東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例10

アルケラン処方にもかかわらず
血液検査が未実施

事例内容

アルケラン錠(一般名:メルファラン)を処方されているが、薬剤師が患者インタビューにおいて、血液検査が行われていないことに気づいて医師に確認した結果、処方ミスが判明した。

<処方> 70歳代の女性。胃炎(後日判明)。処方オーダリング。病院の外科。

アルケラン錠 2mg 2錠 1日2回 朝夕食後服用 14日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は大学病院に通院しており、保険薬局では上記の処方で抗癌剤アルケランの投薬が行われていた。患者には処方医から胃炎のために薬を出していると説明を受けていることが薬歴に記載されていた。前回(3回目の来局時)、薬剤師Aは癌告知されていないと考えて薬剤についての確認などは特にしなかった。4回目の来局時に薬剤師Bが患者に血液検査を行っているかと尋ねたところ、これまで行ったことはないとのことであった。Bが医師に問い合わせたところ、アルサルミン(一般名:スクラルファート)をアルケランと間違えていたことがわかった。患者は直ちに入院となり、有害事象が起きていないか検査をすることになった。

原因

アルケラン投与中は頻回に血液検査を行い、特に白血球数、血小板数を指標として適宜用量を増減または休薬する必要がある。 しかし、本事例においては、薬剤師Aは患者インタビューを怠ったため血液検査が実施されていないことに気づけなかった。逆に、薬剤師Bが行ったように、検査の実施状況を確かめれば処方の誤りを発見できる可能性がある。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

抗癌剤の で死亡。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

抗癌剤の誤投与による副作用で死亡。

今後の対応

【今後の対応】
アルケランなどの抗癌剤が処方されている場合には血液検査が行われているかどうかを確認する。特に、アルケランとアルサルミンは薬名が類似していることからも、十分な注意が必要である。

【具体的な説明や確認】
アルケランというお薬が出て1カ月程度になりますが、お体の調子はどうですか。何か変わったことはありませんか。血液検査などはされていますか。そうですか、最初から血液を採られたことはないということですね。先生に確認してみますので、少々お待ちください(別室にて電話で確認)。

閉じる

プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。