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薬剤師の多様性あるキャリア
Introduction

薬学部に身を置いていると「将来は薬局や病院に就職し、調剤業務に従事するのが当たり前」と思い込んでしまいがち。しかし、薬学の知識を生かせるフィールドは想像以上に広大です。先輩たちが切り拓いてきたさまざまな道筋をたどりながら、薬剤師にどんな活躍の可能性があるかご紹介します。

Index

01. 漢方&薬膳

02. 国際協力

03. アンチ・ドーピング

01.漢方&薬膳

患者さんを全人的にとらえ、漢方薬を処方する

薬学部で学ぶ薬剤は、いわゆる西洋薬が中心になります。西洋薬は特定の疾患や症状に対して強い薬理作用を持ち、多くの場合、1つの有効成分の力を発揮させるものです。一方、漢方薬は植物や鉱物といった天然素材由来の生薬が用いられ、原則的に複数の成分が含まれることから、より多様な症状に対応できると考えられています。「予防」「健康増進」といったイメージが先行しがちですが、西洋薬の副作用緩和、術後管理、疼痛の軽減などにも使われ、さまざまな診療科で応用可能とされています。西洋薬と併用することで治療の幅が広がるだけでなく、漢方薬が第一選択薬とされるケースもあります。

特に漢方薬が得意とするのは、西洋医学では対処しづらい慢性的な体調不良や、体質に関連する症状です。漢方薬局では薬剤師自身が患者さんの状態や症状に応じて漢方薬や生薬を提供しているため、大きなやりがいを得やすいといえるでしょう。一方で、確かな知識を身に付けるとともに、一人ひとりと向き合ってカウンセリングする能力が問われます。

また、こうした東洋医学の知識を生かして薬膳に携わる道もあります。薬局薬剤師として患者さんに食事のアドバイスをするだけでなく、地域の飲食店とコラボして薬膳メニューを考案したり、自らレストランのオーナーとして活躍したりする薬剤師もいます。舌にも身体にも美味しい食事を提案して病気や不調の予防を促すことは、超高齢社会の日本では特に重要な貢献だといえるでしょう。

Interview #01
薬剤師 × 薬膳

薬剤師としての知識を生かしながら、ビジネス街にあるFarmacy Deli&BAR「日本橋1ppon」で、昼は薬膳メニューの健康ランチボックスの提供、夜はイタリアンダイニングバーで料理を提供している服巻佳奈さんにお話を伺います。

薬剤師 × 薬膳

子供の頃から好きだったことと薬学が、
食を通じてつながった

小さい頃から絵を描くのが好きで、高校時代にはPCで絵を描いたりデザインをしたりしていました。美大に行ければ良いなと思っていたのですが、「絵ならいつでも描ける。これからは免許・資格があった方がいい」という父のアドバイスで薬学部進学を決めたんです。
実家の福岡から上京してきて、友達と遊んだり旅行に行ったり、交友関係にも恵まれた楽しい学生生活でしたが、薬学部での勉強はかなり苦労した経験があります。それでも一念発起して勉強に本腰を入れたとき、薬物動態の公式の意味を理解したり、生化学で薬や食べ物の影響を知ったりすることはなんて楽しいんだろうと、薬学の面白さに気づいたんです。
資格を取得して複数の薬局で働きました。患者さんは、医師には遠慮して伝えられないことでも薬剤師には言いやすい場合があります。コミュニケーションが患者さんにとっては大事だし、私も楽しかったので、できるだけみんなが話しやすいような薬剤師でいようと思いました。それでもできることには限りがあります。どうしたらみんなを元気にできるのか。それは「食」なのではないかと思い至ったんです。

そんな時、学生時代の先輩から「キッチンカーやメニューのデザインをやってくれないか」と声がかかりました。それまでも薬剤師の仕事の無い土日などにイラストやデザインを請け負ったりしていましたし、「食」の重要性に改めて気づいた時でもあったので、チャンスでした。キッチンカーでは、健康志向のメニューにこだわろうということで、薬膳インストラクターの資格を持つシェフから、また独学でも薬膳についていろいろ学びました。
薬膳は西洋医学と違って、病を予防するためのものです。そういった意味でも、薬膳に基づく食事は大事。ますます興味が湧いて、学校にも通い始めました。現在は、新日本橋にオープンしたFarmacy Deli&BAR「日本橋1ppon」で薬膳メニューを提供しています。薬膳は身体にいいということは、何となくみんな知っているのでしょうが、あまり前面に出てしまうと敬遠されてしまう。そこが難しいところで、薬学の知識を生かしながら、もっと薬膳の美味しさ、楽しさを知ってもらえるようにと頑張っています。
薬学の知識や薬剤師の資格というものは、どの業界でも絶対に生かせるものだと思います。現に私がそうなので。学生時代はできることが無限にありますから、いろいろなことにチャレンジして興味が持てる分野を見つけてほしいですね。薬学は必ずいろいろなものをつなげてくれます。

服巻 佳奈さん

服巻 佳奈さん

2009年薬学部薬学科卒業。聖路加国際病院の門前薬局で経験を積んだ後、派遣薬剤師として数々の薬局で勤務。現在は、アンプラスジャパン合同会社の業務執行責任者として、薬膳レストランやキッチンカーの運営に携わる。

02.国際協力

薬剤のプロとして世界の課題解決に挑む

医療サービスが不安定・不十分な国は多く、政情が不安定な国や紛争地、難民キャンプなどを含め、世界各地で薬剤師が困難に立ち向かっています。国境なき医師団や青年海外協力隊などから派遣される医療従事者に薬剤師が含まれていることからも、そのニーズは明らかでしょう。

現地で薬剤師が担う業務はケースによっても異なりますが、病院や薬局などでの薬剤管理、現場スタッフの支援や教育などが中心です。電力供給が安定しない地域での薬剤管理は容易ではありませんし、流通の状況によっては思うように薬剤が供給されないことも少なくありません。高温多湿などの厳しい環境下での適切な在庫管理力や、過不足なく医薬品を調達するための交渉術など、日本で働く場合とはまた違ったスキルが求められます。

日本で高度な医療知識を習得した薬剤師が、現地の薬剤師や薬学生、ファーマシー・テクニシャン(調剤技師)と協業することの意義は大きいといえます。「自分の帰国後も現地により良い医療を残す」という長期的な視点を持ち、現地の人々とワンチームとなって課題解決に挑む姿勢が欠かせません。そのためには一定の語学力が求められますが、英語が第一言語でない地域に派遣される可能性もあります。ネイティブでない者同士のコミュニケーションには工夫が必要で、柔軟性や折れない心、たくましさといった、単純な語学力以上の「人間力」が問われます。

Interview #02
薬剤師 × 国際医療援助

国境なき医師団に薬剤師として参加し、医療チームの一員として重要な役割を担う的場紅実さんにお話を伺います。

薬剤師 × 国際医療援助

国境なき医師団の“金庫番”として、
さまざまな場所に確実に薬を届ける

実は薬学部は第一志望ではありませんでしたが、在学中に米国へ留学したことがきっかけで意識が変わりました。空いている時間はとにかく人に会って語学力を鍛えようとボランティア活動に取り組む中で、他人を助けるより自分が助けられ、得るものがたくさんあることに気づかされました。この経験も今に生かされているのかも知れません。
卒業後は調剤薬局や病院に勤務。あるとき、友人の薬剤師が国境なき医師団(MSF)で海外派遣されたことがあると聞き、医師や看護師以外でもMSFで働けることを初めて知ったんです。そもそもMSFとの出会いは幼い頃、母が見せてくれた新聞記事を通してで、栄養失調で骨と皮ばかりのアフリカの子どもたちの写真が、強烈な印象として残っていました。名前もかっこよくてずっと憧れていたMSFに、薬剤師として参加できるなら、ぜひ行ってみたい。人の話を通してではなく、自分の目で直にアフリカを見てみたいと思い、MSFの求人に応募しました。
でも、実際に登録に至って派遣されるまでには5年もかかったんです。登録までの間は多くの課題を与えられ、タイで公衆衛生学の修士をとるなど長い道のりでしたが、今思えばその学びがあったからこそ派遣先で十分に力を発揮できたわけで、悔いはありません。

MSFでの薬剤師の役割は、医薬品の質と量の確保。欧州にある物流倉庫から適切な質と量の医薬品を輸入し、現地の患者さんの手に渡るまでの全行程に関与します。医師や看護師も薬がないと十分に働くことができないし、薬は足りなくても余ってしまってもいけない。そういった意味で自分たちはMSFの「金庫番」だと思っています。任される仕事の範囲は広く、自分たちが扱う薬の先の先まで見通すことが求められる大事な役目。いかに医師を助け、看護師を支援し、必要としている患者さんに迅速に届けるか。目的がはっきりしているからこそ矛盾がなく、面白くてやりがいがある仕事だと思います。
できたばかりの国や政情不安定な国に行ったこともありますが、どこに行っても感じたのは、人々の強さ。逆境の中で強く生きている人には尊敬の念しかありません。それは旅行ではなく、現地で働いたからこそ知り得たこと。一生懸命働く中で現地のスタッフに受け入れられ、そこを去るときに“また来てよ”と言われると本当にうれしく思います。
薬剤師の活躍の場は広がっています。薬学生の皆さんには興味があること、やりたいことがあれば、どんどんチャレンジしてほしいですね。そうすれば、いつか、こんな世界があったんだ!と思える働き方、職場が必ず見つかりますから。

的場 紅実さん

的場 紅実さん

福岡県出身。1999年岐阜薬科大学を卒業。医療機器の営業職、調剤薬局、病院勤務を経て、2013年より国境なき医師団の医療援助活動に参加。これまでに南スーダン、フィリピン、イラク、アフガニスタンなど7ヵ国で活動。

03.アンチ・ドーピング

スポーツ選手が競技に集中できる環境を整える

禁止されている成分の効果で競技能力を高めようとするドーピングは、スポーツが成立する土台となるフェアネスを冒涜する行為。もちろん、摂取した成分によっては健康被害が出るおそれもあります。スポーツの価値や選手の安全を守るための「アンチ・ドーピング」において、薬剤師が関与する余地は大きいといえます。

日本は意図的なドーピングが少ない国だといわれていますが、それでも周囲の期待にこたえようとするあまり、ドーピングに手を出してしまう選手はゼロではありません。こうした意図的なドーピングは論外ですが、「大会中に勧められた栄養ドリンクを飲んだらドーピング検査に引っかかった」「体調管理のために飲んだ感冒薬やサプリメントに禁止物質が含まれていた」といった意図しないケースもあります。とはいえ、うっかりだからといってドーピングが許されるはずもありません。そのペナルティーは厳しく、成績が抹消されるばかりか、数年にわたる出場停止処分で選手生命が絶たれることもあります。

そこで必要とされているのが、スポーツ選手がドーピングについて相談できる環境づくり。特に、チームドクターなどからのサポートを得づらいアマチュア選手や学生選手にとっては、気軽に相談できる薬剤師(スポーツファーマシスト)が心強い存在となっています。相談を待っているだけではなく、スポーツ団体や学校での講演・啓発活動、指導者への情報提供なども重要です。医薬品やサプリメントの個人輸入が容易になった現代において、選手が競技に集中するためには薬剤師の力が不可欠だといえます。

Interview #03
薬剤師 × スポーツ

元プロバスケットボール選手であり、現在はスポーツファーマシストとしても活躍する、岡崎修司さんにお話を伺います。

薬剤師 × 国際医療援助

文武両道のスポーツファーマシストとして、
アスリートに寄り添う

僕は小学生の頃からバスケットボールを始め、いつかはプロになりたいと精進していました。しかし、当時の日本のトップリーグは主に実業団チームで構成されており、競技とは別に仕事を持って働く必要がありました。それで将来を考えていたとき、入院した祖母へ親身に関わってくれた薬剤師の姿を見て、バスケットボールと薬学の「文武両道」をめざそうと決意したのです。
薬学部に入って5年生になったとき、地元チームの「広島ドラゴンフライズ」とプロ選手契約を結びました。薬学生としての授業や研究に加え、選手としての練習やトレーニング、遠征などをこなすのは大変で、2年間ほぼ休みはありませんでした。ただ、この経験から身に付けた時間管理能力は、現在でも大いに役立っています。
プロ選手として活動するなかで、より身近になったのがドーピングの問題です。日本では意図的なドーピング事例は比較的少ないものの、市販薬やサプリメントの成分がドーピング判定されてしまう事例が少なくありません。僕自身、天皇杯(※)で準優勝したときは抽選でドーピング検査の対象となりましたが、かなりの不安を覚えました。薬学の専門知識がない選手たちはなおさらで、それ以降、意識的にチームメイトなどの相談に乗るように心がけました。

無事に薬剤師となった後、2018年には日本アンチ・ドーピング機構による公認スポーツファーマシストの認定も得ました。プロ選手として現役引退した今は、ドラゴンフライズユースのコーチをしながら、現役アスリートに向けてドーピング問題の啓発活動にも力を入れています。
プロ選手であればチームドクターなどから情報を得られる機会もありますが、アマチュア選手の置かれた状況は厳しいもの。「先輩が飲んでいたから…」といった理由で安易に摂取したサプリメントが原因で、選手生命を絶たれてしまう可能性もあるのです。プロ経験者としてスポーツ選手の気持ちに寄り添い、的確な情報提供ができる薬剤師でありたいと思います。
海外の医薬品なども手軽に個人輸入できる時代となり、ドーピングに関する知識はスポーツ選手にとって必須になりつつあります。薬剤師の活躍の場はスポーツの現場にも必ず広がっていくはずです。この分野に興味がある薬学生の皆さんも少なくないと思います。ぜひ一緒に未来を切り拓いていきましょう。

岡崎 修司さん

岡崎 修司さん

2017年、広島大学薬学部卒業。大学在学中よりプロバスケットボールチーム「広島ドラゴンフライズ」とプロ選手契約を結ぶ。現在はプロ選手を引退し、同チームのアンバサダーやユースチームのコーチを務めるほか、スポーツに精通した薬剤師として活動。2018年、株式会社GRITを設立。2021年よりドラゴンフライズGM(ジェネラルマネージャー)就任。