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自動車・輸送用機器業界

業界の現状と展望

世界に冠たる自動車産業大国

世界に冠たる自動車産業大国

自動車業界は、日本が世界に誇る巨大産業だ。国内には世界販売台数において首位をにらむメーカーをはじめ、複数の完成車メーカーがある。完成車メーカーは、部品・素材供給を行う数え切れないほどの下請け会社系列会社を抱え、大きな雇用機会を作り出している。同時に販売会社などの流通や金融に関連する産業にもかかわっており、自動車業界は、生産・販売・整備・輸送など広範な関連産業を持つ総合産業といえる。

2020年8月に公表された、経済産業省の工業統計調査「2019年確報 産業別統計表」によれば、2019年の製造業に従事する従業者数は777万8,124人、そのうち輸送用機械器具製造業に従事する者は全体の14.1%と、食料品製造業の14.7%に次いで多い。また、2019年の製造品出荷額合計は331兆8,094億円、そのうち輸送用機械器具製造業は、全体の21.1%で最多を占めており、自動車を中心とする輸送用機械器具製造業は日本経済を支える重要な基幹産業といえる。

そんな自動車産業も、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界各地の自動車工場が休止に追い込まれるなど、大きな打撃を受けた。しかし、その後は徐々に操業を再開し生産は回復しつつある。2020年度の生産台数は減少するが、21年度内に従来の販売台数回復を見込む声もある。ただし、2021年に入って、自動車製造に必要な半導体が不足する事態に陥った。デジタル化の進行にともなう旺盛な半導体需要が原因で、各社は対応に追われている。長期化すれば業績への影響も懸念される。

加速するEVシフト。100年に一度の大改革による衝撃!

近年は地球温暖化の原因とされる温室効果ガス削減に各国が力を入れている。中でも、積極的にEVシフトに取組んでいるのがEUと中国だ。「欧州グリーンディール」政策の中で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとすることをうたっており、自動車のCO2排出基準を厳格化する方針を表明している。中国も、従来型ガソリン車の製造・販売を2035年までにゼロにする方針を発表。2035年までに電気自動車(EV)燃料電池車(FCV)などの販売比率を50%に高め、残りの50%もエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)などにするとしている。また、アメリカもカリフォルニア州のように2035年までに新車販売をすべて、CO2を排出しない車にすると表明している州もあり、バイデン政権がこうした動きを加速させる可能性も否定できない。

国内メーカーでも、以前からEVに力を入れていた日産に加えて、トヨタは法人および自治体向け限定販売ながら2人乗りの「C+pod」を、ホンダは「Honda e」を、マツダは「MX-30」の販売を開始するなど、EVシフトの動きがみられる。
EVシフトは、裾野の広い自動車産業全体に大きな影響があるため、産業構造にも変化の波が押し寄せている。とくに衝撃を受けるのが自動車部品メーカー。自動車全体で数万個、エンジンだけでも数千個の部品が使われているが、EVシフトによって根幹部品であったエンジンがモーターに置き換わるだけでなく、自動車の構造も大きく変わる。EVでの部品点数は従来の半分程度ともいわれており、大手中小に限らず多くの自動車部品メーカーが仕事を失う可能性がある。
一方でEVシフトにより新たな市場が立ち上がることで、これまで自動車メーカーとつながりのなかった企業にとっては新しいビジネスチャンスが到来している。大きな雇用を抱えて日本を支えてきた自動車関連産業は、急速な変化に対応するスピードと柔軟性がますます求められる。

モビリティサービスへの変革でGoogleやAppleがライバルに

これまでの自動車会社は、所有することに喜びを感じる魅力あふれる車づくりにこだわってきた。しかし、自動運転技術の進化もあり、従来の自動車の概念を超えて、すべての人が自由に手軽に移動できるモビリティサービスに必要なプラットフォームを提供していくことが自動車業界に求められている。各社は、さまざまな国や地域で自動運転の実証実験を行い、研究開発費の多くをこの分野に投じている。すでに、自動車業界のライバルは同業だけではなくなっており、GoogleやAmazon、AppleなどのアメリカIT勢や、AutoXや百度(Baidu)いった自動運転車開発にも力を入れている中国IT勢が自動車業界に加わっている。

ライバル国との競争激化が避けられない造船業界

高度な技術力に定評があり、かつては世界トップクラスのシェアを誇った日本の造船重機メーカーだが、急速な円高や鋼材価格の高騰、ライバル国との激しい受注獲得競争もあり、現在は中国に大きく離された2位にある。
一般社団法人日本造船工業会が発表した2020年9月の「造船関係資料」にある「世界の新造船受注量の推移」によると、2019年の新造船の受注は世界合計で前年並みの1,600隻。国別の隻数は中国が421隻でトップ、次いで日本(348隻)、韓国(215隻)となった。他方、総トンでは韓国が1,737万総トンで39.5%を占め、隻数でトップの中国(1,474万総トン)や日本(782万総トン)を上回る結果となった。韓国では国内1位の現代重工業と2位の大宇造船海洋が合併、中国でも国内1位と2位の中国船舶工業と中国船舶重工が経営統合した新会社である中国船舶集団が設立されている。

一方、国内でも、業界1位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッドが共同出資で日本シップヤードを設立するなど再編の動きが加速している。スケールメリットを活かしたライバル国との受注競争はますます激しくなりそうだ。また、人材確保の面からも業界を取り巻く環境は厳しく、コスト削減と建造時間短縮のため自動化システムを導入している企業もある。

そうした中での、新型コロナウイルス感染症拡大。造船市場自体は貿易の拡大もあり世界的に拡大傾向にあったが、熾烈な受注競争の最中に貿易縮小に直面することとなった。造船業界は受注から納品までの工期が長いため、将来の売上となる手持工事量が一般的に2年分以上は必要と言われている。しかし、日本造船工業会の資料によれば、2020年8月末現在で1.05年分と厳しい状況となっている。造船業界は、地域の経済や雇用を支えるだけでなく物流や安全保障の面でも重要な産業。事業再編や生産性向上などによる競争力基盤の整備が求められている。

評価が高い日本の技術。小型旅客機は無事にテイクオフするもコロナの影響も

評価が高い日本の技術。小型旅客機は無事にテイクオフするもコロナの影響も

航空機業界は、数社の機体メーカーと、部品・材料メーカー、こうした材料を取り扱う商社など、すべての企業を合計すると千数百社から構成されている。
巨額な資本を必要とする機体開発の分野では、リスクを抑えるため、海外や他メーカーとの共同開発が主流で、日本の企業も参加している。 日本の技術が特に高く評価されているのは、素材技術構造設計などで、世界でもトップレベルにある。ボーイング787機は機体構造の35%を日本企業が受け持ったため、「Made with Japan」とも呼ばれている。
日本企業による中小型旅客機の自社開発もあり、ホンダジェットは、2018年12月に日本での引き渡しを開始。セールスも好調だ。ただ新型コロナウイルス感染症拡大による航空機需要の大幅な低迷もあり、開発計画を見直す企業も。今後の流れに注視したい。

宇宙産業は内需のマイナスを輸出がカバー

日本航空宇宙工業会によれば、国内の2018年度の宇宙機器関連企業の売上高は3,532億円となった。2019年度の売上高予測値は3,431億円と減少を見込んでいる。世界的には、商業宇宙市場の衛星産業が堅調に推移すると見られているが、国産ロケットの打ち上げ実績が2017年度から減少傾向にあり、内需がマイナスとなったことが影響している。一方で、輸出はプラスとなった。
日本も、人工衛星ロケットを独自に製造、運用できる能力を持つが、米国を中心に、欧州、ロシア、中国との競争が激化している。そんな中、日本の探査機「はやぶさ2」は、世界で初めて小惑星「リュウグウ」の岩石などのサンプル採取に成功。日本の宇宙技術の高さを証明した。また、2021年には、これまでの「H-IIAロケット」の後継機で、柔軟性や信頼性を向上させ、低価格を実現した新型の「H3ロケット」の打ち上げも予定されている。

業界関連⽤語

CASE

Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング・サービス)、Electric(電動化)の頭文字を取った造語。具体的な取り組み方は会社によってさまざまだが、自動車業界各社に拡がる基本戦略となるキーワードとして認知されている。自動車は今後、コンセプトやデザイン、機能などが大きく異なる、シェアする自動車と所有する自動車に二極化されると言われており、自動車業界のあり方が大きく変わる可能性が指摘されている。

コネクテッドカー

インターネットと常時接続機能を有した自動車のこと。エンジンやブレーキなど、自動車のすべてのデータがインターネット経由で外部と接続できるため、渋滞や工事の情報、店舗の情報などさまざまな情報をドライバーに提供できる。 また、事故発生時はドライバーの代わりに自動的に警察や消防などに緊急通報を行うこともでき、盗難時に車両の位置を追跡したり、遠隔操作でエンジンを始動できなくしたりということもできる。

MaaS

Mobility as a Serviceの略で、A地点からB地点に移動する際に、公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどさまざまな交通手段を活用して最適な行き方を提案してくれるサービスのこと。自動運転車の進化に伴って、将来的には希望した時間になれば玄関先に自動車が到着し、希望の場所まで自動的に運転してくれるというサービスも可能になる。

イプシロンロケット

高性能と低コストの両方を目指し、JAXAが開発した新しい個体燃料ロケット。「モバイル管制」と呼ばれる革新的な打ち上げシステムを導入。ロケットが自身に知能があるかのように自ら点検する仕組みを持っており、特定の場所にしばられることなく、世界中のどこからでもネットワークにパソコンをつなぎさえすれば、ロケットのコントロールができるようになった。小型の人工衛星を小回りよく高頻度で打ち上げることが期待されている。

どんな仕事があるの︖

自動車業界の主な仕事

・営業
自動車販売店(ディーラー)への営業活動を行う。マーケティングを基に、販売店をサポートする。

・車両開発
新車両の設計や開発などを行う。部品ごとに専門特化した技術が求められる。

・デザイナー
自動車のインテリアやエクステリア、色、ファブリック類などをデザインする。

・商品企画
マーケティングを基にトレンドを予測し、商品戦略や新型車の企画立案を行う。

その他輸送用機器業界の主な仕事

・研究開発
先端技術や、他部署から挙げられる市場動向調査を研究し、製品の改良や新製品の開発を行う。

・設計
新技術を導入し、コスト削減、機能強化、信頼性の向上などを図り、製品の設計を行う。

・資源調達
原材料・部品を最も有利な条件で購入する。材料費は製造コストに大きく影響するため、利益に直結する仕事。

・営業
製品の受注から納入までを担当。顧客からの受注を受け、顧客と工場の間に立ち、さまざまな折衝や調整を行う。

※原稿作成期間は2020年12⽉25⽇〜2021年2⽉28⽇です。

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