東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

2週間に1回更新中!

事例02

セレネース液の過量服用

事例内容

長い間セレネース内服液(一般名:ハロペリドール)を服用している患者がA薬局に変えたところ、前薬局と本剤の調製方法(希釈率)が異なっているにもかかわらず、前薬局で指示された量を服用したため、痙攣を起こした。

<処方> 40歳代の女性。統合失調症。処方オーダリング。病院の精神科。

セレネース内服液0.2% 4.5mL
1日1回 就寝前服用
20日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

前薬局でトラブルを起こして行きにくくなり、A薬局へ初めて訪れた。薬はいつも患者の代わりに家族が受け取っている。A薬局の薬剤師はその家族に前の薬局名を尋ねたが、どうしても教えてくれなかった。仕方なく、薬剤師はA薬局での調剤方法で薬液を調製し、患者の家族に交付した。その時、1回服用量を薬瓶にマジックインキで明示して家族にも説明したにもかかわらず、患者は前薬局が指示した量のまま服用し、痙攣を起こした。前薬局での調製方法(希釈率など)を患者の服用量から逆算して求めたところ、A薬局より薄い濃度で調剤していたことが判明した。

原因

この事例は、同一患者において同一の液剤が複数の薬局で調剤されている場合、薬局ごとに液剤の調剤方法が違っている可能性を想定した上での懇切丁寧な説明(服用量など)が不足していたことが原因と考えられる。また、他の薬局の名前や連絡先などが不明でも、患者や家族へのインタビューの中で他薬局が指示した服用量を聞き出し、希釈率などを推定できたはずである。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 を起こして倒れ、 が悪く死亡。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

痙攣を起こして倒れ、打ち所が悪く死亡。

今後の対応

【今後の対応】
希釈を伴う液剤の処方せんを受けた場合、他の薬局でも同様の液剤の交付を受けたことがあるかをチェックし、そうであれば、調剤方法が薬局間で異なることを説明し、指示した服用量を守るよう指導する。また、薬剤の調製方法(希釈の有無、希釈の方法、1回服用量など)を詳細に書いた紙を渡して、他の薬局に同じ処方せんを出す場合には見せるように指示する。さらに、患者の代理人(家族など)に薬を交付する場合、患者へ情報が正確に伝わらない可能性があるので、服用法などを口頭で説明するだけではなく、紙に書いて渡して、患者自身にも確認してもらうことが必要である。

【具体的な説明や確認】
セレネースは薬局で液剤を希釈してお出ししておりますが、これまで通われていた薬局と私どもの調製したお薬の濃度が違っていると、同じ量を服用した時、薬の作用が足りなくなったり、逆に強くなったりすることがあります。ご参考まで、前回かかった薬局の名前や今まで飲んでいた液剤の用量を教えていただけませんか? おわかりにならなければ結構ですので、今回私どもがお出ししたお薬の用量を必ずお守りください。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。