東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例13

オフサロン点眼液の点眼後の
苦味で使用中止

事例内容

オフサロン点眼液(一般名:クロラムフェニコール・コリスチン配合)を滴下するたびに、ひどい苦味を感じたため点眼をやめた。

<処方> 50歳代の女性。眼瞼炎。処方オーダリング。病院の眼科。

オフサロン点眼液 5mL 1本 1日4回 毎食後及び15時 両眼に1滴ずつ

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は、眼瞼炎のためオフサロン点眼液が処方された。2日ほど使用していたが、毎回点眼後、口の中で苦味を感じてとても不快な気分になった。このため点眼するのが嫌になって、3日目から使用しなくなった。このことは再来局時に患者が申告したことで判明した。薬剤師は事前に、オフサロンを点眼後、薬剤が眼から鼻へ至り、口腔内へ一部が排出されて苦味を感じることがあるため、涙嚢部をしばらく圧迫するようにとの説明をしていなかった。

原因

点眼剤の薬液は点眼後、眼球を湿らしながら、目頭(内眼角)に集まる。その後、まばたきに伴う涙小管・涙嚢のポンプ作用によって吸引され、涙点から吸い込まれて手涙小管を通過し、涙嚢・鼻涙管を経て鼻腔に排出される。鼻腔内に排出された一部の薬液は口腔内粘膜や咽頭粘膜に至り、嚥下されて消化管から吸収される。本事例においても、オフサロン中に含まれるクロラムフェニコールが点眼後に鼻腔に排出され、口腔内粘膜に至った際に苦味を感じたものと考えられる。これを回避するためには、点眼後、数分間、涙嚢部圧迫や閉眼を行うことが必要である。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 による の悪化。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

点眼中止による眼瞼炎の悪化。

今後の対応

【今後の対応】
オフサロン点眼液が処方された場合、薬剤が眼から鼻へ至り、最終的には口腔内へ一部排出され、クロラムフェニコールの苦味を感じることがあると事前に説明する必要がある。また、それを回避するためには、点眼後、数分間、涙嚢部圧迫や閉眼を行うことが最良の方法である。その場合、涙嚢部がどの辺りにあるかを示して、正確な手技を指導する必要がある。

【具体的な説明や確認】
今回、オフサロン点眼液が出ておりますが、点眼後、お薬の一部が鼻から口に入って苦味を感じることがあります。例えば、泣いたときに涙が鼻に流れて、鼻水がずるずると出ることがありますが、それと同じです。苦味が出ても特に問題はありませんのでご安心ください。苦味が気になるようでしたら、点眼後、目頭のところをこのように軽く押さえてください。それを数分間続けると、ある程度苦味を避けることができます。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。