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官公庁・公社・団体業界

業界の現状と展望

官公庁・公社・団体業界とは

法人とは、法律によって人と同じ権利や義務が認められた組織のこと。法律行為など行うことができ、公的な業務を行う「公法人」と私的な業務を行う「私法人」に大別される。公社・団体は、民間企業のような組織形態でありながら公的な業務を手がけているのが特徴で、「公法人」に分類され、公益社団法人公益財団法人独立行政法人などがある。

一方の「私法人」は、「営利法人」と「非営利法人」に大別され、株式会社や合同会社(LLC)は「営利法人」に、一般社団法人一般財団法人NPO法人(特定非営利活動法人)などが「非営利法人」とされる。

また、官公庁とは、国と地方公共団体の役所を指し、中央省庁や裁判所、国会なども含む。国には内閣府や財務省、外務省などの中央官庁があり、それぞれが国全体に関わる重要な行政に携わり、地方公共団体では、都道府県や市区町村といった単位で、それぞれが連携しあい、日常生活に即したさまざまな行政サービスを提供している。

なお、公社や団体を広く「特殊法人」と呼ぶ場合もあるが、総務省によれば、特殊法人とは、「特別の法律によって独立の法人を設け、国家的責任を担保するに足る特別の監督を行うとともに、その他の面では、できる限り経営の自主性と弾力性を認めて能率的経営を行わせようとする法人をさします」とある。代表例として、日本中央競馬会(JRA)や日本放送協会(NHK)、NTTグループ、日本たばこ産業などがある。

業界の仕組み

官公庁のうち中央省庁に属するのは1府13省庁で、内閣府・デジタル庁・復興庁・総務省・法務省・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省・防衛省で構成されている。これら省庁に勤務するのが国家公務員一般職で、大臣、大使、裁判官、自衛官などは特別職と呼ばれる。なお、2023年4月に発足するこども家庭庁は、総理大臣直属の機関として、内閣府の外局に位置づけされる。

地方公務員とは地方公共団体や各都道府県警察、学校などに所属し、国家公務員同様特別職一般職に分かれる。特別職は知事や市町村長、議会の議員などで、それ以外の地方公務員はすべて一般職である。

なお、一般職特別職の大きな違いは、国家公務員においては国家公務員法が、地方公務員においては地方公務員法が適用されるかどうかで、特別職の場合は別途の法律が適用される。

公社・団体の代表例には、前述した公益社団法人公益財団法人独立行政法人がある。それぞれの公益法人は、一般社団法人一般財団法人(一定の財産に対して法人格が与えられた団体)のうち、法律に基づいた公益性が認定された法人のことをいう。いずれの公益法人も、学術および科学技術の振興や高齢者の福祉の増進など、法律で認められた23の公益目的事業を目的としている法人でなければならない。

独立行政法人の多くは、中央官庁から独立し、業務の効率性や専門性を高めることを目的に設立された法人で、財務省所管の造幣局や内閣府所管の国立公文書館などがある。国立大学法人も広義の独立行政法人と見なされている。

業界の現状と展望

公益法人への就職を目指す場合は、民間企業と同じような就職活動を行う必要がある。ただし、小規模な団体が多く欠員補充が多いとされている。国家公務員や地方公務員の場合は、それぞれが実施する公務員試験の合格が求められるのが通常
国家公務員の採用試験は人事院が毎年実施しており(外務省は独自で試験を行う)、大きく分けて、総合職試験一般職試験専門職試験経験者採用試験の4種類がある。

公務員の魅力は、公共の奉仕者として、国や地域を良くしたいという気持ちを持って、利益を目的とすることなく、大きなスケールの仕事に携われること。給与面は民間企業よりも高めとされ、大規模なリストラや大幅な給料カットも想定しにくいため、不況に強く人気が高いと言われていた。
しかし、仕事に対する価値観も変わりつつある近年、「長時間労働で転勤も多い」という仕事のイメージもあって、公務員に対して以前ほどの魅力を感じない人が増えつつある。取組むべき課題として、勤務時間や上意下達的体質の改善などの働きやすさ、やりがいの向上、業務量に応じた人員配置、業務の効率化、キャリアパス形成の支援など、職員の能力を存分に引き出し、組織としてのパフォーマンスを発揮できるマネージメントが求められている。

中でも、国家公務員は、地方公務員や大手民間企業との競合も激しく、優秀な人材の確保が難しくなりつつある。キャリアと言われる国家公務員採用総合職試験(大学卒業程度)では、2022年度の申込者数は前年度比6.8%増の1万3,674人と、6年ぶりに増加した。院卒者試験の申込者数は同9.6%増の1,656人なった。近年は、女性の申込者が増加しており、院卒者試験が495人、大卒程度試験が5,821人で、全体の申込者の41.2%を占め、過去最高となった。

また、今回新たに設けられた「デジタル」区分の申込者数は、院卒者試験と大卒程度試験を合わせて207人となった。特に、IT部門を中心に専門的な知識や経験を十分に備えた職員が不足するなど、人材確保は解決すべき喫緊の課題となっている。鳴り物入りで発足したデジタル庁も、ITに強い民間人を積極採用したものの、離職者が相次ぎ、初代デジタル監(デジタル大臣に意見具申し、部局や機関の事務の監督も行う)も8カ月で退任するに至っている。新卒者を定期的に採用して教育することに加えて、民間企業などでの実務経験や知見を有する人材を官民の垣根を越えて積極的に登用するといった施策を行うだけでなく、いかに人材を定着させるかという対策も不可欠だ。

業界関連⽤語

専門スタッフ職

2008年度から導入された、一般職の国家公務員の新しい職種で、これまで培ってきた特定分野の高度で専門的な知識・経験を生かして調査・研究・情報分析などを行い、政策の企画・立案を支援する業務に当たる。局長、課長、課長補佐といったいわゆるラインのポストと異なり、部下を持たないが、「○○情報分析官」や「○○政策研究官」、「○○国際交渉官」などとして定年まで勤務できる。ラインを外れた人材の天下り防止対策という狙いもある。

特殊法人

政府が行おうとする事業のうち、その業務が企業的経営になじんでおり、通常の行政機関に担当させても各種制度上の制約などから能率的な経営を期待できないと判断される場合に、特別の法律によって設けられる独立法人。主なものには、日本放送協会、日本年金機構、商工組合中央金庫、日本中央競馬会などがある。

民営化

役所やその一部、または役所の外郭団体を、民間企業の形に組織替えすること。 政府100%出資の株式会社(特殊会社)の株式を売り出していくこともある意味で民営化となり、政府保有株がなくなったことを「完全民営化」という。

キャリア

国家公務員採用試験の総合職合格者で、幹部候補生として中央省庁に採用される者の俗称。いわゆる「官僚」。 そのほかの一般職員(ノンキャリア)と区別され、より早いスピードで出世し、高いポストを得るといわれるが、明確な制度があるわけではなく、各省庁による違いも大きい。 キャリア公務員の頂点といわれるのが事務次官(ただし、外務省は駐米大使、法務省は検事総長の方が上だといわれている)。

どんな職種があるの︖

国家公務員
国家公務員とは、公務員のうち、1府13省庁からなる中央省庁の行政府や裁判所などの司法府、衆議院や参議院などの立法府といった国家機関や、行政執行法人(造幣局や国立公文書館など)で勤務する人たちのこと。

地方公務員
地方公務員とは、公務員のうち、都道府県庁や市役所、区役所、町役場など地方公共団体(地方自治体)で勤務する人たちのこと。公立学校の教員、警察職員、消防職員も含まれる。

警察官・自衛官
警察官・自衛官のうち、警察庁あるいは都道府県警察に勤務し、人々の生命と財産、社会の安全と秩序を守るのが警察官の仕事で、陸海空の各自衛隊に勤務し、日本の平和と独立を守り、国民の安全を保つのが自衛官の仕事。

消防士
消防士は、「火災」の通報を受けた際にいち早く現場に急行し、現場の被害を最小限に抑え延焼を食い止めるとともに、現場から逃げ遅れた人や近隣住民の救助などを行う。

公立学校教員
公立学校教員は、全国の公立幼稚園、小学校、中学校、高等学校などで生徒に授業を行う。正式には教育公務員といい、地方公務員のうち3割強を占める。

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※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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