東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例12

1日1回のキサラタン点眼液を
1日2回点眼

事例内容

2種類の点眼剤を使用後、各薬袋に戻す際に入れ違えてしまったために、次回使用時に1日1回点眼すべきキサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト)を1日2回点眼してしまった。

<処方> 66歳女性。緑内障。処方オーダリング、病院の眼科。

.サラタン点眼液 0.005% 2.5mL 1本 1日1回 朝 右目に1滴 ▲戰肇廛謄ック点眼液0.5% 5mL 1本 1日2回 朝夕 右目に1滴 (朝は,鯏栖磴靴5分後に△鯏栖磧

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

処方された両点眼剤は別々の薬袋に入れられ、それぞれの薬袋には「1日1回 朝 右目に1滴」、「1日2回 朝夕 右目に1滴」と記載されていた。しかも、キサラタン点眼液の薬袋には、「このお薬は1日1回1滴の目薬(点眼薬)です」と記載されたメーカー製の説明書が添付されていた。しかし患者は、ある時それら点眼剤を使用後、各薬袋に戻す際に入れ違えてしまった。次の日、薬袋に書かれた使用法にしたがってキサラタンを1日2回、ベトプティック(一般名:ベタキソロール)を1日1回使用してしまった。患者は、2週間後に再度薬局を訪れるまでこの取り違えに気がつかなかった。

原因

患者は、薬袋の表記に従い点眼剤を使用していたと思われる。点眼剤のラベルの文字はとても小さいため、高齢者や目の不自由な患者などは文字が大きい薬袋の記載に目が行きがちである。故に、点眼剤を薬袋に戻すときに間違ってしまえば、そのまま誤使用してしまうことは十分に起こり得ることである。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

キサラタン過量使用で などの が発生。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

キサラタン過量使用で虹彩色素沈着などの有害事象が発生。

今後の対応

【今後の対応】
薬袋に大きな文字で用法用量は記載するのは当然であるが、点眼剤のボトルにも1日点眼回数を記載するようにする。また、字が小さくて読めない場合には、色付きのシールを貼ることも識別に有効かもしれない。例えば、キサラタン点眼液には青いシール、ベトプティック点眼液には赤いシールを貼り、青いシールの点眼剤は1日1回、赤いシールの点眼剤は1日2回点眼と区別してもらう。さらに、薬袋にも青いシールと赤いシールを、点眼剤のシールと対応して貼り付ければ、袋に戻す時の入れ間違いを防げる。

【具体的な説明や確認】
今回は、2種類の点眼剤が出ております。1日1回点眼のキサラタン点眼液と1日2回点眼のベトプティック点眼液です。それぞれの薬の袋と容器に色つきのシールが貼ってあります。キサラタン点眼液には青いシール、ベトプティック点眼液には赤いシールです。青いシールの点眼剤は1日1回、赤いシールの点眼剤は1日2回点眼してください。点眼し終わったあとには、それぞれの同じ色のシールの薬袋に戻してください。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。