HDN Japan配信記事

生後1歳までの間にRSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)に感染した子どもは、喘息の発症リスクが有意に上昇する可能性のあることが明らかになった。米ヴァンダービルト大学喘息・環境科学研究センターのTina Hartert氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Lancet」に4月19日掲載された。
RSウイルスは、乳幼児での咳や喘鳴を伴う下気道感染症である細気管支炎の主な原因ウイルスだ。研究グループによると、ほぼ全ての子どもが2歳までにこのウイルスに感染するという。RSウイルスに感染しても、現れる症状はほとんどの子どもで軽く、通常1週間程度で改善する。しかし、特に早産児や低年齢児、慢性肺疾患や先天性心疾患を持つ子どもが感染すると、重篤化して死に至ることがある。
今回の研究では、米テネシー州の11カ所の小児病院で2012年6〜12月、または2013年6〜12月の間に出生した健康な乳幼児を対象にしたコホート研究から1,946人を抽出し、生後1年間におけるRSウイルス感染と小児喘息発症との関連を検討した。1,946人のうち、生後1年間でのRSウイルス感染に関するデータがそろっていたのは1,741人(89%)で、このうちの944人(54%)にRSウイルス感染歴のあることが確認された。その後、対象者を追跡し、5歳時に喘息を持っているかどうかを確認した。
その結果、5歳時に喘息を持っていた子どもの割合は、生後1年間にRSウイルスに感染したことがある子どもで21%(139/670人)だったのに対して、感染したことのない子どもでは16%(91/587人)であった。性別や人種/民族、母乳育児の有無などの因子を調整して解析すると、RSウイルスへの感染歴のない子どもでは、5歳時に喘息を持っているリスクが感染歴のある子どもよりも26%低いことが示された(調整相対リスク0.74、95%信頼区間0.58〜0.94、P=0.014)。
研究論文の筆頭著者である、同大学のChristian Rosas-Salazar氏は、「われわれの研究では、正期産で出生した健康な子どもが生後1年間、RSウイルスに感染しないようにすることで、米国では小児の8%が罹患している喘息のリスクを大幅に下げられることが示された」と話す。
Rosas-Salazar氏はまた、「この研究で生後最初の1年間に焦点を当てたのは、この時期が呼吸器系と免疫系の発達において重要な時期であるからだ」と説明。「この間にRSウイルスに感染すると、発達途上にある呼吸器系と免疫系に異常が生じ、それが喘息の原因になる可能性がある」との見方を示している。
小児喘息に対するRSウイルスワクチンの有効性が示されれば、公衆衛生上の関心も高まり、ワクチン接種を受ける人も増えるだろう
Rosas-Salazar氏は、「この研究結果がきっかけとなって、ワクチンやモノクローナル抗体など、RSウイルス感染症の重症度を低下させる予防薬の臨床試験で対象とされている子どもたちに生じた一般的な呼吸器疾患が長期にわたって追跡調査されるようになることを期待している」と述べている。一方Hartert氏は、「小児喘息に対するRSウイルスワクチンの有効性が示されれば、公衆衛生上の関心も高まり、ワクチン接種を受ける人も増えるだろう」と話している。(HealthDay News 2023年4月25日)
https://consumer.healthday.com/asthma-in-kids-2659901547.html
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