東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例15

チモプトールXEをサンピロより
先に点眼

事例内容

患者はチモプトールXE点眼液(一般名:マレイン酸チモロール)とサンピロ点眼液(一般名:ピロカルピン塩酸塩)の使用順はどちらが先であっても治療効果は同じだと考え、時々チモプトールXEを先に点眼することがあった。

<処方> 60歳代の男性。緑内障。処方オーダリング。病院の眼科。

チモプトールXE点眼液 0.25% 2.5mL 1本 1日1回 朝 両眼に1滴 サンピロ点眼液 1% 5mL 1本 1日2回 朝夕 両眼に1滴

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は、2種の点眼剤を同時期に使用するのが初めてだった。薬剤師から、効能効果や副作用の説明、使用法として2剤の点眼間隔を10分間空けるようにとの注意は受けていた。しかし、どちらの点眼剤を先に点眼するかいうことに関しての説明は一切受けていなかった。再来局時に、薬剤師が二つの点眼剤の点眼方法について尋ねたところ、点眼する順番については特に気にかけていないことが発覚した。

原因

チモプトールXEは、後から点眼した薬剤の吸収を遅延させる可能性があるので、最後に点眼することになっている。しかし、本患者に対して、薬剤師はそのことを説明していなかった。一般に患者はどちらから点眼しても問題ないと考えるのが普通である。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 により が悪化。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

薬効の減弱により緑内障が悪化。

今後の対応

【今後の対応】
点眼後ゲル化して効果が持続するタイプのチモプトールXEやリズモンTG点眼液(一般名:チモロールマレイン酸塩)などは、後から点眼した薬剤の吸収を遅延させる可能性があるので最後に点眼する。やむを得ずこれらの薬剤を点眼した後、他の点眼剤を使用する場合には、ゲル化した点眼剤の吸収を妨げる恐れがあるので、本剤点眼後に十分な間隔を空けて他の点眼剤を使用するよう指導する必要がある。また、一番効かせたい薬が洗い流されないように、効果をより期待する点眼剤の方を後に点眼することも重要である。ただ、次の点眼まで待っている間に差し忘れてしまう患者もいる。そのような患者の場合は、重要な薬を先に差すように指導することがよいかもしれない。

【具体的な説明や確認】
今回、二つの目薬が処方されていますが、差す順番に注意してください。まずサンピロという目薬を差して少なくとも10分経過してから、チモプトールXEという目薬を差してください。逆にすると、最初に差した目薬の効果の現れ方が遅くなる可能性があるからです。きちんと順番を守って点眼してください。

閉じる

プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。