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電子・電気・OA機器業界

業界の現状と展望

コロナ禍でも比較的堅調だった電子・電気機器業界

電子・電気機器業界では、生活に必要な家電や電気用品をさらに便利、快適にするための研究・開発が日々重ねられ、次世代向けの商品が、消費者や企業向けに企画、販売されている。

一般社団法人電子情報技術産業協会の「2021年民生用電子機器国内出荷統計」によれば、2021年の民生用電子機器(映像機器・オーディオ関連機器・カーAVC機器)の国内出荷実績金額は1兆3,126億円で、前年比1.1%減となった。
1月から6月までの年前半は、在宅勤務や巣籠もり需要もあり、前年同月を上回った。中でも5月は同45.1%増と大幅増となった。一方、5月から12月までの年後半は前年に大きく伸びた反動や需要の一巡もあり、前年同月を20%以上下回る月もあった。
また、一般社団法人日本電機工業会によれば、2021年の民生用電気機器(冷蔵庫やエアコン、洗濯機などのいわゆる白物家電)の国内出荷金額は2兆5,215億円で、前年比0.6%減と6年ぶりのマイナスとなった。こちらも、1月から5月までの年前半は前年同月を上回っていたが、6月以降は前年の需要増加の反動と夏の天候不順の影響もあり、12月まで前年同月を下回る結果となった。ただし、年間出荷額自体は過去10年平均(2兆 3,303 億円)を上回る高い水準を維持している。

電子・電気機器業界では、現在蓄電池として多種多様な製品に使われているリチウムイオン電池に続く、ポストリチウムイオン電池の研究開発が熾烈となっている。自動車業界が実用化を加速している全固体電池、正極に硫黄を使用するリチウム硫黄電池、フッ化物電池、(金属)空気電池など、次世代電池の候補は多く、巨大な市場規模をめぐって大手からベンチャーまで多くの企業がしのぎを削っている。

堅調な半導体需要。さらなる需要拡大も期待

堅調な半導体需要。さらなる需要拡大も期待

産業の米とも言われる半導体。世界半導体市場統計(WSTS=World Semiconductor Trade Statistics)によれば、2020年は年初こそコロナ禍で多くの業界が深刻な影響を受けたが、5Gスマートフォンの生産拡大や、在宅勤務や巣籠もり需要に伴うパソコンやデータセンター、その他関連機器の需要が増加。前年比6.8%増の4,404億ドルとなった。2021年の半導体市場は、プラス要素が継続、経済活動の再開も著しくなり、前年比25.6%増の5,530億ドルとプラス成長を予測している(日本市場に関しては、円ベースで同22.0%増の4兆7,486億円。1ドルは109円前提)。

また、2022年についても、旺盛な半導体需要があり、前年比8.8%増の6,015億ドルと予測している。また、日本市場に関しても、同10.3%増の5兆2,400億円と予測している(1ドルは110円前提)。

加えて、TSMCやサムスン電子、インテルといったファウンドリー大手や半導体メーカーは数兆円単位の設備投資を計画しており、こうした設備投資の動きは売上に直結する半導体製造装置業界にとって朗報だ。

厳しい環境ながら既存事業の改善で収益を向上

厳しい環境ながら既存事業の改善で収益を向上

OAとは、Office Automation(オフィスオートメーション)の略。OA機器業界では、オフィスでの業務を効率化・自動化する、コピー機やFAX、プリンタといった機器の研究開発、販売を行っている。
オフィス作業の効率化・自動化はあらゆる企業にとって欠かせない。日本メーカーのOA機器は高性能で高品質との評価が高く、これまで世界中のオフィスに導入されてきた。ただし、IoTの進展や導入、ペーパーレス化の動きもあり、OA機器を巡る状況は厳しい。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大で、在宅勤務などテレワークが浸透。オフィス向けの事務機器需要を押し下げた一方で、自宅で使えるコンパクトなプリンタやスキャナ、コピー機への需要が急拡大するというビジネス環境の変化もあった。
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会の事務機械出荷実績によれば、2021年の1〜6月までの事務機器の出荷金額は前年同期比10.5%増の7,314億円となった。国内向けは同1.6%増だったが、海外向けは複写機・複合機が同12.4%増、ビジネスインクジェットプリンタ(同78.2%増)、大判インクジェットプリンタ(同108.1%増)などと好調で、全体の海外向け出荷金額は同13.9%増5,450億円となった。各社はすでに、従来の箱(ハードウエア)を売って、トナーやインクなどの消耗品で収益を上げるというビジネスモデルから、事業規模や内容に合わせた機器の提案、導入、メンテナンス、サポートまでをトータルに行うソリューション販売へのシフトを目指している。ペーパーレス化の加速もあり、データの記録や保管といったIT支援サービスも求められており、様々な機器やソフトウエアとの連携を強化して、効率的で最適なビジネス環境を構築するソリューション需要は増大すると見られている。

業界関連⽤語

MEMS(メムス)

Micro Electro Mechanical Systemsの略で、センサーアクチュエーター(モーターやシリンダーなど、電気信号やエネルギーを物理的運動に変換するもの)、電子回路などを、シリコンウェハーなどの上に作り込んだ超小型システムで、半導体製造技術を応用した微細加工技術で作られる。平面状に電子回路を集積するLSI(大規模集積回路)と異なり、立体的に積み上げることで、電気的な機能に加えて機械的な機能を組み込むこともできる。自動車やスマートフォン、ゲーム機、医療機器など、幅広い業種の製品への採用が急増しており、市場規模も拡大している。次世代産業を支える技術の一つとしての期待も大きい。

量子コンピューター

実用化に一歩近づいた次世代コンピューターの一つ。一般的なコンピューターでは、すべてのデータを「0」と「1」の2種類の信号で表しデータ処理を行うが、量子コンピューターでは、これまでとは全く異なる量子力学的な動作原理を活用し演算プロセスを実現する。
そのため、「0」と「1」が共存した状態で同時にデータ処理を行え、スーパーコンピューターをはるかにしのぐ、大量データを一度に処理することが可能になるとされる。

TEC値

TECとは、Typical Electricity Consumption(標準的な電力消費)のことで、省エネ基準として使用されている値。プリンタ・複合機を、午前4時間(15分×16回)と午後4時間(15分×16回)の2回稼働させた場合の、スリープ時の電力+プリント時の電力+レディ時の電力を1日とし、1週間(5営業日 + 週末)トータルした積算電力量がTEC値となる。単位はkWh/週。国際エネルギースタープログラムの基準となるため、各社はTEC値を下げるための改良を常に行っている。

AI半導体

AI(人工知能)のためにつくられた専用半導体部品。コンピューターに搭載されるCPUGPUは年々高性能になっているが、ビッグデータブロックチェーンAIなどの大規模演算を行うには処理能力が追いつかなくなってきている。
そこで登場が待たれるのが、GPUのようにCPUを補助し、AIの演算を行う専用チップ(AI半導体)。将来的に急拡大する市場と見込まれており、各社が激しい開発競争を繰り広げている。

EUV露光装置

露光装置とは高度な光技術で半導体の回路をシリコンウエハーに印刷するための機械。半導体は回路幅を微細化するほど処理能力を高めることができ、最先端の半導体では回路の線幅を5ナノメートル(ナノは10億分の1)まで微細化している。EUV露光装置は、極端紫外線と呼ばれる非常に短い波長の光を用いた装置で、従来の技術では加工が難しい20ナノメートルよりも微細な回路の加工を可能にしている。現在、こうした微細加工ができるEUV露光装置はオランダのASML社が独占状態にある。

EMS・OEM・ODM

EMSは、Electronics Manufacturing Servicesの略で、電子機器の製造を受託するサービスを意味する。親会社の指示で製造業務に特化した「下請け」とは異なり、契約を基に量産規模でロット生産を行う。資材や部材の決定や調達、設計、配送など製造以外の工程を行うこともあり、鴻海精密工業など台湾企業が上位を占めている。OEMは、Original Equipment Manufacturingの略で、設計などは自社ブランドを持つ発注元が行い、製造だけは発注先が行うケース。日本では、相手先ブランド名製造とも言われる。ODMは、Original Design Manufacturingの略で、相手先ブランドによる製品を手がけるのはOEMと同じながら、企画・設計の段階から製造までの一連の工程を請け負う、OEMの発展形。

どんな仕事があるの︖

電子・電気・OA機器業界の主な仕事

・営業
自社商品を、顧客である販売店や企業に提案・販売するほか、販売店には新商品の売り方、売り場づくりなども提案する。

・企画
マーケティングデータや世界情勢などを分析し、新しい商品やサービスを企画する。

・資材調達/購買
世界各地の製造工場からのニーズを取りまとめて、国内外から材料となる素材や部品を仕入れる。

・マーケティング
コールセンターなどに寄せられる意見や要望、市場調査などを踏まえて、ユーザーがどんな商品、機能を求めているのかを分析し、商品企画や開発につなげる。

・システム/ネットワークエンジニア
主に企業向けに、自社商品の使い方やネットワーク構築の提案や技術的なサポートを担当する。

・商品開発
既存商品を改善するほか、新商品の企画を立てて、試作や開発を行う。

・基礎研究
次世代向け製品に役立てるため、最先端技術の研究を行う。

・生産管理
スケジュールや計画を立てて、スムーズに生産できるよう手配する。

電子・電気・OA機器業界の企業情報

※原稿作成期間は2021年12⽉23⽇〜2022年2⽉28⽇です。

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