが社員に唯一求めることは「作り手に感謝する姿勢」。一人で仕事はできないというマインドを持ち、作り手と良好な信頼関係を築ける方であれば、どのような方でも活躍できる環境を整えています。

当社は創業から約50年にわたり、「もったいない」の精神でSDGsにつながる取り組みを積極的に進めてきました。全国の作り手たちと協業しながら次世代、さらに次の世代のことまで考えながら、魅力ある青果物を届けていくことが、これからも変わらぬビジョンです。業界内外に築いてきたネットワークを活かして良い情報や技術を積極的に取り入れ、今後もさまざまなチャレンジを形にしていきたいと考えています。

学生の方へメッセージ

企業研究に取り組んでいる方の中には、「やりたいことがわからない、行きたい業界や企業を絞れない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。しかし心配する必要はありません。仕事でいろいろなことを経験し、興味を持てることを勉強しているうちに本当にやりたいことは見つかっていくものです。社長自身も航空業界からキャリアをスタートし、さまざまな興味を膨らませてから当社にやってきた経緯があります。

当社では「社員にできるだけ多様な経験をさせてあげたい」と考えており、入社後は仲卸営業・生産管理・加工営業など、様々な角度から食にまつわる経験を積むことが出来ます。入社後にキャリアを柔軟に考えていける環境があるかどうかも、企業研究では注目してみてください。

近年の青果流通業界では、国の規制が緩和されたことで少しずつ自由化が進んでおり、これから10年ほどで大きな変革が起こると予想されます。すでに流通販売方法の多様化や商品の形態の変化、輸入作物の増加など、従来とは異なる流れが次々と生まれています。「作り手にとってベストな方法でお客様に届けていく」という当社のスタンスは今後も変わりませんが、新たなルールや仕組みづくりに寄与してみたい、という方にはとてもおもしろい業界だと思います。

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意欲的に吸収していけば、出身学部を問わずどんな方でも活躍できる業界です。個々人を評価していく風土です。

マイナビ編集部から

創業から50年以上、関東圏の卸売市場で確固たる基盤を築いてきたベジテック。ライフスタイルや食卓の変化に伴い、現在は仲卸事業・加工製造事業・プロセスセンター事業という3つの事業柱を持つ企業へと発展を遂げている。また同社を語る上で欠かせないのが、公的検査機関レベルの信頼度を誇る「理化学分析センター」の存在だ。土壌や水耕水の安全性、栄養価、味覚など各種分析し数値化することで、付加価値のある魅力的な野菜づくりや農業環境の維持に貢献している。

今回の取材では、持続可能な農業環境や循環型社会の実現に向けて同社が行なっている多様な取り組みについて聞かせていただいた。カットサラダや冷凍フルーツなどの身近な食品が、フードロス問題の解決のために生まれたこと、数値で証明された付加価値をもって機能性表示の青果物が市場に受け入れられていることなど、非常に興味深く聞かせていただいた。

取材を通して感じたのは、作り手に対する深い敬意の念だ。さまざまな強みを誇る同社であるが、それらはすべて作り手がいてできること、という謙虚な企業姿勢を貫いている。流通業界が大きな変革を遂げている今、「これからは作り手が強くなる時代」という言葉も聞かれたが、常に最新技術や情報にアンテナを立て、先見の明を持ってさまざまな機能を強化し続けている同社であれば、これからも“作り手に選ばれる会社”として発展し続けていくだろうと感じられた。

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コロナ禍のような社会情勢においても、食の業界の安定感は抜群。SDGsの観点からもさまざまな試行錯誤が始まっており、社会貢献に繋がるチャレンジも行いやすい業界だ

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