東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例20

アンテベート軟膏を大量塗布

事例内容

アンテベート軟膏(一般名:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)を毎回大量塗布し、1週間で5本使い切ってしまった。

<処方> 50歳代の女性。湿疹。処方オーダリング。病院の内科。

アンテベート軟膏0.05%  10g 1日2回 左腕全体に塗布 全5本

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者には初めてアンテベート軟膏が処方された。自宅に帰って皮膚に塗布しようとしたところ、どのくらいの量をチューブから取り、どの程度の面積に塗布すればいいか迷った。薬剤師からそのような説明を受けておらず、お薬説明書にも記載されていなかった。問い合わせるのも面倒だったので、少なすぎて治療効果が得られないとまずいからと自己判断し、多めの量を患部に塗布することにした。ところが1週間後、本剤の量が残り少なくなったため、塗布量が多すぎたのではないかと不安になり、薬剤師に連絡し、不適正使用が発覚した。

原因

本事例では、どの程度の量を患部に塗布すればよいかの情報が、医師、薬剤師のいずれからも全く提供されておらず、患者に多大な不安を与えることになった。服薬指導においては、塗布する場所と塗布する量(チューブなら押し出す長さなど)を指示することが必須である。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 過量投与による全身作用

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

副腎皮質ステロイドホルモン過量投与による全身作用

今後の対応

【今後の対応】
軟膏剤の塗り方の一つとして、患部が直径約5cmの円形範囲(体表面積を1.5m2とすると全身の0.13%)ではチューブから5mm程度絞り出して塗り、適宜加減するのがよいとされている(スキルアップのための皮膚外用剤のQ&A、南山堂、2005)。患部が片腕ならば、5cm程度の絞り出しを7本塗る。また、ステロイド外用剤の治療効果から必要量を算出した別の計算法では、5cmを3本程度塗れば十分とされている(参考事項)。ただ、これらは目安であり、病状により適宜判断して量を設定すべきであろう。

【具体的な説明や確認】
今回は、アンテベートという軟膏が処方されております。塗る場所は片腕ですので、手に1回5cm(あるいは2.5cm)程度を取って上部から下部へ順番に3回(6回)ほど塗って伸してください。ただ、これはあくまでも目安ですから、必ずしも正確である必要はありません。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。