東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例14

リボスチン点眼液とフルメトロン
を連続して点眼

事例内容

患者はチモプトールXE点眼液(一般名:マレイン酸チモロール)とサンピロ点眼液(一般名:ピロカルピン塩酸塩)の使用順はどちらが先であっても治療効果は同じだと考え、時々チモプトールXEを先に点眼することがあった。

<処方> 50歳代の男性。アレルギー性結膜炎。処方オーダリング。病院の眼科。

リボスチン点眼液0.025% 5mL 1本  フルメトロン点眼液 0.1% 5mL 1本
1日4回 朝・昼・夕・就寝前 両眼に用時振り混ぜて1滴ずつ

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

リボスチンとフルメトロンが出されたとき、薬剤師はそれぞれの点眼の間隔を5分間取ってくださいと説明した。しかし、患者は就寝時にはゆっくり指示通り点眼できるが、忙しくしている日中は、5分を待たないで点眼してしまうことがしばしばあった。患者自身がこのノンコンプライアンスを気にして、良い対処方法はないものかと電話で薬剤師に問い合わせた。

原因

水溶性点眼剤同士を連続して使用すると、先に点眼した液が、後に点眼した液によって洗い流されてしまう可能性がある。実際、ウサギの実験において、ピロカルピン(商品名:サンピロ0.5%ほか)を点眼し、0.5、1、2、3、5分後に生理食塩液を点眼したところ、3分後までは房水内ピロカルピン濃度が60%以下に低下したが、5分後においては生食を点眼しない場合とほぼ同じ程度であった(J.Pharmaceu.Sci.1976;65:1816-1822.)。また、定常状態では結膜嚢内には約7μLの涙液があり、無刺激状態では1.2μL/分の割合で涙液が産生されていることから、結膜嚢内の涙液が完全に置換するのに約5分を必要とすると考えられている。これらの知見から、点眼後は涙嚢部圧迫または閉眼を行いながら5分間待って、次に点眼を行うことが最も望ましいと思われる。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 のため が悪化。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

薬効不十分のため結膜炎が悪化。

今後の対応

【今後の対応】
本事例のように、患者によっては5分待つのは面倒だからと続けて点眼してしまう場合が少なくない。この5分待機の問題を解決するには、食事のタイミングを利用すると有効かもしれない。例えば、点眼剤2剤なら、一つを食前に、もう一つを食後に点眼する。点眼剤3剤なら、食前、食事中、食後にそれぞれ点眼するようにすれば、5分の間隔を十分に確保できる。また、食事のタイミングに合わせることによりコンプライアンスの維持も期待できる。

【具体的な説明や確認】
今回、リボスチンとフルメトロンという二つの点眼剤が処方されています。これらを連続して点眼すると先に点眼した目薬が、後に点眼した目薬によって洗い流されてしまう可能性があるので、5分以上の間隔を空けて点眼する必要があります。普段忙しくて5分の間隔を空けるのは難しそうですか。そういう方には、食事のタイミングを利用することをお勧めします。例えば、朝の食事の前にリボスチン点眼液を点眼して、食後にフルメトロン点眼液を点眼するという具合です。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。