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JAで求められる人材とは?

日本の農業の新しい可能性を切り拓くために、どんな人材が求められるのか?
また、JA職員がどのようや役割を果たしていくべきなのか、
福井県立大学の北川太一先生お聞きしました。

協同組合の理念の下、経済的弱者を支える組合員組織

皆さんは農業と聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。 かつて、農業には「高齢化が進み、後継者がいない」「体力的にきつい」など、ネガティブな印象がありました。実際、後継者問題や収入維持・拡大など、今も農業には多くの課題が存在します。

しかし、近年は従来のイメージを覆すような新しい取り組みが進んでいます。その背景には、農業に対する考え方そのものが変化していることがあります。農業を私たちの生活を支える「食」として捉え、生産者が抱えている課題は、私たち消費者にとっても重要な課題であると捉えられるようになってきたのです。たとえば水田は、雨が振ったとき雨水を一時的に溜める貯蔵のような役割を果たし、土砂崩れなどの自然災害を防ぐ役割もあります。また、農家に滞在して、地域の自然や文化に親しむ「グリーン・ツーリズム」の取り組みも増えています。このように、農業は「米や野菜を生産する」という役割以外にもさまざまな機能を果たしており、食・農・地域という観点から農業の重要性が見直されるようになってきたのです。その具体的な取り組みとして、食育を「食と農を結びつける活動」と位置づけて「食農教育活動」などが各地で取り組まれています。地域の子どもたちに水田や畑を開放して農作業体験を行ってもらうなど、さまざまなイベントを開催して、食べることの意味を考えてもらっているのです。

このような状況において、JAは2つの側面から農業の支援を行います。1つは、JAの組合員を支える事業。民間の企業でいうところの「事業」と捉えていただくとわかりやすいかと思います。JAの事業は、営農指導(農業者の経営支援)や農家が生産した農産物の販売、共済や金融(貯金や貸付など)、福祉サービスの提供などがあり、これらの事業を通じて組合員の皆さんの生活を守っています。もう1つは、一般の消費者も含めて地域に向けた活動です。これは、企業でいうところの「広報」です。食農教育活動や地産地消のための活動など、JAは組合員以外の人々に向けて、さまざまな活動を行っています。

農業者の生活のすべてを支えるのがJAの仕事

2016年11月、「協同組合の思想と実践」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。協同組合には「多くの人があつまり、一人では難しい課題の解決や改善を力を合わせて行っていく」という目的があり、その考えや取り組みが評価されて登録に至りました。

JAもまた、協同組合の1つです。近年、農業はもちろん暮らしや地域の課題は決して少なくなく、このような課題を抱える組合員に手を差し伸べるのが協同組合であるJAの役割です。

協同組合としての役割を前提に考えると、JAだけですべての取り組みを完結させるのではなく、生協や漁協、森林組合、場合によっては地域の団体やNPOなど、さまざまな組織と手を結んで、「協同」の力をさらに大きくしていくことが必要ではないでしょうか。特に広報活動を進めていく上では、他の協同組合と協力し合うことで、より多くの人々に効果的に農家の取り組みを知っていただくことができるでしょう。協同組合同士の連携は、近い将来、JAの職員となる学生の皆さんにもぜひ、考えてほしい点です。

農業を取り巻く環境を見渡すと、競争は激化する傾向にあるように思います。株式会社など法人を設立し、量販店や飲食店と直接、契約する農家も増えています。JAの事業の中には、これまでの方法のみにとらわれないで見直しをして改善していくことも求められていると言えるでしょう。

つまり、JA組織内の各事業を見直し、改善するとともに、JA以外の協同組合ともネットワークを築いて、広く一般の人々に農業や食料の問題を知ってもらう活動を進めていく。これが、JAが取り組むべき重要な課題だと思います。

求められるのは、農業の課題に立ち向かうやる気に満ちた人材

一口にJAといっても、JA全中(全国農業協同組合中央会)やJA全農(全国農業協同組合連合会)など、中央会や事業連合会が全国や都道府県段階にあり、全国各地には650弱のJA(総合農協)が存在します。そして、どの組織に就職するかによって、必要となる姿勢も変わってきます。

JA全中やJA全農を目指している方は、日本の農業を大きな視野で捉える姿勢が必要です。そして、地域のJAへ就職したいと考えている方は、「地域の農家のために」「地域の消費者のために」という視点が不可欠です。前者は直接、組合員と関わることは少なく、逆に、後者は地域の組合員と最も近い距離にいます。農家をはじめとする組合員と直接、コミュニケーションを取りながら、一緒になって経営について考えていきます。

ただし、JAのどの組織に就職したとしても、「組合員のために」という目的に変わりはありません。JAのすべての組織がそれぞれの役割を発揮することで、初めて、JAの目的は達成されることを、学生の皆さんに知っておいていただきたいと思います。

近年、JAは自己改革に取り組んでいます。これは、「政府主導ではなく、自らの力でJAを変えていく」との考えによるもので、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の3つの実現に向けた改革を進めています。今後、若い職員の発想がJAの新たな取り組みにつながる可能性があります。これからJAに入職する皆さんにもぜひ、「日本の農業や地域をより良くするために」という視点から多くのアイデアを考えてほしいですね。

最後に、JAは協同組合であり、株式会社とは異なる組織です。行っている事業は株式会社と似ていますが、根底にある考えが大きく異なります。その理念に共感した方にこそ、JAを目指してくれたら嬉しいです。

プロフィール

北川 太一 KITAGAWA TAICHI

福井県立大学 経済学部 教授
1959年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了。鳥取大学助手、京都府立大学助教授などを経て現職。主な著書に『1時間でよくわかる 楽しいJA講座』、『協同組合の源流と未来』などがある。地域農林経済学会会長、日本協同組合学会副会長などを務める。

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