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スポーツ・玩具・ゲーム製品業界

業界の現状と展望

コロナ禍で明暗を分けたスポーツ用品市場

さまざまなスポーツ関連商品を企画、販売するスポーツ用品メーカー。少子化による競技人口の減少で市場規模の縮小が想定される中、健康意識の高いシニア層の増加が目立っている。またスポーツシューズスポーツアパレルを日常的に着用するアスレジャーといわれるファッションスタイルも定着、スポーツウエアやトレーニングウエアの成長も見逃せない。ランニングや山登り、フィットネスのように愛好者の裾野が広い分野で人気が高まっていることもあるが、もう一つの理由として、スポーツウエアのファッション性が浸透してきた背景もある。「スーツにスニーカーを合わせる」、「ジャケットの下にスポーツブルゾンを着用する」といった、いわゆる「スポーツミックス」が若者を中心に受け入れられている。
さらに、コンプレッションウエアや、発熱・冷却など温感対策を施した機能性アンダーウエアの存在も挙げられる。アパレル市場全体は人口減少もあり縮小傾向にあるが、アスレジャースポーツミックスをはじめ、多角的な需要を取り込める商品については好調に推移するものと考えられている。競技者だけでなく一般消費者需要をうまく取り込むことで市場は堅調に推移してきた。

2020年はコロナ禍でスポーツイベントの中止や延期、学校での部活動の休止が相次ぎ、堅調だった市場も影響を受けたが、2021年、2022年は夏・冬連続の五輪イヤーとなり日本代表選手の活躍はスポーツシーンの光明となった。また2021年には、ゴルフで松山英樹選手がマスターズ優勝、米メジャーリーグベースボールでは大谷翔平選手が二刀流で大活躍するなど明るい話題も続き、スポーツイベントへの動員も徐々に回復できつつある。
矢野経済研究所では、2020年のスポーツ用品市場は、前年比10.8%減の1兆3,738億円と推定。ただし、コロナ禍にあっても釣りやサイクルスポーツはそれぞれ同6.7%増、同12.8%増と増加、アウトドアも同2.4%減と最小限の落ち込みにとどまっており、競技によって明暗をわける結果となっている。2021年のスポーツ用品市場については、反動増も期待でき同10.5%増の1兆5,179億円と予測している。
また、テレワークの普及で、自宅で利用できるフィットネス商品やヨガマットなどの需要が高まると同時に、自宅で日常的にスポーツウエアを着用する人も増加。オンラインでフィットネスやヨガなどの指導をスタートするフィットネスクラブも登場している。さらに、プールなどを併設するこれまでの総合型フィットネスクラブと異なる、24時間営業の小型施設が人気を集めており、各社はコロナ禍におけるスポーツ関連市場のありようを模索している。

成長産業としてのスポーツを目指す

成長産業としてのスポーツを目指す

スポーツ業界にはこうしたスポーツ用品市場だけでなく、スタジアムの運営や大会の開催、競技者や指導者の育成・教育に関わる事業など、さまざまな産業がある。サッカーやバスケットボール、野球やラグビーなど、欧米諸国ではビジネスとしてのスポーツがすでに巨大な産業として存在する。一方で、国内ではスポーツは教育の一環と捉えてきた一面もあってか、十分なスポーツ振興政策が取られてこなかった。
そのため、スポーツ庁を中心に、スポーツを成長産業化させるため、さまざまな施策に取組んでいる。スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参画人口の拡大につなげる好循環を生む狙いだ。またスポーツを通じた健康増進によって、国民医療費の抑制にもつなげようと考えている。具体的な課題としては、収益の上がるスタジアムやアリーナの建設・改修、競技団体などのコンテンツホルダーの経営力強化や新ビジネスの創出、スポーツ経営人材の育成・確保、他産業との融合などによるスポーツ新市場の創出、スポーツ参画人口の拡大などがある。

定番商品が市場を牽引し、7年連続の8,000億円超えを達成

玩具・ゲーム製品業界は、対象が乳幼児から高齢者までと幅広く、情緒を育んだり余暇を楽しく過ごしたりするための遊び道具をつくる分野。日本玩具協会によれば、2020年度の国内玩具市場規模は8,268億円(前年度比1.5%増)となり、少子化トレンドでコロナ禍においても増収となり、7年連続で8,000億円を超えた。
玩具の中核を占める主要10分野(ゲーム=テレビゲーム関連を除く、カードゲーム・トレーディングカード、ジグソーパズル、ハイテク系トレンドトイ、キャラクター、のりもの玩具、ドール・ままごと、ぬいぐるみ、知育・教育、季節商品)も5,222億円(同0.1%増)となった。中でも、ジグソーパズルが前年度比58.7%増と大幅アップ。ハイテク系トレンドトイ(同24.9%増)やゲーム(同17.3%増)も10%以上の増収だった。
一方で、店舗の休業やイベントでのプロモーション・販売ができなかったことなどもあり、キャラクター(同16.3%減)、のりもの玩具(同17.3%減)、ドール・ままごと(同14.3%減)は厳しい結果となった。
やはり、コロナ禍の中で高まったステイホーム需要に対応した商品や、公園などで遊ぶ際に使うグッズが好調で、2020年はいわばコロナ関連商品が玩具市場を牽引する形となった。また、パソコン・pad型玩具は前年比50%以上の伸びを達成、キャラクターと一緒に楽しく小学校の基礎科目やプログラミングなどを学べるものが中心で、学校の授業もままならない中で、家庭内で楽しく学ぶための必需品となった。
子どもの人口は減少傾向にあるものの、大人層を取込むなどの年齢層の拡張もあり、玩具市場全体は比較的堅調に推移している。近年では、「鬼滅の刃」と「すみっコぐらし」の両キャラクターは、子どもから大人まで、男女に関わらず幅広い人気となっていて、様々な商品分野で高い人気を集め、あらためて人気キャラクターのポテンシャルの高さがうかがえる。さらなる成長には、海外展開の推進に加えて、人気IP(業界関連用語参照)の活用、引き続き期待が持てる知育・教育玩具の開発、新市場の創出や年齢層のさらなる拡張、新技術の導入などが求められている。

業界関連⽤語

ヴェイパーフライネクスト

ナイキ社が発売するランニングシューズで、分厚いソールが特徴。内部にカーボンファイバーを採用し、非常に軽量でありながら頑丈、接地時の反力をロスなく推進エネルギーに転換する機能と快適な履き心地を両立しているとされる。2019年10月には非公式レースながらマラソン世界記録(2時間1分39秒)保持者のキプチョゲ選手が1時間59分40秒をマークするなど、陸上長距離界を席巻している。近年は、ライバル会社も質の高い厚底シューズを製作しており、開発競争が激化している。

アスリートマネージメント事業

これまで競技選手の多くは、単独の大学や企業などに所属するアマチュア選手が中心だったが、競技選手のプロ化が進むにつれて必要性が高まってきたのが、選手のマネージメントを行う会社の存在。今では、多くの会社がアスリートマネージメント事業を行っている。主な業務は、アスリートが目指す競技大会で最高の結果を残せるように練習環境の整備や、メディアなどでの効果的なプロモーション活動、所属団体やスポンサーとの契約交渉など多岐にわたっている。

eスポーツ

「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、コンピューターゲームやビデオゲーム上で行われる競技のこと。2018年2月に、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主導し、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の後援の下、日本国内の日本eスポーツ協会(JeSPA)、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟(JeSF)の3団体を統合、日本eスポーツ連合(JeSU)の活動がスタートした。2018年のアジア競技大会では参考競技として、2019年の茨城国体では文化プログラムの特別競技として行われた。2024年開催のパリオリンピックでの採用は見送られたが、2022年の中国・杭州アジア競技大会ではメダル種目となることも発表されている。

知育玩具

幼児や児童の知能的発達を促進する玩具、または幼児や児童の学習の助けになる玩具のこと。いわゆる教材が知識を増やすために用いられるのに対し、知育玩具は、考えることや表現することを通じて、知能全般の発達を促すことを目的としている。パズルやブロックがよく知られているが、広い意味ではハイテク玩具コンピューターを知育玩具と考えることもできる。

IP

IPとは、Intellectual Property の略で、ゲームやアニメなどにおけるキャラクターなどの知的財産のこと。有力なIPを活用することで、エンターテインメント業界において幅広い事業活動が可能になる。各社は、IPを軸に最適なタイミングで商品化や事業化を行い、長期間の持続的成長を実現できるよう戦略を立案している。

どんな仕事があるの︖

スポーツ業界の主な仕事

・営業販売
小売店に対して商品の宣伝、営業を行う。スポーツ関連イベントのような販売促進活動の企画を立てたり、実施を任されたりすることもある。

・商品管理
商品の耐久性や安全性の確認を行うほか、生産工程の維持管理を行う。

・企画
新商品の企画を行う。また、イベントや販売戦略を立てることもある。

・研究開発
商品の開発設計を行う。素材の基礎研究のほか、さまざまな実用化実験を行う。

玩具・ゲーム製品業界の主な仕事

・マーケティング
市場をリサーチ・分析し、新商品の開発や既存商品のリニューアルを考案する。商品の魅力を消費者に伝え、購買意欲をかき立てるようキャンペーンの立案・企画なども行う。

・営業
自社商品を扱う卸問屋、販売店に対して、商品の宣伝、営業を行う。

・商品企画
既存の商品を改善するほか、新商品の企画を行う。消費者ニーズを探り、新しい価値を創出・提案する。

・生産管理
スケジュールや計画を立て、スムーズに生産できるよう手配をする。

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スポーツ・玩具・ゲーム製品業界の企業情報

※原稿作成期間は2021年12⽉23⽇〜2022年2⽉28⽇です。

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