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薬学生の業界研究 病院で働く
Introduction

病院の規模や機能はさまざまですが、どんな病院でも薬剤師の働き方が変わりつつあることは間違いありません。かつて「患者さんから見えにくい存在」といわれた病院薬剤師は、これからの時代にどんな役割を担うのでしょうか。

Index

病院の最新動向

今後の展望

病院薬剤師の仕事

就職活動&キャリアパス

病院の最新動向

病院数は減少傾向、役割を精査する段階に

超高齢社会となった日本において、国民医療費はますます膨れ上がり、2018年時点で43兆3949万円(GDP比7.91%)にまで達しています。従来の医療のあり方のままで立ち行かないことは、こうした財政面からも明らかでしょう。こうした事態に対応するため、国は2年に1回行われる診療報酬改定を通して強力な誘導をかけており、近年では病床数抑制や入院期間の短縮などが顕著になり、地域包括ケアシステムの構築に伴い「病院から地域へ」の流れが加速しています。病院数は1990年の1万件超をピークに少しずつ減少し、逆に無床診療所は増加傾向にあります。

とはいえ、病院が医療の「核」となる存在であることは変わりません。医師や看護師、管理栄養士、診療放射線技師、臨床検査技師、そして薬剤師などが一堂に会し、チーム医療を提供する場であることはもちろん、大学病院などでは臨床の知見を研究にフィードバックする役割も重要です。新薬が次々と臨床に供され、薬物療法がますます高度化・複雑化している今、医師と薬剤師がタッグを組んで治療に当たる場面も少なくありません。現在は、こうした「病院にしか担えないこと」に集中できるよう、病院機能を精査する段階に来ているといえそうです。

今後の展望

「地域完結型医療」への貢献が求められる

地域包括ケアシステムの確立が重視される潮流は、今後も基本的に変わらないでしょう。病院の中だけで医療を完結させるのではなく、患者さんの状態に応じて適切な医療を提供できる体制を整備すると同時に、できるだけ早く在宅へ移行させることが求められます。つまり、「病院完結型医療から地域完結型医療への転換」です。したがって、急性期医療のニーズは低下する一方、「地域へつなぐ」ことを目的とした病院機能が拡大していくと考えられます。

「地域包括ケア病棟」と「薬剤師外来」

薬剤師に関連するキーワードとして、ここでは「地域包括ケア病棟」と「薬剤師外来」をご紹介しましょう。2014年度の診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟は、急性期医療と在宅医療の懸け橋となる存在です。急性期を脱した患者さんを受け入れて在宅移行を支援することが主な役割で、在宅でも継続可能な、個別性のある細やかな薬学管理や指導を提供しています。

薬剤師外来は、がんや糖尿病、精神疾患など、薬剤の服用や管理が難しかったり、副作用が問題になりやすかったりする領域で注目されています。例えば、通院しながら抗がん剤治療を続ける患者さんに対して病態や薬剤について分かりやすく説明したり、副作用の状況を聴取して対処の仕方を検討したりして、アドヒアランス向上をめざしています。

病院薬剤師の仕事

調剤業務に加えてベッドサイドでの活躍も期待

病院薬剤師というと、院内薬局(調剤所)での調剤業務をイメージする人が多いでしょう。院内で使用するさまざまな薬剤(注射薬などを含む)の調剤全般に携わり、抗がん剤の無菌調製など高度な業務を担うこともあります。1000種類以上の薬剤を取り扱う病院も多く、それらの在庫コントロールや管理も薬剤師の仕事です。また、DI室(医薬品情報管理室)に所属して医薬品情報を評価・判断したり、臨床研究に携わったりする薬剤師もいます。

一方、近年では患者さんのベッドサイドを訪れ、薬学の専門家としての力を病棟で発揮する薬剤師も目立つようになりました。例えば、入院時の持参薬の確認や服薬指導、患者さんの病状や副作用のチェック、処方提案などです。自身が関与した薬物療法の効果を直接確認できるため、大きなやりがいを感じられるはずです。また、そうして収集した情報を医師や看護師などに提供したり、薬学関連の相談に応じたりすることも大切で、チーム医療の欠かせない一員であることを実感する場面も多いでしょう。

就職活動&キャリアパス

就職活動のポイント

積極性とコミュニケーション能力がカギ

医療施設で働く薬剤師は、全体の19.3%※。採用枠が「若干名」 であることも多く、狭き門だといえるでしょう。企業と比べると採用や広報にあまり力を入れない傾向もあり、志願者にはより積極的に情報収集する姿勢が求められます。見学会やインターンシップのほか、病院の発行する広報誌、OB/OG訪問なども存分に活用しましょう。学校での成績や研究実績が重視されるのはもちろんですが、ベッドサイド業務やチーム医療で力を発揮できるかどうか、つまりコミュニケーション能力も問われるようになっています。

※厚生労働省:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況.

キャリアパス

ジェネラリストorスペシャリストで道が分岐

病院薬剤師のキャリアパスは病院によって多様ですが、前述したような役割の拡大を踏まえて、できるだけ早期からいろいろな業務を経験させるケースが増えています。例えば、入職2年目ごろから病棟業務に関わったり、数年ごとに担当部署や病棟を異動したりすることもあります。若いうちに基盤となる知識や技術を習得することはどんなキャリアパスでも共通して重要ですが、そこから部署の管理職(つまり、ジェネラリスト)をめざすか、自身の興味の範囲が定まってからスペシャリティーを高めるかで道が分岐していくイメージです。認定薬剤師や専門薬剤師をめざす場合は、どんな要件を満たす必要があるか調べておき、資格取得に向けて計画的に動きたいところです。

向いている人

チーム医療の中で輝ける存在になろう

他の職場では経験できない高度な医療に携わりたい人は、自然と病院をめざすことになるでしょう。また、直接的に患者さんやその家族と接する機会が増えていることから、治療に貢献しているという実感を強く持ちたい人にもぴったりです。こうした環境で多職種連携を図りながら業務を遂行するためには、確かな専門性に加え、多様な考え方や立場の人と円滑にコミュニケーションする能力が必要。チーム医療の中で、なくてはならない薬剤師になることが期待されます。

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