東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例1

メキシチールカプセル
過量服用の意外な原因

事例内容

メキシチールカプセル(一般名:メキシレチン塩酸塩製)1回1カプセルを1日2回服用するようにとの処方意図にもかかわらず、患者は1回に2カプセル服用していた。

<処方>70歳代の男性。不整脈。処方オーダリング。病院の内科。

メキシチールカプセル100mg
2カプセル 1日2回
朝夕食後服用 7日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

処方から4日後に、患者から処方医に対して「薬が切れたので、家族のものが薬を取りに行きます」と連絡があったため、処方医から薬局に対し、「患者が間違って薬を多く服用していないか確認してください」との依頼があった。薬剤師が服用状況を確認したところ、患者が1回に2カプセルずつ飲んでいたことが判明した。理由を聞くと、「この包装(PTP)が2個ずつ切れるので、てっきり1日2個飲むのかと思った」と患者は答えた。薬剤師は今度から正しく服用するように患者に指導した。幸い、特に有害事象は発生していなかった。ところが、さらに3日後、患者が「いや〜、またやっちゃった。どうしても1回に2カプセル飲んじゃうんだよね」といって来局。薬剤師はメキシチールを1カプセルずつ切り離せるように、PTPシートの中央をハサミで切断して患者に交付した。それ以降、患者は正しく服用できるようになった。

原因

メキシチールのPTPシートのミシン目が2カプセルずつ付けられていることや、患者が他科から処方されているエパデール 300(一般名:イコサペント酸エチル)を1回2カプセル服用していたことから、薬袋に記載された用法用量を全く確認せずにメキシチールも2カプセルを1回量と勘違いして服用してしまったと推測される。薬剤師の方も、用法用量通りに正しく服用することの重要性や過量服用の危険性について患者に伝え切れていなかった。  また本事例においては、薬剤師はメキシチールカプセルのPTPシートの中央をハサミで切断して、1カプセルずつとれるようにして交付した結果、患者は正しく服用できるようになったが、このような対応はPTP誤飲の危険性が高まる。そのため、誤ってPTPシートごと服用しないように注意を促すとともに、PTPがなぜ薬剤2個単位ずつ区切られているかを理解してもらう必要があるかもしれない。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

メキシチールの   により   を発症。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

メキシチールの過量服用により心停止を発症。

今後の対応

【今後の対応】
PTPシートのミシン目で区切られる最小単位と1回量が異なる場合、用法・用量通りに正しく服用することを指導するとともに、過量服用した場合の危険性について説明する。

【具体的な説明や確認】
このメキシチールカプセルは1回1カプセルを1日2回、朝食後と夕食後に服用してください。カプセルの入ったPTPシートは2個ずつミシン目で切り離せるようになっていますが、これはPTPシートごと誤って飲んでしまうことを防ぐためのもので、切れ目ごとが1回分ではありませんのでご注意ください。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。