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銀行・証券業界
業界の現状と展望

銀行業界の代表的な3業務とは
銀行の役割は大きく3つに分けられる。
1つ目は「お金を預かる」。預金という形で企業や個人からお金を預かり、それを運用することで利息をつけて提供する。
2つ目は「お金を貸し出す」。預かったお金を個人や企業、国・地方公共団体に貸し出すことで、利息を得る。
3つ目は「お金を送る・決済する」。振り込み、代金取立、手形や小切手による支払いの決済、公共料金・クレジットカード利用料金などの口座振替を行うことだ。
グローバル金融でも力を発揮するメガバンク
かつては、都銀13行といわれる時代もあったが、1990年に入って、徐々に都銀同士の統合・合併が進行。規制緩和もあり、銀行・証券など、さまざまなサービスを行う総合金融グループが誕生している。そうした状況で登場した3大メガバンクグループは、世界の金融機関の信用力ランキングでも上位に位置し、グローバル金融の中でも大きな存在となっている。
一方、銀行業と信託業務(第三者に財産権を移転し、財産の運営、管理、処分などを行う)を行うのが信託銀行。個人富裕層の遺言信託、資産運用から、企業資産の管理運用まで幅広い業務がある。なお信託業務は、認可を受ければ銀行でも兼務可能なため、「信託銀行」と名乗っていなくても信託業務を行っている銀行もある。
さらに、営業エリアを限定し、地域経済に密着したきめ細かいサービスを行う金融機関として、地方銀行・第二地方銀行の存在がある。地元のアドバイザーとしての役割も期待されている。
なお、地方銀行は全国地方銀行協会に加盟する銀行、第二地方銀行は相互銀行から普通銀行に転換したものがほとんどで、第二地方銀行協会に加盟している銀行のこと。
収益環境が厳しさを増す中、生き残りをかけた地方銀行や第二地方銀行の再編や提携が進んでいる。合併により金融グループ化し、より広いエリアで営業基盤を固めたり、取引先企業の海外進出支援のため、海外事業を強化している銀行もある。第4のメガバンクを目指して、積極的に地方銀行との提携を加速するSBIホールディングスを筆頭に、証券会社や大手家電量販店といった異業種と手を組む事例もある。
サービスと利便性の良さで人気のネット銀行
新規に銀行業に参入が可能となったのは2000年の規制緩和後。ネット専業銀行、流通系銀行、証券グループによるネット銀行など、多様な母体を持つ銀行が誕生した。
預金金利、利用できるATM数や手数料、振込手数料、資産運用管理口座などで各行がさまざまな特徴を打ち出しており、利便性の高さからも利用者は増加している。
低金利の長期化で収益確保が難しい銀行だが、コロナ禍で貸し出しは増加
日本銀行のマイナス金利政策もあり、低金利は長期化。貸出など資金の運用に苦慮しているのが実情で、資金運用は長期的には厳しい環境が続きそうだ。
さらに、フィンテックの普及や、AI技術の進歩、デジタルマネーの導入なども現実のものとなっている。これまで人の手で行われてきた、窓口やコールセンター、与信や融資に関する業務、振り込み確認などの業務をAIが行う時代に変化しつつあり、大手銀行を中心に大幅な人員削減計画を発表、銀行業界は将来に向けて大きな変革の時代を迎えている。
そのため、アジアを中心とした海外戦略にも積極的に取り組み収益の確保を目指している。さらに、異業種の企業との提携も盛んで、デジタル口座サービスの提供や、広告事業の新展開、新銀行設立など、新たなビジネスの創出にも取り組んでいる。コロナ禍で落ち込んだ経済は徐々に回復。投資先の貸し倒れに備えた与信関連費用の圧縮や株価上昇に伴う保有株の売却もあり、2022年3月期の3メガバンクの最終利益は総額で2兆円を超える見込みだ。さらに、アメリカの早期利上げによる金利上昇は、銀行業界にとっては運用利ザヤ拡大につながる追い風と見られている。
また、従来から厳しい経営環境にあった地方銀行も、与信関連費用の圧縮や政府保証を裏t付けとした融資が拡大したこともあり、収益は改善した。ただし、政府側では、独禁法特例法や改正金融機能強化法の施行など、改正や再編への流れを後押しする施策を打ち出しており、再編への流れはさらに加速しそうだ。

証券業界の代表的な4業務とは
証券会社が行う仕事は大きく分けて4つある。
1つ目は「委託(ブローカー)業務」。一般の投資家から株式や債権の売買注文を受けて流通市場に取り次ぐ。取り次ぐ際は、投資家から委託手数料を受け取る。
2つ目は「自己売買(ディーラー)業務」。一般投資家と同じように、証券会社が自社の資金で株式や債権を売買する。
3つ目は「引き受けおよび売り出し(アンダーライター)業務」。新規に発行された株式や債券を、一般投資家に売り出すことを目的に買い取り、売れ残った場合は証券会社がすべて引き取る。
4つ目は「募集・売り出しの取り扱い(セリング)業務」。新たに発行される証券やすでに発行されている証券を、多くの投資家に買ってもらうため、勧誘する。アンダーライター業務と違い、売れ残った証券を引き取る必要はない。
さらに、こうした業務に付随して、投資についての助言を行ったり、M&Aのアドバイザリー業務も担ったりしている。
証券業界への新型コロナウイルス感染症の拡大の影響
かつて4大証券といわれた時代は、山一證券の破たんで終えん。さらに、金融ビッグバンの柱といわれた1999年の株式売買手数料自由化で業界の姿は激変した。現在は独立系の2社(野村證券・大和証券)とメガバンク系の3社(SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)が5大証券会社と呼ばれている。
さらに、伝統的な対面取引が多い中堅証券や、リテール(個人向けの事業分野のこと。法人向けの事業分野はホールセールと呼ばれる)中心で個人投資家に人気が高いネット証券が証券業界を構成している。
証券会社の主要な収益は、株式や債券の売買に伴う取次手数料。株式市場が活況になるほど売買手数料が得られるし、資金需要が旺盛になるほど社債手数料も増加する。そのため、収益は景気の動向に大きく左右される傾向にある。
中小の証券会社の中には、大手証券会社やメガバンクの傘下に入る証券会社もあれば、証券業以外の新たな収益源の獲得を模索する動きも見える。
近年、顧客の高齢化による売買頻度の低下や、株式売買手数料競争が構造的な課題と言われる証券業界。コロナ禍で、世界景気が一気に冷え込み、各国の株式市場は一時的に暴落、投資家心理にも大きく影響した。しかし、各国は金融緩和や財政出動により潤沢な資金を市場に提供、早期に中国が新型コロナウイルス感染症の拡大を抑え込んだこともあり、長期にわたり資金が提供されると見た投資家が株式市場に復活した。さらにワクチン開発の進展も見られ、株式市場は上昇。NYダウやナスダックは史上最高値を更新し、日経平均株価もバブル崩壊後の高値を更新した。
証券会社にとっては、店舗での対面販売や個人営業は厳しかったものの、オンラインツールを利用した営業活動体制を整えたことで投資信託販売は好調に推移し、外出自粛によって個人投資家が積極的に売買したこともあり、手数料収入も増大した。
証券市場が活況な状況下で、売買手数料に頼る収益構造からの変革を進め、継続的かつ安定的な収益を確保できる体制作りを進められるかが各社に求められている。
業界関連⽤語
HFT
High Frequency Tradingの略で、超高速取引や高頻度取引、アルゴリズム取引などとも呼ばれている。明確な定義はないが、証券取引所のシステムと同じ場所にサーバーを設置するコロケーションサービスを利用。最適化された通信システムで取引に要する執行時間を短くし、高性能なコンピューターを使って独自のアルゴリズムを実行、市況を自動的に判断しながらミリ秒単位で、高速・高頻度の自動売買を繰り返す取引のことをいう。
イールドカーブ
縦軸を金利、横軸を債券の残存期間として、各期間の金利をつなげた曲線のこと。金利には長期と短期があり、通常は残存期間が長いほど金利が高いので、曲線の傾きが右上がりになる。この傾きが急になる(長短の金利差が大きくなる)ことがスティープ化、逆に緩やかになることをフラット化という。日本銀行では、長期金利がおおむねゼロ%程度で推移するよう、イールドカーブ・コントロール政策を行っている。また、長短金利が逆転する右下がりの曲線が逆イールドで、景気後退の予兆とされている。
GPIF
年金積立金管理運用独立行政法人のことで、Government Pension Investment Fundの略。厚生労働大臣から寄託を受け、年金積立金の管理・運用を行っている。年金制度運営の安定に貢献することが使命で、長期的に維持すべき資産構成割合(ポートフォリオ)を定め、安全かつ効率的な運用に努めている。2021年12月末時点の運用資産額は200兆8,295億円と巨額で、世界最大規模の機関投資家として知られている。市場運用開始以降の運用実績は年率で+3.79%、累積収益額は+107兆6,319億円。
ESG投資
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字。これまでは、財務諸表の情報を基にした判断が投資先選びの基準となってきたが、ESGに関する要素を考慮して投資を行うのが特徴。地球温暖化対策や女性従業員の活躍具合などが注目されている。投資額の大きい機関投資家の間でESG投資に対する関心が高まっており、すべての資産でESGを考慮した投資が意識されている。
つみたてNISA
2018年から始まった制度で、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度。毎年40万円までを上限に、一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税対象となる。最長20年間の非課税期間があり、最大で800万円の非課税投資枠がある。株価の上昇やコロナ禍で投資に関心を持つ人が増えたこともあり、口座数が急増。中でも、20代・30代が長期的な資金運用手段として活用する動きが強まっている。
なお、これまでの対象商品が投資信託だけだった一般NISAは、2024年からいわゆる2階建てとなり、投資信託の1階と国内外の株式を含む自由度の高い投資ができる2階とに分かれ、それぞれで運用ができるようになる。
SPAC
Special Purpose Acquisition
Companyの略で、日本では特別買収目的会社と呼ばれている。近年、SPACの仕組みをつかったIPO(新規株式公開)が増加している。スポンサーと呼ばれる投資家が買収目的のためのSPACを設立し、まずSPACが先に上場(IPO)。一般投資家から資金を集め、ターゲットとなる未上場の企業を買収し合併。合併後は、買収した企業の社名で事業を継続するというスキームだ。
配車サービスで有名な、シンガポールのグラブ・ホールディングスや、不動産をオンラインで販売する独自のビジネスモデルを構築したオープンドア・テクノロジーズ、宇宙旅行で有名なバージンギャラクティックなど、著名な企業も多い。SPACが認可されている国は多いが、メリットだけでなくデメリットも多く、課題を指摘する声もある。日本では研究会を設置、検討議論段階にある。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)
明確な定義は無いが、デジタル通貨とは、一般的に「デジタルデータ化された通貨として利用可能なもの」と考えられている。現金以外の電子マネーや、ビットコインなどの仮想通貨もデジタル通貨に含まれる。中央銀行デジタル通貨(CBDC=Central Bank Digital Currency)もデジタル通貨の1つで、それぞれの国の中央銀行が発行する。電子マネーなどのようにデジタルデータとして存在し、現金や硬貨のように使うことができる。通貨発行コストの削減、脱税やマネーロンダリングの防止、決済や支払いがしやすくなるなどのメリットもあるが、偽造やクラッキングといったシステム上のハードルが高いなどの課題もあり、将来的な導入に向けて、各国が研究や調査、開発、実証実験を進めている。
どんな仕事があるの︖
銀行業界の主な仕事
・融資
融資先が、自行の融資条件にかなっているかなどの審査を行う。審査のための書類から融資の資格をクリアしているかを正しく判断するために、情報収集能力が求められる。
・営業
銀行の営業は、個人を対象とした小口の顧客への取引を行う「リテール営業」と、中小大企業、政府、地方自治体などを対象とした「法人営業」がある。法人営業には、高度な金融知識や法人顧客に対する提案力が求められる。
・ディーラー
政府系金融機関、金融グループ、メガバンクなどでは海外との仕事があり、外国為替取引が不可欠。その為替業務を行うのがディーラーである。
証券業界の主な仕事
・営業
融資先が、自行の融資条件にかなっているかなどの審査を行う。審査のための書類から融資の資格をクリアしているかを正しく判断するために、情報収集能力が求められる。
・SMAコンサルタント
株や証券などを個別に販売するのではなく、顧客から一定額以上の資金を預かり、運用アドバイスから売買注文までを行う。
・ファンドマネージャー
投資家から集めた資金を有利に運用する専門家。運用先は株や債権の売買で、投資して得た利益は投資家に分配される。
・システム開発
証券業務向けのアプリケーションを開発する。
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※原稿作成期間は2021年12⽉23⽇〜2022年2⽉28⽇です。