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「働き方」の強化書 -Design a work style-

福岡元啓Fukuoka Motohiro

プロデューサー

PROFILE

1974年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、98年に毎日放送に入社。2010年より『情熱大陸』5代目プロデューサーに就任。 詳細プロフィール

その世界の第一人者に共通しているのは非常に謙虚であるということ。不安を抱えているからこそ、努力しているんです。

さまざまなジャンルの第一人者を取り上げるドキュメンタリー番組『情熱大陸』。2010年からプロデューサーに就任した福岡元啓さんは、自身も多くの壁にぶつかりながら成長してきたビジネスパーソンだ。多くの一流人との出会いから得た知見に触れてみよう。

いい番組は1行で説明できる

『情熱大陸』について、今さら詳しい説明は不要だろう。1998年春にスタートしたこのドキュメンタリーは、テレビ界を代表する長寿番組の1つで、先ごろ放送800回を迎えたばかり。プロデューサーは現在の福岡氏で5代目を数える。

アスリートやアーティスト、文化人など第一線で活躍する人物にスポットを当て、その素顔を深く掘り下げていく構成は、見る者に多くのヒントと刺激を与えてくれる。福岡氏の言葉を借りれば、「1年間に50回の放送があるとすれば、“今年の50人”にアプローチする番組です」というのがコンセプト。視点を変えれば、プロとして何らかの道に従事する者にとり、『情熱大陸』に取り上げられることは活躍を認められた証であり、最高のステイタス。そうイメージしている視聴者は少なくないはずだ。

「その人の“旬”の時期がいつなのかを判断するのは、なかなか難しいことです。3カ月後には状況ががらりと変わっている可能性もありますから、周囲の状況まで含めてよく観察し、予測しなければなりません。その上で、その人の何を表現したいのかが、シンプルに1行で言い表せることが大切なんです」

30分番組とはいえ、取材に半年以上かけた回も珍しくなく、その内容が非常に濃密であるのは視聴者のよく知るところ。その内容を“1行で言い表せる”ものにするためには、ブレないコンセプトが存在していなければならないのだと福岡氏は語る。

「ヒットした番組、あるいは映画や小説でもこれは同様だと思います。1行で言い表せるものは伝わりやすいし、視聴者にとって見る心構えが作りやすい内容であるはず」

いわく、それがいかに面白い内容であるのかを、長々と語らなければならないようなら、それは制作陣がモチーフを咀嚼しきれていない証拠。だから、取材相手とじっくり向き合い、多くの視聴者に受け入れられやすいテーマや見せ方を考えるプロセスは重要だ。その点に手抜かりがないからこそ、『情熱大陸』はこれほどの人気番組になり得たわけである。つまり、1行に集約してもなお魅力あるコンセプトを、福岡氏は日夜追い求めているのだ。

制作の“いろは”を体験できたラジオの現場

番組制作にあたっては複数のチームが稼働し、今現在も20班が同時に取材を進めている。すべてのチームを統括するプロデューサーの立場としては、情報や進行状況を整理するだけでも大仕事だが、福岡氏は「干渉しすぎないことも大事な仕事の1つ」と事もなげだ。これもキャリアのなせる技か。

「基本的には、あまり現場に口を出し過ぎないようにしています。僕自身もそうでしたけど、上の立場の人間が頻繁に干渉するのって、スタッフからすれば鬱陶しいじゃないですか(笑)。だから、なるべく各チームに裁量を預けるようにしているんですが、心掛けているのは、最初の1つめのボタンだけは確実に一緒にかけるということ。最初のイメージがずれてしまっていると、こちらの意図しない方向にしか物事は進みません。ですから、取材に入る前の打ち合わせは、かなり入念に行うようにしています。共通認識がしっかりしていれば、ズレない仕事になるはずです。でも、途中でズレているなと思ったらめちゃくちゃ干渉します(笑)」

逆に言えば、最初の意思疎通さえ万全であれば、その後は安心して任せることができる。時には現場のミスで謝罪に出向かなければならないような事態も経験してきたが、すべてを血肉として、自身のワークスタイルを育んできた。

そんな福岡氏、局の看板番組を担う現在の姿からは想像しにくいが、ルーキー時代はむしろ劣等生の部類であったという。それどころか、就活の時点で現在の毎日放送は、最初の筆記試験であっさり落ちている。その後、新聞や出版を含め、マスコミ関連企業を片っ端から受験するも全滅。なんとか毎日放送の追加募集に引っかかったことが、業界入りのきっかけだった。

「就職活動で落ちると自分を否定されている気持ちになります。ただ、他にやりたいと思える仕事がまったく見つからなかったんです。進路を1つに絞り込めないなら、いろんな人の人生を見られる仕事がいいかもしれないと直感したのが、マスコミに興味を持ったきっかけ。ほとんど消去法のような考え方でした」

ともあれ、なんとか滑り込んだ毎日放送。最初の配属先は希望していたテレビではなく、ラジオの現場だった。辞令を受けた瞬間こそ、「やはり、多少のガッカリ感はありました」と振り返る福岡氏だが、今日の自身を形成するうえで、これはむしろ重要なキャリアであったという。

「ラジオのディレクターというのは、番組作りの“いろは”をすべて経験できる立場なんです。テレビのようにスタッフが大勢いるわけではないので、構成も進行も編集も、すべて自分でやらなければなりません。大変でしたけど、1年目からこうしていろんな仕事を覚えられたのは幸運でした。おかげで、それなりに応用の効く人間になれたような気がします。それに、担当していた『MBSヤングタウン』という番組は、当時関西では非常に人気の高い番組でしたから、ラジオとはいえいろんなタレントさんと仕事ができるのも嬉しかったですね」

組織の一員である以上、必ずしも希望の配属先に進めるとは限らない。しかし、どのような現場にも必ず学ぶべきことはある。現在の福岡氏は、そんな前向きな姿勢に育まれたものなのだ。

200人の“一流人”に共通するものは?

話を再び『情熱大陸』に戻す。5代目プロデューサーに就任してから、これまでおよそ200人を取り上げてきた福岡氏だが、番組で取り上げてきた一流人に共通するものは何か?

「皆それぞれ、自分の人生を生きているということ。サバイバルの世界に身を置く人、芸術に没頭する人、ジャンルはさまざまですが、彼らの中には金銭的には決して裕福ではない人も少なくありません。それでも、純粋にその道を追求することに日々を捧げているんです。たとえばスーパーで割引品を買う生活でいいのです。とにかく自分のやりたいことに邁進するのが第一なんです。価値観というのは本当に人それぞれなのだと痛感させられますね。こうした確固たるものがある人たちは素晴らしいと思います」

番組が取り上げてきた人物は、決してスターばかりではない。知られざる仕事人にも、幾度となくスポットをあててきた。

「彼らに共通しているのは、非常に謙虚であるということ。その世界の第一人者ですから、もっと自信満々な人物をイメージしがちなのですが、そうではない。皆、不安を抱えているからこそ、努力しているんです」

これはアスリートやアーティストにかぎらず、すべてのビジネスパーソンに通ずる傾向ではないだろうか。では、数々の一流人に接してきた福岡氏の目には、昨今の若い世代の資質はどう映っているのだろう?

「番組の800回記念企画で、“88世代(1988年生まれ)”を特集したのですが、彼らを見ていても、非常に柔軟性が高いと感じます。ゆとり世代といわれていますが、自分の世界観を大事にして生きている。ある意味周りをクールに見ているのかもしれません。これは僕らの世代にはなかった武器でしょう」

一方で、良くも悪くも昭和の気質に欠けるきらいを感じるときもある、とも。

「たとえば報道の現場では、事件の関係者の写真を探したり、決して楽しくはない仕事も多いんです。この時、人は2つのタイプに分かれます。それでもがむしゃらにがんばって探す人もいれば、『その必要はあるのでしょうか?』とまず疑問を呈する人もいます。後者の言い分は理解できるのですが、仕事をしている以上、まずは動いてからものを言うべき。写真が、手元にあるけど出さないのと、ないから出せないのとでは、まったく意味が違います。古臭い考え方だと思われるかもしれないけど、まずはとにかく動くこと。そうでなければ、言い分に説得力も生まれません」

次を担うクールで聡明な世代に、そうした泥臭さが加わったら、それはあらゆるジャンルでサバイブできる人材になり得るかもしれない。

「働き方」を考える3つの視点

  • 不安はあって当たり前。一流人は不安があるから努力している。
  • どんな職場でも身に付けることはある。まずはその環境で全力を。
  • 自分のやりたいことは何か。自分とは何か。考えよう。

PROFILE

  • 福岡元啓Fukuoka Motohiro

    プロデューサー

    1974年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、98年に毎日放送に入社。ラジオ局ディレクターとして『MBSヤングタウン』制作を担当した後、報道局を経て2006年に東京支社へ転勤。10年より『情熱大陸』5代目プロデューサーに就任し、これまでにギャラクシー月間賞、ドイツ・ワールドメディアフェスティバル金賞・ニューヨークフェスティバルを受賞。

  • 著書

    『情熱の伝え方』(双葉社)
    なぜ“一流人”は“一流”になれたのか? 
    そして、どのようにして“一流”であり続けるのか? 
    そのメソッドと答えは本書にある!補欠入社のプロデューサーが目の当たりにした就活生、新社会人、にこそ知ってほしいあらゆる仕事人が実行できる「仕事で本当に必要な共通の法則」。

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