最終更新日:2025/6/1

(株)ヤマウラ【東証プライム上場】

  • 上場企業

業種

  • 建設
  • 建築設計
  • 機械
  • 機械設計
  • 重電・産業用電気機器

基本情報

本社
長野県

取材情報

DXが変える、私たちの仕事

DX専門部署の立上げも、積極的な設備導入も、100年先のスマートワークのため。

PHOTO

3Dデータを駆使して、工事の品質も安全面も向上させる。

【左から】
◆執行役員 技術本部副本部長/中谷亘さん(1994年入社)
◆設計チームDX-Lab./塩澤侑奈さん(2019年入社)
◆土木支店 工事長/須山享さん(1997年入社)

信州・駒ヶ根市に本社を置き、総合建設業として地域の暮らしを支えるヤマウラ。民間・公共の各種建築物や社会インフラの設計・施工の建設事業からエンジニアリング事業、不動産ソリューション事業まで幅広く展開し、「まちづくり」と「ものづくり」の両面を支えています。
BIM(Building Information Modeling)の活用、ICT建機での施工、本社と各現場とをつなぐネットワーク形成など、設計から施工まで積極的にDXを進めているのも、「100年先をつくる」をテーマに据えるヤマウラならでは。今回は建築・土木の各部門を統括するリーダーとDXを専門に手がける若手の先輩から、同社の取り組みやDXによる業界の変化について伺いました。

建築業界でいち早くBIMを活用。将来を見据え、現場の合理化・省力化を進めています。

当社の強みは設計施工。建築分野では、自社で設計から施工まで一貫して行う工事が70~80%を占め、民間からの受注にも広く対応しています。
技術本部の役割は、そうした建築施工に関わる工事現場の統括・管理です。自社設計が多いからこそ、設計部門やDX担当部門と連携し、データを現場に生かす役割も担っています。

例えば測量工程ではドローンやレーザースキャナーを使った3Dデータを活用。以前は2人1組で行っていた位置出し等も、最先端の測量機器の自動追尾機能を使い、1人で簡単に作業できるようになりました。
土木分野で活用が進んでいるICT施工を、建築領域にいち早く取り入れたのも当社の特徴。7~8年前からBIMを導入するなど、ソフト・ハード両面で積極的な投資を行い、設計も施工も手法を一新させています。二次元図面ではお客様に伝えづらかった建物イメージも、3D化することでスムーズに共有できるようになりましたし、体積計算も容易に。必要なコンクリート量や掘削土量をBIMモデルから算出することによって、担当者が図面から拾い出す必要がなくなり、ミスの軽減や現場の省力化に役立っています。
BIMデータを社内で変換し、重機に取り入れることでICT施工も進んでいます。オペレーターはマシンガイダンス(MG)に従って操作すれば、どの位置をどれだけ掘れば良いか、リアルタイムで確認が可能。自動制御システムのついたマシンコントロール(MC)建機なら、経験の浅いオペレーターでも掘り過ぎの心配なく作業を進められます。大手重機メーカーの担当者によると、建築部門でのMG・MC導入は全国的にも珍しいとのこと。最先端技術へのアンテナが高く、良いものを前向きに取り入れるのはヤマウラの魅力です。

25年前からテレビ会議を導入するなど早くにネットワーク化を進めていた当社ですが、近年の技術革新により、現場のICT化はさらに上の段階へ。現在はお客様との定例会や工程の打合せも、モニター越しにBIMモデルを使って行います。時にはVRゴーグルを使って外壁の色や内装の様子をチェックしていただきながら、オンラインでの合意形成も可能です。
業界全体で人手不足や高齢化が問題となる中、ICTによる時間・労力の削減は非常に重要な課題。今後はデジタルネイティブな若い人が主体となって、さらに効率良く働きやすい環境づくりを進めていきたいと考えています。(中谷さん)

こんなところもDXを推進中

設計志望も施工志望も、入社後まずはBIM操作の集中勉強。基本的なソフトの使い方を知ることで、BIM設計とICT施工の推進役を担ってもらっています。(中谷さん)

ツールに慣れてきた今だから、小規模現場でも普段使いできるDXを目指します。

国交省がi-Constructionを本格的に推進し始めた約10年前から、当社でも測量用ドローンや地上波レーザースキャナーを導入するなど、DXに向けた準備を進めてきました。当時は国主導の取り組みで、なかなか現場の効率化につながらない印象でしたが、活用に慣れてきた近年では各ツールの連携が上手くいき、安全面でも人手不足解消の面でも効果を上げてきています。
そんな中で今、私たちが力を入れているのは「ICTの普段使い」。数億円単位の大規模な現場だけでなく、例えば1千万円の小さな造成工事等でも、ドローンで撮影した測量データを三次元化し、重機と連動させて自動制御での作業を積極的に進めています。

私も7年前に初めて測量ドローンを扱って以来、道路工事や橋梁工事などさまざまな場面で3Dデータを使ってきました。特に実感しているのは、お客様とイメージを共有しやすくなったこと。二次元の図面では伝わりづらいことも多く、以前は例えば発泡スチロールで模型を作って説明する担当者もいたほどですが、今では簡単に画面上で構築物を描き出し、かつリモートでお客様に確認いただくことができています。
ICT重機を使えば、掘り進む高さもすべてデータ上で確認が可能。動いている重機のそばで作業する必要がなくなり、安全面でも効果を上げています。当社ではまだ実績はないですが、特に滑落の危険性が高い現場などで今後、無人重機が活躍する場面も増えてくるでしょう。

近年ではDXにより週休2日の現場が増えているため、ワークライフバランスが進んでいます。国交省も2024年から建設業界全体での完全週休2日制(土日休)を目指しています。これに対し当社では、県内各地に広がる現場の巡視をオンラインで実施したり、段階確認や立会を遠隔臨場で行ったりして移動時間を省くなど、よりスピーディな施工を可能としてきました。役所へ提出する書類も、クラウド上で承認までのやり取りを行っています。
大切なのは先人が積み上げてきた職人技と新しい技術とをバランスよく取り入れ、次の世代へつなげていくこと。それには、例えば遠隔OKでも、月に1度はカメラで見えないところを確かめに行くなど押さえるべき部分は押さえるなど、発想の転換が必要ですね。特に私たちの世代が若い社員の発想力を妨げず、柔軟に受け入れていく姿勢が、社内のDXの推進力になるのだと感じています。(須山さん)

こんなところもDXを推進中

現場の誘導員さんなどの負担軽減に向け、実は今、パワーアシストスーツを試着中。作業性や着心地を自分で確かめ、「仕事を楽にスムーズに」を追求しています。(須山さん)

DX活用を企画提案する専門部署。知識を深めて、より効率的な業務フローを形にしたい。

1年半ほど前に、設計部門のDXを専門的に担う部署として立ち上がったのが、私が所属するDX-Lab.です。二次元図面を3D化する設計補助的な役割に加え、最新技術をどのように現場で活用していくか、企画段階から提案していく役割もあります。建設業の知識ゼロから入社した私も、学生時代に学んだ情報マネジメントのノウハウを生かしつつ、会社全体を巻き込んで新しいことに挑戦できるのが魅力と感じています。

例えばVRやMRを使い分けながら、XR技術全般を設計イメージの具体化に活用。設計者が自分の考えを仮想現実の中で確認できることで、より設計品質が高まりますし、お客様とも建物の完成イメージを共有しやすくなります。営業担当者がお客様と打合せする際に、私たちが作ったバーチャルデータを資料として渡すことも多くあります。
建物の三次元データを簡単に取り込める3Dレーザースキャナーは、増築や改修において、既存建物の現況を効率的に把握する時に有効です。お客様の手元にも図面がないような古い建物でもすぐにデータを三次元化して現況の復元が可能。あわせて竣工後の建物をスキャンすることで、配電盤やスイッチの位置まで分かりやすくなるため、資産管理の資料としても役立っています。現在はウェアラブルタイプのモバイルマッピングシステムやドローン、360度カメラなど多彩なツールを使い分けながら、建築・土木両方の現場で有効活用しています。

工場の機械設備に主軸を置いたシミュレーションソフト「Plant Simulation」も、今後活用を図っていきたいものの1つ。使いこなせれば部屋の配置など空間的な把握だけでなく、お客様が持つ既存の設備や機械の情報も掘り下げて、より合理的なプランができるはず。工場関係の受注が多いので、現場で対応できる業務フローの確立を今目指しているところです。

年齢や経験にかかわらず、やりたいことを提案すれば「まずやってみたら」と任せてもらえるのは当社の大きな魅力。難しいことは先輩方に相談しつつ、こういう技術やソフトを使いたいと積極的に言えるのでとてもやりがいがあります。大切なのは与えられたノウハウを漫然と受入れるだけでなく、どんなことにも自分の考えを持つこと。既存の技術やノウハウに自分のアイディアを融合させた新しい方法を提案できるのは、このポジションの楽しさだと思います。(塩澤さん)

こんなところもDXを推進中

ドローンやスキャナー等の備品の貸し借りには「カシカン」という管理ツールを使用。QRコードで一元管理するなど、あらゆる業務でDXが進んでいます。(塩澤さん)

企業研究のポイント

ネット上の情報だけでは入社後にギャップを感じてしまうことも。そうならないためにはインターンシップや職場体験ができる機会を生かして、現場の雰囲気を知ることをオススメします。実際に働いている先輩から、企業の魅力や社風を聞いてみるのも良いでしょう。ちなみにヤマウラは、新しいことに敏感な会社。積極的に何かやりたいという方には、しっかり投資してくれる面白い会社だと思います。(中谷さん)

最先端技術を使って動く現場を実際に見て、企業研究をしていただくことで、建設業に対する考え方も変わるのではないでしょうか。弊社の現場事務所には大型モニターやWebカメラが整備され、従来の建設業のイメージとは違うものを感じるでしょう。各現場と本部、お客様をオンラインでつないで、それぞれの場所に居ながらにして合意形成も可能です。(須山さん)

何が自分に向いているのか最初はわからないのが当然。まずは幅広い業界に視野を広げること。私も建設会社をはじめ、金融機関や自動車ディーラーなど絞り込まずに企業研究を進めてきました。自分の好きなことは分かりやすいと思うので、オススメしたいのは逆に自分に向いていないことは何か考えること。企業の理念や雰囲気を見る際に、自分の考えに合わない部分や違和感があればそれは何故かを突き詰めて消去していけば、将来働く時にもギャップを感じにくくなると思います。(塩澤さん)

PHOTO
2009年には統合マネジメントシステムの国際規格であるPAS99(品質・環境・安全衛生)を取得。早い段階からICT化で、スピーディかつハイクオリティな施工を実現しています。

マイナビ編集部から

国土交通省が建設業界の生産性向上に向け、ICT活用のプロジェクト「i-Construction」を始動させたのが2016年。以来、土工や測量のプロセスで情報技術を使った取り組みを、広く目にするようになってきた。
今回取材を通して感じたのは、建設業界に定着しつつあるDXだが、これでまさに業務変革を起こし、建設業の仕事の仕方をスマートに変えていこうというヤマウラの積極性だ。

例えば土木部門では、国が2022年に新たな施工要領を出す前から、小規模工事でのICT活用を促進してきた。そこに、土木分野に比べてICT化が補助金や評価点につながりにくい建築分野でも、将来を見据えて各種設備やソフトを積極的に導入。設計から施工までBIMを活用し、業界に先がけた取り組みを進めている。さらに設計部門ではDX専門のチームを立上げ、全社で新たな技術を生かせるノウハウを探っている。
それはおそらく「歴史のある企業」には、骨太の芯がありつつも時代の変化への確かな目と柔軟な対応力が備わっているからであろう。1997年の段階でのテレビ会議システム導入も、先見力と革新力の賜に違いない。

少子高齢化が進む社会で、将来の人員不足が不安視されているのは建設業界にとどまらない。しかし世代を超えてDXに取り組むヤマウラの姿勢には、その中で、いっそう質の高い施工を続けていこうという前向きな志と、働きやすく魅力ある建設業界を築くための希望が感じられると思う。

PHOTO
新たに立ち上げられたDX-Lab.では、設計図面の3D化だけでなく、新技術の導入や活用方法を積極的に提案。BIMなどのDXツールを使って、効率の良い現場運営を支えています。

会社概要に記載されている内容はマイナビ2026に掲載されている内容を一部抜粋しているものであり、2027年卒向けの採用情報ではありません。企業研究や業界研究にお役立てください。

トップへ

  1. トップ
  2. (株)ヤマウラ【東証プライム上場】の取材情報