東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例07

オメプラールの服用時期に
迷う夜勤勤務者

事例内容

日勤と夜勤を繰り返している患者が「就寝前服用」と指示されたオメプラール情(一般名:オメプラゾール、プロトンポンプ阻害剤)をいつ飲めばいいのか迷ってしまった。

<処方> 40歳代の男性。逆流性食道炎。処方オーダリング。病院の内科。

オメプラール錠20mg 1錠 1日1回 就寝前服用 14日分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は、曜日に関係なく3日間日勤と1日間夜勤を繰り返している。日勤の日は23時ごろ就寝、夜勤の日は朝7時ごろに就寝している。薬剤師からは就寝前に服用するように通り一遍の説明を受けたが、患者は自宅に帰っていろいろと疑問がわいてきた。日勤時は就寝前に飲めばよいが、夜勤時は、就寝しなくても23時ごろに服用すべきなのか。あるいは次の日の夜勤が明けて就寝する午前7時前に服用すべきか。また、その日の夜の就寝時に服用していいのだろうか。医師に確認したところ、「服用間隔を24時間に維持したいので、毎日の一般的な就寝時(23時)に服用するように」との指示を受けた。したがって、夜勤に入る日でも、23時に服薬し、夜勤明けの就寝時の7時には服用しないことになった

原因

3日間日勤と1日間夜勤を繰り返す患者の就寝時間や食事の時間はとても不規則であり、それに伴い胃酸分泌の日内変動も、通常の人に比べてかなり異なっていると考えられる。就寝前に服用するようにというだけの説明では極めて不十分である。  とはいえ、オメプラゾール20mg、ラベプラゾールナトリウム20mgあるいはランソプラゾール30mgを服用した後の胃内pH推移を測定した報告を収集し、pH5以上になる時間帯を調べた研究によれば、プロトンポンプ阻害剤服用後の胃内pHの推移は、服薬時期や食事時間、服用期間などによって変化し、個体差も大きいため、どの時間帯に服用することがよりよいか予測することは困難であるという結論が得られている。現時点では、服薬時期について一般論として議論するにはエビデンスが不十分なので、不規則な生活を送っている患者の服薬時期に関しては個々に医師の判断を仰ぐべきだろう。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

 になり が悪化、手術のため入院。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

服薬が不規則になり逆流性食道炎が悪化、手術のため入院。

今後の対応

【今後の対応】
事前に患者の日常生活などを把握し、不規則な生活を送っている場合には、服薬時期などに関して医師の処方意図を確認する必要がある。医師から得られた情報を事前に患者に対して伝えることによって、服薬に関する不安を与えないようにする。

【具体的な説明や確認】
患者さんは特に不規則な生活は送っておられませんか。そうですか、曜日に関係なく3日間日勤と1日間夜勤を繰り返していらっしゃるのですね。そうなるとお薬の服用時期が混乱しそうですが、先生は何か言っていませんでしたか。……今、先生に確認したところ、就寝するしないにかかわらず、夜の11時ごろに1日1回服用してくださいとのことです。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。