東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例19

アンテベート軟膏と白色ワセリン
の古い混合剤を再使用

事例内容

1年前に処方された白色ワセリンとアンテベート軟膏(一般名:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)混合剤を使っていた。

<処方> 58歳女性。湿疹・皮膚炎。処方オーダリング、病院の内科。

アンテベート軟膏0.05% 20g
白色ワセリン 20g
両製剤を混合 1日3回 両手全体に塗布

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

1年ほど前、病院で湿疹・皮膚炎のためにアンテベート軟膏・白色ワセリン混合剤が処方され、2週間して改善が見られたため使用を中止した。しかし最近、同じ時期になって湿疹がひどくなり、病院にかかるのは面倒と思い、去年使った軟膏の残りを薬箱の奥から取り出して使用した。しかし一向に改善しないため、病院の診察を受けた。再来局時に事実が判明した。

原因

アンテベート軟膏・白色ワセリン混合剤は2週間では全く変化しないが、4週間後にはわずかに液層または基剤が分離するとの報告がある。本事例では、薬剤師が1年前の薬剤交付時に「2週間をめどに使用してください。それでも改善が見られないときには再度診察を受けてください。古くなった軟膏は廃棄するようにしてください」と説明していた。1年を経て患者はこの注意事項をすっかり忘れてしまっていたと思われる。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 により湿疹・皮膚炎が悪化。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

変性した薬剤の使用により湿疹・皮膚炎が悪化。

今後の対応

【今後の対応】
薬局などで混合・交付される軟膏は、医師や薬剤師から指示された期間のみ使用可能であることを患者や家族に伝える。疾患が改善後、しばらくして同様の症状が現れたとき、残存した混合軟膏剤を使用してしまう可能性がある。その時、軟膏容器には使用期限などが記載されていないため、再使用禁止の注意を忘れてしまう患者も多いと思われる。再発した場合には、決して古い軟膏を使用することなく、再受診して適切な薬剤を処方してもらうよう指導する必要があるだろう。また、薬剤交付時に、使用期限の目安を容器に記載することも一つのアイデアである。

【具体的な説明や確認】
今回は、薬局で調合した軟膏剤をお出ししますが、ここに書きましたように2週間をめどに使用してください。症状が改善しないようでしたら、再度医師の診察を受けてください。またしばらくして症状が再発した場合も、自己判断で今回残った軟膏を使わず、新たに医師の診察を受けてください。しばらく経過した軟膏は分解して治療効果がなくなるばかりか、有害作用が出てしまう可能性もあるからです。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。