書き方に困ったらチェック!介護記録の基礎講座

介護実習を始めるにあたって、不安を抱く学生さんは少なくありません。特に不安要素として挙げられることが多いのが「実習記録をきちんと作成できるか」。文章が苦手な学生さんほど、意識的に学ぶ必要があります。実習生として真剣に記録物に取り組んだ経験は、プロとして現場に立ったときにも必ず役立つはずです。

※本特集で取り上げる書類の書式や書き方は、あくまで参考として例示するものです。実際の書類作成で迷うこと、分からないことがあれば、担当教員や実習指導者などに相談してください。また、先生方の指導と本特集の内容で異なることがあれば、先生方に従ってください。

第1回 書類の書き方・扱い方の基本

ここでは、実習記録をはじめとする書類全般について基本的な考え方をお伝えします。プライベートなメモや日記とは根本的に異なる書き方のポイントを押さえておきましょう。

各書類の目的や記載事項をチェックしよう

実習生が作成を求められる書類には、学習効果を高めるための様々な工夫が凝らされています。そのため、空欄を漫然と埋めていくだけでは、貴重な実習機会を通しての十分な成長が望みづらくなってしまいます。書類を配布された時点で、それぞれの書類の目的や記載事項、書き方などを確認しておきましょう。そうすることで、「対象者の言動を書くべき欄に自分の感想を含めてしまう」といったミスを防ぎやすくなります。また、あらかじめ記載事項を意識しながら現場に入れば、後から「書くことがない」と悩むことも減るでしょう。

悩む実習生

いつまでに何の書類を提出しなければならないのかしっかりと把握し、計画的に作成する姿勢も欠かせません。特に実習の初期段階では、1枚の書類を仕上げるのにどれだけ時間がかかるか見通しが立ちづらいもの。くれぐれも提出期限を破ることがないよう、時間的・精神的余裕を持って取り組んでください。「後でまとめて書こう」とタスクをためてしまうと、せっかく収集した情報の鮮度が落ちたり、大切なことを忘れたりするリスクが高まります。

消せない筆記用具の使用が原則

書類の内容にもよりますが、介護実習の記録物はボールペンなどで記入するのが原則です。情報を紙にとどめて後から読み返すことを考えると、文字が薄くなったり見えにくくなったりする筆記用具は望ましくないからです。そもそも公的な書類の作成においては、鉛筆やシャープペンシル、後から消すことのできるタイプのボールペンなどの使用は控えることが普通です。後から修正可能な筆記用具では記録としての信頼性が低いと考えられる可能性もあるので、今のうちからボールペンなどでの記入に慣れておいてください。

できるだけ丁寧な字で記入した後は、誤字脱字がないか読み返す習慣を付けましょう。誰にでも書き間違いはあるものですが、あまりに誤字脱字が多いと悪印象につながってしまいます。専門用語などに不安がある場合は、面倒でもそのつど教科書や参考書、辞書などを調べて確認してください。文字を修正する場合は、「訂正箇所に定規を使って二重線を引き、訂正印を押す」というのが正式な方法です。修正液や修正テープを用いたり、黒く塗りつぶしたりすることは望ましくありません。

話し言葉はNG!読み手を意識した表現を

文章のスタイルには、「~だ、である」で終わる「常体」と、「~です、ます」で終わる「敬体」の2種類があります。一般的に、公的な文書では常体が用いられますが、どちらで書くのが望ましいか事前に確認しておくと安心です。いずれにしても、常体と敬体を混ぜるようなことはせず、どちらかに統一することが重要です。また、いわゆる「話し言葉」を記録物に用いると、稚拙な印象を与えてしまいます。特に、ついつい使ってしまいがちな次のような表現に注意しましょう。

話し言葉はこう変換しよう!
話し言葉書き言葉
すごい、すごく非常に、とても
いっぱい多く、数多く
ちょっと少し、多少
ちゃんときちんと、しっかりと
~けど~だが
やっぱりやはり
でも、だけどしかし
あんまりあまり
やっとようやく

なお、見聞きしたことを振り返って書くことが多いため、実習記録は基本的に過去形で記述することになります。ただし、「現在行っていること」や「進行中のこと」であれば現在形とすることが正しいので、これら2つの時制の使い分けも意識しましょう。時間経過を正しくとらえることは、介護記録の重要なポイントになるからです。

利用者さんのプライバシーや尊厳にも配慮して

介護実習では利用者さんのプライバシーに接するため、記録物の作成においても「絶対に漏らしてはならない情報を取り扱っている」という意識を忘れないでください。特に固有名詞の記載については細心の注意が求められます。「利用者さんの個人名はイニシャル表記する」など、学校や施設によって何らかのルールを設けているはずなので、必ず事前に確認しておきましょう。地名や病院名、疾患名などについても同様です。

利用者さんの尊厳に対する配慮も欠かせません。記録物は後に残るものなので、その記述の表現が妥当であるかどうかは、よりいっそう敏感になる必要があります。利用者さんの名誉を傷付けたり、見下したりするような表現をしないよう十分に注意しましょう。こうした表現を(無意識的にでも)使う癖が付いていると、介護職として働き始めてから本人や家族が目にすることもある記録の中で書いてしまうおそれもあります。

また、尊厳への配慮を欠いた言葉は、人によって想像する内容に幅が出てしまい、不正確な伝わり方になるという問題もあります。例えば、「暴言を放った」という表現からは、介護する側が嫌な気分になったというニュアンスが感じられる一方、利用者さんがどんな様子で何を発言したのかはまったく分かりません。相手の言動を具体的に書くことを心がけていれば、こうした不適切かつ不正確な言葉は使わずに済むはずです。

持ち歩くことも多いからこそ徹底管理を

情報漏洩のリスク

先にもお伝えした通り、実習生であっても個人情報保護を徹底することは極めて重要です。たとえ個人名をイニシャル表記にしていたとしても、実習施設名、既往歴、家族の背景といったプライベートな情報が多数記載されている書類では、個人が特定できてしまうケースも少なくありません。したがって、情報漏洩を防ぐためには、記録物をしっかりと管理する必要があります。こうした書類は実習期間に持ち歩くことも多いため、万が一にも紛失することのないよう、置き忘れなどの防止には細心の注意を払ってください。学校に提出する書類だけでなく、実習の合間に取ったメモなども同様です。

また、人前で実習記録を取り出すような行為も、情報漏洩のリスクをはらんでいます。例えば、電車内やカフェで実習日誌を読んだり書いたりすれば、近くにいる人たちから丸見えになっているかもしれません。もちろん、記録内容について人前で話すこともNGです。協力いただいている利用者さんがいるからこそ実習が成り立つことをあらためて認識し、思わぬかたちで迷惑をかけることがないよう、日ごろの行動を振り返ってみましょう。