東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例06

1日1回のオメプラールを
1日3回過量服用

事例内容

患者が、1日1回服用するよう指示されているオメプラール(一般名:オメプラゾール)を1日3回1週間服用していたことが、「薬が1週間でなくなってしまった」という患者からの訴えで明らかとなった。

<処方> 50歳代の男性。胃潰瘍など。処方オーダリング。病院の内科。

.好肇蹈イン錠 5mg 6錠 1日3回 毎食後 14日分
 エクセラーゼ配合錠 3錠 1日3回 毎食後 14日分
 マーロックス懸濁用配合顆粒 3.6g 1日3回 毎食後 14日分 ▲淵Ε璽螢鷯10mg 3錠 1日3回 毎食前 14日分 オメプラール錠20mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

診察を受けた内科医院では、上記の処方が2週間前に初めて処方された。今回は同じ処方の2回目だった。処方された薬は、1日3回飲むものと1日1回飲むものに分かれる上、毎食後、毎食前、朝食後とかなり複雑な飲み方をしなければならなかった。そのため患者は、1日1回服用のオメプラールをうっかり他の薬につられて1日3回も服用してしまった。幸いにも患者は、特に有害事象と思われる体の不調は訴えていない。

原因

処方せんには、1日3回服用の薬剤が4種類、1日1回服用の薬剤が1種類だけあり、服薬回数の多い薬剤に引きずられて、1日1回服用のオメプラールを1日3回服用してしまったと考えられる。薬剤師から患者へのより念入りな服薬指導とコンプライアンス改善のための工夫の提案などが不足していたといえる。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

過量服用により が生じ入院。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

過量服用により悪心・嘔吐、腹痛、下痢が生じ入院。

今後の対応

【今後の対応】
薬剤師は患者に対して、念入りな服薬指導を実施するとともに、飲み間違えないようにするための工夫を提案すべきである。例えば、患者の自宅で朝・昼・夕に服用する薬をコンパートメントに分かれている箱に入れておくようにすれば間違いを減らせる。また、薬剤師が調剤する際に、オメプラールを分包して「朝のみ服用」と記載してもよい。

【具体的な説明や確認】
今回処方されたお薬は、1日3回、朝昼夕に服用するものがほとんどですが、オメプラールだけは1日1回、朝食後服用となっています。間違って1日3回服用することのないように注意してください。飲み間違いを防ぐために、ご自宅でお菓子箱のような入れ物に、朝、昼、夕に服用する薬をそれぞれ分けて置いておく方法をお勧めします。またご希望があれば、オメプラールを分包して「朝のみ服用」と記入させていただきます。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。