東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例11

フルタイドロタディスクに
針を貫通させず吸入

事例内容

吸入感がないため、吸入がうまくできたかどうか不安になった。実は、フルタイドロタディスク(一般名:プロピオン酸フルチカゾン)に針を十分に貫通させないまま使用していた。

<処方> 20歳代の女性。気管支喘息。処方オーダリング。病院の呼吸器内科。

フルタイド100ロタディスク 4ブリスター/枚 全14枚 1回1吸入 1日2回 朝夕に1回ずつ吸入 テオドール錠100mg 4錠 1日2回 朝夕食後服用 28日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は今回、初めてフルタイドロタディスク<フルチカゾンプロピオン酸エステル>を処方され、薬剤師から詳細な説明を受けた。その中に、薬がうまく吸入された場合、わずかな甘味と粉の感覚を口の中に感じるとの説明もあった。いざ吸入しようとディスクに穴を開ける段になって、指示されていた通りに吸入器(ディスクヘラー)のふたを立てた。しかし、その操作が不十分であったため穴の開き方が足りなかった。患者自身、わずかな甘味や粉の感覚を口の中に感じることがなく、吸入がうまくいっていないのではないかと不安になった。

原因

薬剤師はフルタイドロタディスクの吸入方法として、吸入器を水平に保ち、ふたを立てディスクに穴を開けて再びふたを閉じるという説明をしたはずだったが、垂直にふたを立てることでディスクの上面から下面まで針を貫通させるという行為の意味までは患者に伝わらなかったと考えられる。このため、患者は十分に立ち上げると逆に吸入器が壊れてしまうのではないかと思い、垂直になるまで立てなかったという。その結果、十分な薬剤が放出されず、吸入が成功した場合の「わずかな甘味や粉の感覚を口の中に感じる」ことがなかった。薬剤師による使用法の説明が不十分だったことが一番の原因である。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

  が起こり入院。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

喘息コントロール不良で喘息発作が起こり入院。

今後の対応

【今後の対応】
フルタイドロタディスクは、飲み薬ではなく、吸入器に装着して吸入すること、ディスク(薬)は吸入の直前に穴を開けて吸入することなど薬の装着方法と実際の吸入方法について懇切丁寧に説明する。特に、吸入器のふたを「垂直に至るまで立ち上げる」ことを十分に指導する必要がある。

【具体的な説明や確認】
吸入する時には、吸入器を平らにして、ふたを垂直になるまで十分に立ち上げ、そして再びふたを閉じてください。この操作により薬の入っているディスクの上面から下面まで針が貫通し、薬を吸入できる状態になります。ふたを垂直に立ち上げるときは中途半端ではなく、「ざくっ」と刺さった感じになるまで十分に行ってください。

閉じる

プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。