臨床検査技師
- 竹内 奈津美さん
- 職歴:6年
全ての検体の向こうに患者さんがいる。
だから決して「作業」にはしたくない。
現在の仕事内容
私たち臨床検査技師の仕事は、患者さんの体に関する客観的データを分析することで、病気の早期発見や正確な診断を促すことです。臨床検査には、採取した血液や髄液、尿などから検査をする「検体検査」と、心電図や脳波など、医療機器を用いて患者さんの体を直接検査する「生体検査」があります。
私は検査センター内での「検体検査」に従事しており、その中でも以前は血清検体などを担当していましたが、現在は主に血液を検査する部署に所属しています。具体的には、全国の病院から集められた血液検体を顕微鏡で見て、赤血球や白血球の異常が無いかや、抗体の有無などを調べています。勤務は日勤と夜勤の交代制となっています。日勤では例えばその日の朝9時に預かった検体について、わずか1時間半で検査を終え報告しなければならないなど、正確さはもちろんのこと、スピードも求められます。一方夜勤の場合は、その日の晩に預かった検体を明朝までに処理しますが、日勤に比べてさらに検体数が多いので、より根気が求められます。
いずれにしても、毎日数多くの検査をこなすことが求められる中で、患者さんと直接お会いすることもないので、この仕事はともすると「作業」になってしまいがちです。ですが、どの検体に関わるときも患者さんの存在を思い起こし、決して間違った判定を返さぬよう心掛けています。
その道に進もうと思った理由
医療業界に関心を持ったきっかけは、体があまり強くなかった小学生のときに、通院した経験でした。そのとき病院の待合室で読んだ本に、検査の存在や仕組みが書かれていて、関心を持ちました。また診療時、ドクターはもっぱら付き添いの母に説明をしていましたが、臨床検査技師の方が、私の相手をしてくれました。「治療」ではなく「検査」に興味が向いたのには、そのような経験も影響していると思います。最終的には、ほんの少しの検体からさまざまな生体情報を引き出す「検査」のすごさに憧れを感じ、大学は臨床検査学科に進むことにしました。
臨床検査技師の資格取得後は、病院勤務よりもより多くの検査を経験できると考え、検査センターである、現在の会社への入社を決めました。今まで教科書で見ていただけの検査が、目の前で行われているのには感動しました。
キャリアパスのポイント
- 小学生時代
- 体が弱く、毎週のように通院していたときに、検査を担当してくれた臨床検査技師に憧れる。
- 大学時代
- 学校の勉強以外に、病院での実習、就職活動や国家試験の受験勉強、卒業論文作成に向けた実験にアルバイトと、多忙な日々。
アルバイトでは接客業や警備員、キッチンスタッフなど医療とは無関係な仕事もたくさん経験。現在は検査センターでの業務のため関わる人の幅が狭くなりがちだが、学生のうちに広い世の中に触れ視野が広がったことも、現在の糧になっている。
- 入社1~2年目
- 念願がかない臨床検査技師に。
病院実習の際に、よく検体を取りに来ていて気になっていたエスアールエルに就職。取り扱う検体数が多いのと、種類もポピュラーなものから特殊なものまであって、経験が積めると考えたのが決め手。
- 入社3年目
- 3年目からは学会にも参加し、普段の業務で扱う項目の意義をさらに理解するなど、見識を深める日々。血清オートタキシンについては自ら発表も行った。
- 現在
- 入社4年目より、検体検査の中でも、血清検査の部署から、血液検査の部署に異動。今までは機械を用いて値を測定することが多かったが、現在の仕事では絶対値ではなく、顕微鏡越しに自分の目で、色味や濃淡などによってその状態を判断しなければならない、という違いに最初は戸惑う。同時に、同じ「臨床検査技師」という職種で、しかも同じ会社内にも関わらず、こんなにも異なる世界があることに感銘を受ける。今までは「臨床検査技師」の仕事の一角しか知らなかったのだと気が付き、より一層邁進する日々。
また、上級資格取得に向けても勉強中。
これからのキャリアプラン
どちらかというと管理職になるよりも、現場で検査のスペシャリストになりたいと考えています。検査に関する知識が豊富で、他の人なら見逃してしまうかもしれない異常値にも気付く、そんなイメージです。
しかしそうなるには勉強が必要です。そこで、毎日の勤務も大変勉強になりますが、それに加え、公益財団法人・日本臨床検査同学院が認定する二級臨床検査士資格を取るべく、勉強をしています。学生時代に取得した臨床検査技師国家試験のための勉強よりも、さらに深い知識が求められます。
なぜここまで頑張れるかといえば、大学時代に病院実習で目の当たりにした、患者さんの姿があるからかもしれません。検体を提供してくださる患者さんの多くは、病気を患っています。健康な人にとってはたった数mlかもしれませんが、その検体提供にあたり、私たちには想像もつかない苦労をされているかもしれません。また、まだ何もわからない赤ちゃんに対し、泣いて暴れるのを必死に押さえて、注射をしなければいけないこともあります。
そう思うと、臨床検査技師は当然、全ての検査に対し、常に自信を持って結果を返せるようにならなくてはいけないと思うのです。
プロフィール
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臨床検査技師職歴:6年
竹内 奈津美さん
エスアールエル(H.U.グループ)
自動化検査部 AUTO検査課 血液AUTO係