東大教授に学ぶ 実習に役立つ!ヒヤリ・ハット事例

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、
現場で実際に起きたヒヤリ・ハット事例とその対処方法を紹介します。

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事例09

マクサルトを30分間隔で追加服用

事例内容

患者は片頭痛発作時にマクサルトRPD錠(一般名:安息香酸リザトリプタン、口腔内崩壊錠)を1錠服用したが、30分たっても十分な効果が得られないため、さらに2錠目を服用した。

<処方> 20歳代の男性。片頭痛。処方オーダリング。病院の内科。

マクサルトRPD錠10mg 1回 1錠 頭痛時頓用 4回分

*実際の処方通りに記載。

具体的な過程

患者は長年、片頭痛で苦しんでいた。これまでクリアミン配合錠(一般名:エルゴタミン酒石酸塩、無水カフェイン、イソプロピルアンチピリン)を使用していたが、今回マクサルトに処方変更された。上記の事実は、再診時の薬剤師による患者インタビューで判明した。カフェルゴットを服用していたときは30分たって効かなかったら追加服用することがよくあったという。マクサルトRPD錠を追加服用する場合、前回の服用から2時間以上空ける必要があることを患者は認識していなかった。

原因

頓用剤の場合、効果が不十分なときの追加投与は患者自身の判断で行うことになるので、事前の服薬指導が極めて重要である。本事例において、患者は、これまでクリアミンを「30分以内に効果が認められない場合には、さらに1錠を追加投与する」という用法で服用していた。しかし、マクサルトRPD錠では「効果が不十分な場合には、追加投与することができるが、前回の投与から2時間以上空けること(ただし1日の総投与量は20mg以内)」とされている。マクサルトRPD錠のTmaxは1.3時間であり、服用後30分では血中濃度はいまだに上昇過程にある可能性が高い。

今回のヒヤリ・ハット事例によって引き起こされる
「最悪の事態」を考えてみましょう。

過量服用に伴う  を発症。

正解と今後の対応を見る

予想される最悪の事態

過量服用に伴う血管収縮作用で急性心筋梗塞を発症。

今後の対応

【今後の対応】
エルゴタミン系製剤からトリプタン系製剤への処方変更時には、用法用量やその使用上の注意の相違について十分な説明を行う。特にトリプタン系製剤では、効果が不十分で追加服用する際は、前回の投与から2時間以上空ける必要があることについて必ず言及する。

【具体的な説明や確認】
今回、クリアミンからマクサルトに処方変更されています。これまで服用されていたクリアミンは、一度服用してから30分以内に効果が認められない場合には、さらに1錠を追加服用していたということですが、マクサルトは、効果が不十分な場合、同じように追加服用できますが、前回の服用から2時間以上空けることが必要です。十分に注意してください。

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プロフィール

東京大学大学院客員教授(薬学系研究科 育薬学講座)
澤田 康文

医薬品をめぐるリスクマネジメント研究の第一人者である澤田康文教授が、全国から収集し、解析を加えたヒヤリ・ハット事例を紹介し、医薬品適正使用と育薬のポイントを解説します。

[書籍紹介]
ヒヤリ・ハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント
(日経 BP社)

ヒヤリハット事例の原因を分析し、どうリスクを回避すべきかを提示する“服薬リスクマネジメント”の実践書です。本連載は本書に掲載された事例を引用・改変して掲載しております。

更に多くのヒヤリ・ハット事例を NPO法人・医薬品ライフタイムマネジメントセンターで紹介しております。薬剤師になった暁には是非ご参加ください。また、自己研鑽を深めて頂く卒後研修のプログラム(育薬セミナー)も提供しています。詳細については、ホームページをご覧ください。