薬の専門家として、誇りと自覚をもって社会に羽ばたいてほしい

中村 隆典

NAKAMURA TAKANORI

姫路獨協大学 薬学部 教授

熊本大学薬学部で生薬の研究に取り組み、1995年に大学院卒業。日立造船株式会社バイオ事業部で杜仲茶に関する研究を行う。調剤薬局で薬剤師として勤務した後、2007年より現職。天然物科学研究室。博士(薬学)。現在もブラジル原産の植物のエキスのがん抑制効果について研究を進める。

学びの特色と就職状況についてお聞かせください

地域に根ざした薬剤師として活躍

本学の薬学部は、専門家としての実践的能力や高い倫理観と豊かな人間性を備えた薬剤師を育成することを目的とした6年制の学部です。将来、チーム医療の一員として活躍できる薬剤師を養成するため、薬学の基礎知識だけでなく、コミュニケーション能力を養うことにも力を注いでいます。

昨年の薬剤師国家試験合格率は71.7%で、卒業後、多くの学生が薬剤師として社会へ。就職先は、約8割が薬局で、2割が県立や国立、大手医療法人の系列の病院です。製薬メーカーのMRとして活躍する方もいます。以前に比べ、大学の所在地である播州エリア出身者が増え、近隣での勤務を希望する傾向が高くなったことから、地域に根ざした薬剤師として活躍する学生が増えています。離職率も低いので、しっかり地域医療の担い手としての役割を果たしていると感じています。

こうした、地域包括ケアの一員として、薬剤師が役割を果たすには、医師や看護師、介護士、ケアワーカーなど、他職種の職務理解も必要です。在宅医療の担い手として、自分は薬剤師としてどのようなポジションで活動するのか? そうした分業の接点についても学ぶ必要があります。本学では、実習に出る前に、地域の先生をお招きしてワークショップ形式で事前学習を実施しています。ケーススタディで課題に対する答えを自分たちで考え、それを発表。発表内容を臨床現場の先生が評価し、実際に、採用されたこともあります。こうした実践に近い学びで、力を身に付けてほしいと思っています。

今、薬剤師に求められるものは?

患者さんに選ばれる薬剤師になるために

高い薬学知識をもつことはもちろんのこと、患者さんやそのご家族に対して、“親身になって接する心”や“コミュニケーション力”が大切だと思います。

かつてない少子高齢化時代を迎えた今、薬局に来られる方のほとんどは、健常人ではありません。その立場を、身をもって理解する必要があります。ただ単に「しんどそうですね」と言葉をかけるだけでは通じません。親身になって相手の話に耳を傾け、表情はどうか、変わったところはないか、その様子を確認。そして、薬や処方内容に関してだけでなく、飲み合わせや食事などの相談にも笑顔で対応。世間話も大切なコミュニケーションです。そうやって患者さんと信頼関係を築くことで「次もあの薬剤師さんにお願いしたい」と、選ばれる存在となっていく。2016年4月からスタートした「かかりつけ薬剤師」になるためにも、多方面から患者さんの健康に寄与できる力が求められていると思います。

そのために、今、すべきことは、毎日大学に来て、しっかり授業で学ぶことはもちろんのこと、さまざまな人とのコミュニケーションが大切だと思います。コミュニケーション力は、すぐに身につくものではありませんから、私たち教員・職員も6年間を通じて、その手助けをしたいと思っています。

薬剤師としてのキャリアアップは?

生涯学び続ける姿勢が大切

薬局に就職した場合、かつての薬剤師は、調剤や監査、服薬指導、薬歴記載など、調剤業務だけに没頭すればよかったのですが、今は違います。ドラッグ併設の店舗もたくさんあります。OTC医薬品や健康食品、医薬部外品など、さまざまな商品知識も必要になります。さらに、薬局長や店長などへキャリアアップするときには、人やお金、在庫などのマネジメント力も求められます。薬局を就職先に考えている人は、ある種のビジネス感覚も身に付けておいた方がいいかもしれません。

もちろん、薬剤師としての専門性を高め、成長し続けたいという意欲も必要です。これまでになかった新しい作用機序をもつ新薬も次々生まれてきていますし、すでに上市されている薬の適応拡大もあります。私が専門としている漢方薬も西洋薬との併用で処方数が増え、そのニーズが高まっているように思います。製薬会社のMRさんが持ってきてくれる資料は必ず目を通し、新たな論文が出たというような情報をチェック。自ら調べるとともに、学会や勉強会に積極的に参加するなどして、常に自分の中の情報をアップデートしましょう。

また、インターネットの普及によって、患者さん自身がサイトで調べた情報の真偽を相談されることもあります。こうした情報にも対応できるよう、多様な視点で学ぶ意識を持ち続けることも大切だと思います。

学生のみなさんへのアドバイスとメッセージを!

多様な選択肢を知り、自らのベストを選んでほしい

薬剤師として進路を決定する前に、できるだけ多くの選択肢を知り、実際に足を運んで見てほしいと思っています。就職はまだ先と思っている1、2年生も、しかり。実務実習で約5ヶ月間、病院や薬局に行くと、帰ってきたときに大きく成長しているけれど、お世話になった実習先への就職を決めてしまっている学生もたくさん見受けられます。もちろん、それがベストの場合もありますが、一生のことなので、もっと広い視野で考えてもいいのではないかと思います。

病院や薬局、ドラッグストア、製薬メーカー、治験・臨床開発企業、公務員、大学院への進学・・・薬剤師としての活躍の場はたくさんあります。企業で研究を、そして調剤薬局で薬剤師として勤務経験がある私からすれば、それを見ないで決めてしまうのは、惜しいような気がします。調剤薬局の薬剤師希望であっても、いくつかの薬局に足を運び、見比べてみるといいと思います。社風なり給与なり、最初に「いいな」と思ったところを基準として、自分の尺度で取捨選択してみてください。そうすれば、自分に一番合う薬局と出会えると思います。そうして、一人の医療人として、地域の方々の健康に貢献してほしいと思っています。