東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例17

キサラタン点眼液を
コンタクトレンズ装用中に使用

事例内容

コンタクトレンズを装着したまま、キサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト)を点眼していた。 

<処方> 50歳代の女性。緑内障。処方オーダリング。病院の眼科。

キサラタン点眼液 0.005% 2.5mL 1本 1日1回 朝 両目に1滴

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は最近、人間ドックで高眼圧であることが判明し、診断の結果、緑内障であることがわかった。そのため今回、キサラタン点眼液 0.005%が処方された。患者はこれまでコンタクトレンズの装用中でも点眼可能な、防腐剤の入っていない涙液(生理食塩液)タイプの点眼剤をよく使っていたため、本剤もコンタクトレンズ装用中に使用できると思い込んでいた。

原因

一般にハードコンタクトレンズの装用中における点眼は問題が少ないといわれている。しかし、ソフトコンタクトレンズにおいて保存剤や薬剤が吸着することがあるため、装用中の点眼は不可とされている場合が多い。ソフトコンタクトレンズに影響を与える保存剤としてはベンザルコニウム塩化物、薬剤としては種々ある(ポケット医薬品集「 2019年版参照、1128頁)。これらの成分はソフトコンタクトレンズに吸着し、角結膜との接触時間が長くなると上皮細胞傷害を引き起こす可能性があると考えられている。  しかし、いずれのコンタクトレンズであっても、点眼剤の使用期間中はコンタクトレンズを使用しないのが原則である。角膜などに傷や炎症がある場合、コンタクトレンズを装着すること自体が病態を悪化させることになる。上記の保存剤の問題も懸念される。さらに、最近ではコンタクトレンズにも様々な種類があり、薬剤との相互作用のデータが網羅されているわけではない。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

コンタクトレンズ装着中の使用による 

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

コンタクトレンズ装着中の使用による角結膜傷害。

今後の対応

【今後の対応】
原則として、コンタクトレンズ装着中は点眼剤の使用は控えた方がよい。どうしても点眼中にコンタクトレンズを入れたいという場合は、いったんコンタクトレンズを外して点眼し、ある程度時間が経過してからコンタクトレンズを再装着するよう指導する。医師の総合的判断からコンタクトレンズ装着時でも点眼可能とされている場合でも、眼に対する刺激感などの異常を感じたら、いったん点眼を中止して医師や薬剤師に申告するように指導する。実際、キサラタン点眼液に含まれる塩化ベンザルコニウムによりコンタクトレンズが変色することがあるので、コンタクトレンズを装用している場合は、点眼前にレンズを外し、15分以上経過後に再装用するなどの注意が喚起されている。

【具体的な説明や確認】
コンタクトレンズを使用されていますか。そうですか、ソフトコンタクトレンズをこれまで20年間も使用されているのですね。市販されている涙液タイプの点眼剤の中には、コンタクトレンズ装着中でも点眼できるものがありますが、今回処方されたキサラタン点眼液には保存剤が入っておりまして、コンタクトレンズを変色させたり、眼に悪影響を与えたりすることがあります。コンタクトレンズを付けている場合は、点眼前にレンズを外して、15分以上経過後に再び付けるようにしてください。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。