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業界研究

医療機関・調剤薬局業界

業界の現状と展望

厳しい病院経営の実態

医療業界には、病院や診療所などの医療機関、製薬会社、医薬品卸、医療機器メーカーなどがある。
また医療事務や入院患者の給食、患者搬送、リネン・サプライなどの医療関連サービスも医療業界の仕事といえる。厚生労働省の「平成30年度 医療費の動向」によれば、2018年度に病気やけがの治療のために医療機関に支払われた医療費は、前年度から0.8%増の42.6兆円となった。診療種類別では、入院17.3兆円、入院外14.6兆円、歯科3.0兆円、調剤7.5兆円となっている。

高齢化に伴って医療へのニーズは高まっており、都市部の病院には多くの人が集まっているが、病院経営は年々厳しくなっているのが実状だ。倒産する病院も多く、休廃業や解散、身売りが増えつつある。理由の1つは全国一律の診療報酬。2020年度の改定で診療報酬は、技術料に当たる本体部分を0.55%引き上げることになったが、都市部と地方では人件費や施設にかかるコストが異なるため、収益に大きな差がある。

さらに、規模が大きな総合病院では収益にかかわらず、多くの診療科がある。民間病院であれば、診療科を閉鎖して選択と集中も可能だが、診療とともに研究も大事な大学病院などではそうはいかない事情もある。国民医療費も抑制しなければならず、医療業界は厳しい局面にある。

厳しい病院経営の実態

『オプジーボ』に端を発した薬価改定問題

小野薬品工業が開発した『オプジーボ』。肺がん、皮膚がん、腎臓がんなどの治療に使われるがん免疫治療薬で、時代の最先端をいく夢の薬として注目を浴びた。15年という長い歳月と莫大な研究開発費をかけて完成した薬で、薬価にはそうした経費が反映される。価格は1ボトル100mg当たり約73万円となった。

試算によれば、保健適用による国庫負担は1人当たり年間3,000万円程度となり、『オプジーボ』だけで年間4,500億円と巨額。次回の薬価改定まで『オプジーボ』の価格を据え置くと負担が大きすぎるとして、政府が緊急値下げを検討。2017年2月1日から50%引き下げられ、2018年の薬価改定でさらに2割以上の値下げ、さらに2019年にも1.0%の引き下げとなった。製薬会社にとっては今回のように急遽薬価が変更されるようなことがあれば日本での事業化が難しくなるとの声もある。

他方、2020年2月には、世界一高い薬とされる、ノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の国内での製造販売が了承された。1回の投与で終わるが、米国での費用は2億円以上。今後も増えるであろう高額治療薬に関する議論は注目だ。

国民医療費で大きな割合を占める薬代

調剤薬局・ドラッグストア業界では、病院で医師が処方する薬の販売を行っている。厚生労働省の「平成30年度 医療費の動向」によれば、2018年度の調剤医療費は7.5兆円、前年度から約2千億円の減少となったが、全体の医療費42.6兆円のうちに占める割合は17.6%と、ジェネリック医薬品の導入を促進しているにもかかわらず大きな比率を占めている。

一方で、登録販売者がいれば、大型スーパー、コンビニエンスストアなどでも第二類、第三類の一般用医薬品の販売が可能になり(第一類を取り扱う店舗では薬剤師が必要)、薬局市場には総合商社、医薬品卸も本格的に参入。国では、自宅で治療から生活習慣病の予防・未病改善を行うセルフメディケーションを進めていること、一般用医薬品のネット販売の解禁もあり、市場は拡大。複数社がしのぎを削ってきたが、近年は、規模の拡大と生き残りをかけた業界再編の機運が高まっている。

国民医療費で大きな割合を占める薬代

生き残りをかけて質の高いサービス提供を目指す

多くの調剤薬局は、患者ごとの薬歴管理システムを整備している。このシステムによって、例えば複数の病院にかかっている場合、それぞれで処方された薬の重複や、危険な飲み合わせを避けられるメリットがある。

地域密着型の独立系調剤薬局は、今後、こうした質の高いサービスを提供することで、生き残りを図っていくと考えられる。中には、調剤作業を機械化し待ち時間短縮を図る薬局もある。

業界関連用語

●一般用医薬品
薬には、医師に処方してもらう「医療用医薬品」と、薬局やドラッグストアなどで買える「要指導医薬品」や「一般用医薬品」があり、後者はOTC(Over The Counter)医薬品と呼ばれている。要指導医薬品は、販売に際して薬剤師が対面での指導や書面による情報提供など、慎重に販売することが求められる薬で、インターネットや郵便での販売はできない。一般用医薬品は、副作用などのリスクの程度に応じて、第一類から第三類までの3種類があり、インターネットや郵便での販売も可能。ただし、第二類と第三類の薬は、薬剤師でなくても登録販売者であれば販売できるが、第一類の薬は薬剤師でなければ販売できない。

●出生前診断
一般的に出生前診断は、妊娠中に胎児の診断を目的に実施する検査のことをいうが、新型出生前診断とは胎児の染色体遺伝子を調べる検査のこと。受診には一定の条件は必要だが、妊婦の血液中に含まれる胎児由来の遺伝子を解析することで、染色体異常や遺伝性の病気などを出産前に判断できる。

一方で、診断で陽性が認められた人の多くが人工妊娠中絶を選択しているといわれ、「命の選別」だと批判する声もある。

●レセプトオンライン化
保険医療機関・調剤薬局と審査支払機関などをレセプトコンピューター処理システムで結び、診療報酬調剤報酬の請求データ(レセプトデータ)をオンライン化すること。紙印刷が不要、レセプトの点数算定等が機械的にでき、人的労力・経費の削減が可能となる。
また診療行為や薬の使用状況、病名と行為の関係等が全国規模で分析できる。診療報酬改定の根拠となる情報が集まりやすくなり、適切な診療報酬改定が行われることも期待される。

●スイッチOTC
医師の処方箋がなければ使用できなかった医療用医薬品の中から、使用実績があり、副作用が少ないなどの要件を満たした医薬品を処方箋がなくても購入できるように、一般用医薬品へと変更したものをスイッチOTC薬という。

医師からの処方の場合も、処方箋なしで購入した場合も薬の内容・効果に違いはない。セルフメディケーション推進もあって、1.2万円を超えた部分の購入費用については所得税控除の対象となる。

どんな仕事があるの?

【医療機関業界の主な仕事】
MR
医療情報担当者。薬の販売先である病院や卸会社に薬の詳しい情報を伝える。また、販売先からの薬への要望や意見を取りまとめる。

●医療コーディネーター
病院などで患者とその家族のサポートを行う。カルテの情報や治療内容を患者に分かりやすく解説、さまざまな相談に乗り、アドバイスを行う。

●医療事務
医療機関での受付カルテ管理、さらにカルテを基に保険点数を計算し、レセプト(診察報酬明細書)を作成する。

●介護福祉士
国家資格の1つで、専門知識と技術をもって、身体上または精神上の障害で日常生活を営むうえで支障がある人に対し、入浴排せつ食事そのほかの介護を行う。

●社会福祉士
国家資格の1つで、身体上、もしくは精神上に問題を抱えていたり、環境上の理由で日常生活を送ることが困難な人やその家族の相談に応じたりして、適切なサービスの利用を紹介、諸手続きを行い、福祉施設や病院などの調整を行う。

●訪問介護員
訪問介護員(ホームヘルパー)の資格を得るには、各地方自治体が指定した、専門学校、社会福祉協議会、民間団体などの事業者が実施している「介護職員初任者研修」を修了することが必要。

なお、2012年度まで実施されていた「訪問介護員養成研修ホームヘルパー1級、2級)」および「介護職員基礎研修」修了者も「介護職員初任者研修課程」修了と同等に見なされるので、引き続き訪問介護員として働くことができる。

【調剤薬局業界の主な仕事】
薬剤師
医療機関や調剤薬局などで、処方箋に基づき薬の調合服薬指導などを行う。大学の薬学部などで6年間の課程を終え、国家試験に合格する必要がある。

●調剤事務
調剤薬局での受付会計業務薬剤師調剤補助を行う。薬歴管理や薬品在庫管理も行う。

●登録販売者
2006年の薬事法改正(2009年6月施行)で新しく設置された資格。薬局やドラッグストアで一般医薬品の95%を占める第2類および第3類医薬品を販売する際に必要となる。高校卒業以上で実務経験1年以上などの要件を満たせば受験資格がある。

※原稿作成期間は2019年12月28日から2020年2月28日です。

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