東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例18

指の痛みでインテバン坐剤を
包装から取り出せず

事例内容

指関節の疼痛のためインテバン坐剤(一般名:インドメタシン)を包装から取り出せず、直腸への挿入をあきらめてしまった。

<処方> 68歳の女性。回帰性リウマチ。処方オーダリング、病院の内科。

インテバン坐剤 25 2個 1日2回 朝夕 14日分
プレドニン錠5mg 3錠 1日3回 毎食後 14日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

これまでプレドニン錠(一般名:プレドニゾロン)のみで治療されていたが、今回からインダシン坐剤が追加された。インダシン坐剤を包装から取り出すとき、手のこわばりと指関節の痛みのために「開け口」を広げることができず薬剤を取り出せなかった。独り暮らしのため人に頼むこともできず、結局、本剤の使用をあきらめてしまった。仕方なく、薬剤師に電話で問い合わせた。医師との協議の結果、坐剤の代わりに内服剤を服用することとなった。

原因

坐剤を直腸に挿入する最初のステップは包装から坐剤を取り出すことである。本患者においては、その最初の基本的な行為が不可能だったが、薬剤師は事前に発見することができなかった。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

坐剤中止により 

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

坐剤中止によりリウマチが悪化。

今後の対応

【今後の対応】
包装から坐剤を取り出すという基本的な行為すら困難な患者が存在することを認識して服薬指導に当たる必要がある。患者インタビューから、疾患の状態、手の動きが自由にできるかどうか、自宅に介護の人がいるかどうかなどをチェックすべきである。

【具体的な説明や確認】
前回、リウマチとおっしゃっていましたが、その後いかがですか。今回はインダシンという坐薬が出ております。このように包装を開いて中から坐薬を取り出してお尻に入れる必要がありますが、ご自身でできますか。もし無理でしたら、ご家族の方に手伝ってもらうか、お独りでお住まいでしたら、先生に聞いて飲み薬に代えてもらうこともできますが、いかがでしょうか。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。