面接の実際
面接は段階や目的によっていくつか種類があり、理系の場合、グループワーク(GW)/グループディスカッション(GD)、個人面接、集団面接、技術面接、社長/役員面接などがあります。全部が順番通り行われるのではなく、大抵、この中のいずれかが組み合わされます。
自己PRと志望動機を柱として答える面接の例
国立大機械工学科3年 総合電機メーカー・生産職へのES情報
自己PR
私は研究で鍛えた粘り強さに自信があります。実験がうまく行かないときは研究室に泊まり込みで作業することもありますが、必ず「原因」があるからこその「結果」だと考え、それを追求しています。単調なデータの中に不規則点や異常値を発見すると、宝を見つけたような喜びがあります。地味な性格が研究活動では成果に生かせていると実感しています。
志望動機
低環境負荷なデバイスの勉強をしているので、(その会社の)低消費電力型SiCパワーデバイスがすばらしいと思い志望しました。貴社が産業インフラなどの分野で広くインバーター技術で実績をお持ちなので、私もいつか自分の製品を世に出し、市場をリードしたいと思っています。
- 入社後にやりたい仕事は何ですか?
- 製品開発の仕事に携わりたいと思います。デバイスの研究で、省エネルギーをテーマにしていました。
- 5年後(10年後)のキャリアプランは何ですか?
- いつか自分の製品を世に出すことが夢ですので、自分で責任もって製品作りに携われるよう、まずは生産現場に行きたいと思っています。
その上で30歳くらいには研究や開発などの職務に携われるようになれればと思っています。
- 自分を物にたとえると何ですか?
- 省電デバイスです。うまい表現が浮かびませんが、日夜研究しているので、いつの間にか自分自身がデバイスであるかのように感じることがあります。あるいはまるで友達のように感じることもあります。研究に没頭し過ぎて、ちょっと疲れているせいかも知れません。(笑)
- 自分を動物にたとえると何ですか?
- モグラでしょうか。さほど目が利くとも思えないどんくさい自分ですが、どちらかというと鼻が利くタイプだと自分では思っていて、実験していても、「あれ? ここ何かおかしいな」と感じることがあります。よくは知らないですがモグラは臭いで方向も分かるそうなので。
どれもがベストアンサーという例ではなく、素材として自己PRと志望動機から答えを組み立てていることを理解してもらえればと思います。
面接の質問に対して、一つひとつ新たな情報など探さずとも、「柱」がしっかりしていれば、普通に的外れではないコミュニケーションを取っていけるものです。
コミュニケーションに自信がなくてもできる対策
・ES・面接の基本である「自己PR」と「志望動機」をしっかり作成する。
・「まず結論から」。決してプレゼン上手な人のような、ひねった回答をしない(しゃべりに自信のない人ほど前置きが長く、内容が分かりにくい。)
・口べた話べたな人は、とくに「話すこと」より「聞くこと」を重視し、面接官の質問をちゃんと聞くこと(話すことに必死で質問をちゃんと聞いていない人が非常に多い)。
面接とESの関係
選考で成否を分けるのはESと面接です。適性検査なども課されることが多いと思いますが、採用されるのはESと面接の両方を通過した人だけです。ある程度勉強して点数を上げることができる適性検査は理系学生が比較的得意とするジャンルです。しかしあくまで適性検査は採用の補助であり、中心ではありません。就活ではESと面接が非常に重要だということを忘れないで下さい。
ESも面接も、さまざまな質問に答えるという点でスタイルは似ています。しかし、「回答」を文字情報で表現するのがESで、話し言葉でコミュニケーションするのが面接という違いがあります。両社は表現方法が違うのだと考えるといいでしょう。
自分が欲しいもの、やりたいこと、好きな研究、好きな仕事を訴える以上に、自分が会社に対して貢献できることが何なのかを伝えてください。単に「貴社のお役に立ちたい」「経営理念に共感し」というような表面的な表現ではなく、理系としての能力や視点、忍耐力や観察力など、「相手」の目線を忘れないでください。
以下のポイントを事前に整理して、いつでも説明(ESなら文字にして、面接なら口頭で)できるようにしておくと良いでしょう。
ポイント1 「専門分野の説明」
学部学科、研究科・専攻、ゼミ・研究室で行っている専門の勉強や研究については理系就職の最も基本となるアピールポイントであり、きちんとした説明ができるようにしておく必要があります。ESや面接で聞かれる基本事項でもあります。
ポイント2 「専門の応用・実用」
ポイント1の専門性を、同じ専門分野の大学教員や研究員に説明する場合であれば、専門用語や知識の有無を気にする必要はありませんが、企業であればたとえ専門分野の会社であっても、社員全員が研究員ではありません。人事部門や営業部門など、必ずしも専門的知識を持たない方はたくさんいます。
コミュニケーションのポイントは、相手が専門家でなくとも自分の価値を評価できるよう、専門的な能力や知識を応用すると何ができるかといった、分かりやすい表現をすることです。実現の可能性の高さなどには関係なく、わずかでも応用・実用・転用などの可能性があるのであれば、具体例を用いて、知識のない人にも自分の専門性の有用性を分かりやすく伝えられるようにしっかり準備しましょう。
ESに書いたことと面接で聞かれることは同じだったり、表現は違っても似た主旨だったりすることが多く、回答も同じになるのは普通です。ただしESの記憶力を試しているのではありませんから、ESの記述そのままを暗唱する必要は一切ありません。
ESも面接も、採用選考の2大ポイント「自己PR」「志望動機」が基本である以上、暗記していなくとも似たような表現をするのは当然ですので、ESと同じかどうかはあまり気にする必要がありません。ただし、ESも面接も、「模範解答」をする試験ではありません。企業が望む、もっともらしい答えをインターネットで見つけ、キレイな言葉を並べたからといって、採用に結びつくわけではありません。就活とは「仕事をしたい」学生と、「働いてもらいたい」企業の、需要と供給のマッチングの場です。
ウソや「盛り」
「ウソのエピソードで面接も通った」という武勇伝も聞かれますが、そのエピソードだけを面接で語るわけではないので、本当にそれが選考を通った理由であったかは確かめようがありません。プロの採用担当を相手にウソをつき通せるほどのコミュニケーション技術が本当にあるのなら、ウソでも盛りでも自己責任で行えばよいでしょう。しかしそのような技術がない人間がやれば、失敗する恐れが高く、そもそも無意味な行為です。
面接対策はおもしろエピソード大会ではありません。基本に忠実なことが結局、一番能率が良い方法です。面接のように自分だけではコントロールできない双方向コミュニケーションでは、安全な進め方なのです。