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SPECIAL INTERVIEW ー若き研究・開発者への伝言ー

VOLUME
46

科学の本質は考えること
この当たり前に思えることに徹底して取り組んでほしい

渡邉一哉KAZUYA WATANABE

東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室教授

1962年、神奈川県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科卒業。東京工業大学理工学研究科修士課程修了。金沢大学にて学位(理学博士)取得。東燃(現在のJXTGエネルギー)での研究活動を経て、海洋バイオテクノロジー研究所微生物利用領域長、科学技術振興機構のERATO「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」の微生物グループリーダー、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授を歴任した後、2011年5月から現職。

微生物を使って発電する

電極に付着したシュワネラ

石油や石炭などの化石燃料を消費することで、大気中の二酸化炭素濃度を高めてしまった結果、現在、地球温暖化が大きな問題になっている。徹底した省エネルギーにより、二酸化炭素の排出削減が求められているものの、今ある便利な生活を手放してまで排出削減に踏み切ることは難しく、温暖化問題を解決できるほどには大気中の二酸化炭素濃度を抑えられていない。そこで、化石燃料を消費することなく、大気中の二酸化炭素を吸収して育って生物からエネルギーを得る研究開発が進められている。地上の生物を利用している限り、エネルギーを得る際に二酸化炭素を排出することになっても、元々は大気中の二酸化炭素を利用して育った植物を原料としているため、大気中の二酸化炭素を増やすことはないというわけだ。

こうした考え方は“カーボン・ニュートラル”と呼ばれて、さまざまなアプローチで研究が進められているが、東京薬科大学生命科学部の渡邉一哉教授らの研究グループは、微生物を使った発電システムの開発を進めている。この微生物発電について渡邉教授がこう説明してくれた。

「1990年代から湖の底にたまった泥の中に、シュワネラ菌という周囲に電子を放出する発電細菌の存在が知られていました。電子を放出するのですから、微生物のそばに電極を置いてやれば電子を受け取って電気を得られるでしょう。その後、こうした考えの下、シュワネラ菌をはじめ、さまざまな発電菌を使って、微生物発電の研究開発を進めています」

プラスを生み出す研究がしたい

エサとして有機物を与えて発電細菌を培養し、発電細菌が放出する電子を電極から取り出せば微生物発電が出来上がるだろう。微生物に与える有機物に、大気中の二酸化炭素を吸収して生育した植物由来の有機物を使えば、たとえ微生物が二酸化炭素を排出しても大気中の二酸化炭素を増やすことはない“カーボン・ニュートラル”が実現する。高効率に発電できるシステムが開発されれば、地球温暖化対策の一助になりそうだが、渡邉教授が研究キャリアをスタートさせた当初から微生物発電を研究していたわけではなかったという。

大学の修士課程を修了した後、石油会社に就職した渡邉教授は、大学院で微生物の研究をしていたこともあって、研究部門で石油を分解する微生物の研究に取り組んでいた。タンカーの事故などにより環境中に流出した石油を速やかに分解する技術として活用できるため、石油を分解する微生物の研究は意義深いものではあるが、研究を続けるうちに別の方向に目が向いていった。渡邉教授がこう語ってくれた。

「石油を分解する技術は石油流出という問題を解決するためのもので、言ってみればマイナスをゼロに戻すためのものです。研究を続けるうちにマイナスを回復させるのではなく、プラスを生み出す研究をしたいと考えるようになりました」

そして海洋バイオテクノロジー研究所に移った渡邉教授は、従来の石油分解菌の研究を続けながらも、新たにメタン生成菌の研究に取り組むことになった。メタン生成菌は、その名が示す通り、燃料となるメタンガスを生み出す細菌であるため、この研究が進展すれば微生物による燃料生産が実現するだろう。まさに渡邉教授を望んだプラスを生み出す研究だったのだ。

アメリカからのメールが新たな研究を切り拓く

新たな方向での研究ではあったが、種類が違えども微生物を扱うことには変わりはない。それでも研究で培ったノウハウを活かすことで、渡邉教授はメタン生成菌の研究にも取り組むことができた。

そんな渡邉教授に大きな転機が訪れる。アメリカのある研究者から共同研究の打診がもたらされたのだ。当時を振り返って、渡邉教授がこう説明する。

「私が書いたメタン生成菌についての論文を読んでくれたアメリカのある研究者がメールを送ってくれたのですが、そこで示されたのが微生物発電だったのです。何度かメールのやり取りを繰り返すうち、これは面白い研究になりそうだ…と感じて、微生物発電の研究に取り組むようになりました」

渡邊教授にとっては受動的に新たな研究の道が拓けたことになるが、研究者にとって新たなテーマを開拓する上で、学術誌に掲載された論文を糸口に共同研究を求める著者に連絡をとることは王道と言える手法だ。大半の学術誌には、連絡先として著者のメールアドレスが紹介されている。何か興味を持った論文があれば、掲載されたメールアドレスに連絡を取っていけば、新たな研究の道が拓けていくに違いない。

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