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どっちがいいの?保育士と一般就職 徹底解説

1.保育園におけるキャリアパスとは?

保育士等確保対策検討会※1が2015年に作成した資料※2によると、常勤で働く保育士のうち、約半数が経験年数7年以下の若手保育士で締められています。経験年数8~14年未満の保育士は2割未満である一方、14年以上のベテラン保育士は3割近くを占めており、保育の現場には、いわゆる中堅層が少ないという実態が浮き彫りになっています。

保育士の処遇改善の推移

保育士の処遇改善の推移

首相官邸公式サイト「待機児童対策~これからも、安心して子育てできる環境作りに取り組みます!~」より。

※ 処遇改善等加算(賃金改善要件分)は、平成25、26年度においては「保育士等処遇改善臨時特例事業」により実施
※ 各年度の月額給与改善額は、予算上の保育士の給与改善額
※ 上記の改善率は、各年度の予算における改善率を単純に足し上げたものであり、24年度と比較した実際の改善率とは異なる。

ベテランと呼ばれるようになる前に辞めてしまう人が多い原因の一つと考えられるのが、キャリアアップする機会の少なさでした。「入職してから役職に就くまで長くかかりすぎる」という問題を解決する目的もあって、2017年の「処遇改善等加算Ⅱ」制度創設に伴い新設されたのが「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という3つの役職です。まずは、保育園におけるキャリアパスがどのようなものか、全体像を押さえておきましょう。

※厚生労働省子ども家庭局が実施する検討会。「保育士確保プラン」に基づき、保育士をはじめとする保育の担い手確保に向けた対策を検討するのが目的。

※1 厚生労働省子ども家庭局が実施する検討会。「保育士確保プラン」に基づき、保育士をはじめとする保育の担い手確保に向けた対策を検討するのが目的。

※2 第1回 保育士等確保対策検討会 資料4「保育士等における現状」(平成27年11月9日)より。

保育園における一般的な役職

役職名 必要な経験年数 主な仕事内容
園長 10~25年程度 資金管理や補助金の申請、保育士の採用、設備・衛生面の管理など、園全体の経営管理を担う。関係機関とやり取りする機会も多い
主任保育士 8~20年程度 現場を統括し、保育士をまとめる。シフト管理や保育士の指導、指導計画の確認など。行事運営の指揮を執ったり、保護者対応の窓口になったりすることも
【新】副主任保育士 おおむね7年以上 主任保育士を補佐する役割で、マネジメントスキルが必須
【新】専門リーダー おむむね7年以上 4分野以上に精通し、高い専門性を発揮して職務に当たるリーダー
【新】職務分野別リーダー おおむね3年以上 特定の分野において一定の知見を有し、関連業務を担当する
クラス担任 1~5年程度 基本的に1つのクラスを担当し、指導計画に基づきながら現場を運営する

※上記内容はあくまで参考で、役職名や必要な経験年数、主な仕事内容は園によって異なります。

待機児童解消のために新規開園する事業所が増加傾向にある今、管理職やリーダーのポストも増えつつあります。特に私立保育園においては、若いころからキャリアアップを狙える可能性も高いことを知っておきましょう。

2.キャリアアップするにはどうすればいい?

私立保育園の場合、園長や主任保育士、クラス担任といった従来の役職では、特別な資格を必要としないケースがほとんど。保育士資格をベースに経験を積み重ねていくことで、チャンスが巡ってくるイメージです。園長や主任保育士については、法人によっては「管理職試験」を設け、それにパスすることが条件になることもあります。

一方、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーについては、同時に新設された「キャリアアップ研修」を受講し、知識や技能を習得することが求められます。

2017年に創設された保育士の役職

経験年数 要件 処遇改善額
副主任保育士 おおむね7年以上 職務分野別リーダーの経験があり、キャリアアップ研修(8)に加えて3分野以上の研修を修了して、副主任保育士として発令されること 4万円/月
専門リーダー おおむね7年以上 職務分野別リーダーの経験があり、4分野以上のキャリアアップ研修を修了して、専門リーダーとして発令されること 4万円/月
職務分野別リーダー おおむね3年以上 担当する職務分野の研修(キャリアアップ研修(1)~(6)のいずれか)を修了し、その分野における職務分野別リーダーとして発令されること 5,000円/月

保育の道に進んで最初に挑戦するのは、職務分野別リーダーになる場合が多いでしょう。クラス担任として経験を積みながら特定の分野での専門性を高めていき、いずれはマネジメント職にも挑戦する……というのが、今後の保育士のスタンダードなキャリアパスとなるのではないでしょうか。

3.キャリアアップ研修の種類は8つ

それでは、新たな3つの役職に就くために必須となる「キャリアアップ研修」とはどんなものなのでしょうか。8つの分野それぞれについて解説します。なお、研修時間はいずれも1分野15時間以上と規定されています。

(1)乳児保育
【ねらい】

主に0~3歳未満児の保育について理解を深め、環境構成や個々の発達に沿った保育ができ、他の保育士に助言・指導できるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 乳児保育の意義
  • 乳児保育の環境
  • 乳児への適切な関わり
  • 乳児の発達に応じた保育内容
  • 乳児保育の指導計画、記録および評価
(2)幼児教育
【ねらい】

主に3歳以上児の幼児教育に関する理解を深め、環境構成や個々の発達に沿った保育ができ、他の保育士に助言・指導できるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 幼児教育の意義
  • 幼児教育の環境
  • 幼児の発達に応じた保育内容
  • 幼児教育の指導計画、記録および評価
  • 小学校との接続
(3)障害児保育
【ねらい】

障害児保育に関する理解を深め、適切な障害児保育を計画し、個々の子どもの発達の状態に応じた障害児保育を行う力を養い、他の保育士等に助言・指導ができるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 障害の理解
  • 障害児保育の環境
  • 障害児の発達の援助
  • 家庭および関係機関との連携
  • 障害児保育の指導計画、記録および評価
(4)食育・アレルギー
【ねらい】

食育やアレルギーに関する理解を深め、適切に食育計画の作成と活用ができる力、適切にアレルギー対応できる力を養い、他の保育士等に助言・指導ができるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 栄養に関する基礎知識
  • 食育計画の作成と活用
  • アレルギー疾患の理解
  • 保育所における食事の提供ガイドライン
  • 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
(5)保健衛生・安全対策
【ねらい】

保健衛生や安全対策に関する理解を深め、適切に保健計画の作成と活用ができる力、適切な安全対策を講じることができる力を養い、他の保育士等に助言および指導ができるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 保健計画の作成と活用
  • 事故防止および健康安全管理
  • 保育所における感染症対策ガイドライン
  • 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
  • 教育・保育施設等における事故防止および事故発生時の対応のためのガイドライン
(6)保護者支援・子育て支援
【ねらい】

保護者支援・子育て支援に関する理解を深め、適切な支援を行うことができる力を養い、他の保育士等に助言・指導ができるような実践的な能力を身に付ける

【内容】
  • 保護者支援・子育て支援の意義
  • 保護者に対する相談援助
  • 地域における子育て支援
  • 虐待予防
  • 関係機関との連携、地域資源の活用
(7)保育実践
【ねらい】

子どもに対する理解を深め、保育者が主体的に様々な遊びと環境を通じた保育の展開を行うために必要な能力を身に付ける

【内容】
  • 保育における環境構成
  • 子どもとの関わり方
  • 身体を使った遊び
  • 言葉・音楽を使った遊び
  • 物を使った遊び
(8)マネジメント
【ねらい】

主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う立場に求められる役割と知識を理解し、自園の円滑な運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント・リーダーシップの能力を身に付ける

【内容】
  • マネジメントの理解
  • リーダーシップ
  • 組織目標の設定
  • 人材育成
  • 働きやすい環境づくり

(1)~(6)は、いずれも保育分野における重要なテーマです。「他の保育士等に助言および指導ができるような実践的な能力を身に付ける」という共通した内容からも、職場でリーダーシップを発揮することが求められていると分かります。自身の理想とする保育士像を実現するためにも、将来的にどの専門分野に挑戦するか、今のうちから意識しておくといいでしょう。

一方、(7)と(8)は少し毛色の違う内容です。「保育実践研修」は、現場での実習経験が少ない保育士試験合格者や、ブランクの長い潜在保育士などが主な対象。「マネジメント研修」は、すでに各分野でリーダー的な役割を果たしたことがあり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割が期待される保育士が対象です。

4.研修を受けるならココに注意!

注目が集まるキャリアアップ研修ですが、受講を考える際には注意したいポイントがいくつかあります。

ポイント1:事業所によって受講可能な人数に上限がある

研修の参加者を決めて申し込むのは、基本的に勤務先の事業所です。園児数などにより申し込み可能な枠数が異なり、受講できる保育士の数が限定されることも。希望すれば必ず受講できるとは限らないのです。

ポイント2:処遇改善等加IIは全額支給されるとは限らない

研修を受講しても、その他の要件が満たされなければ、そもそも役職に就くことができません。また、処遇改善等加算IIによる加算額は、事業所の判断で要件を満たす他の職員への配分が可能なケースもあるため、加算額がそのまま給料に反映されないこともあります。

ポイント3:研修によっては費用負担の可能性もある

都道府県が実施する研修は無料で、テキスト代など実費のみ負担であることが多いですが、そうでない場合は費用が発生することも。「特定の条件を満たせば受講料免除」というケースもあるため、事前に確認が必要です。

ポイント4:自治体が指定した会場で受けなければならない

キャリアアップ研修の受講は、自治体が指定した会場・施設で受けなければなりません。移動の手間がかかることは念頭に入れておきましょう。

新たな制度の創設で、多くの保育士さんにとって将来の展望が描きやすくなったといえます。キャリアアップと給料アップが同時にかなう処遇改善等加算Ⅱの仕組みを活用して、あなたも自分らしく満足度の高い保育士ライフを楽しみませんか?

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