業界研究・職種研究徹底ガイド 業界研究

クレジット・信販・リース・その他金融業界

業界の現状と展望

加盟店からの手数料やキャッシングが主な収入源

加盟店からの手数料やキャッシングが主な収入源

クレジット・信販・リース業界は、消費者が商品やサービスを購入するときの代金を消費者に代わってさまざまな方法で立て替え払いする分野。手持ちのお金がないときにも、クレジットカードがあればモノを購入したり、銀行やコンビニのATMでキャッシング(現金の借入)をすることができる。
その際、クレジット会社は、一時的に立て替えた金額の数%を加盟店から手数料として徴収する。一方で、カード利用者からは年会費、リボルビング払い手数料キャッシング旅行代理店業などの付帯サービスの売上から利益を得ている。

個人消費の回復に伴ってカード利用は成長軌道に

日本クレジット協会によれば、2022年3月末時点のクレジットカード発行枚数は、3億101万枚で、前年同時期比1.9%の増加となった。成人1人当たり3枚近く所有していることになる。 デパートやホテルはもちろん、スーパーマーケットやコンビニなどでの少額の買い物でも気軽に利用できるほか、ネット通販では購入手続きと同時に支払手続きが完了する利便性からクレジットカード決済が多い。

近年では、各社が独自のサービスを提供したり、還元したポイントを共通化して他社でも使えたりとさまざまな工夫をしている。また、クレジットカードだけでなく、デビットカード電子マネーへの対応に加えて、QRコード決済モバイル決済など、キャッシュレス化を推進する店舗が増えた。
電子マネーQRコード決済などのコード決済が増えれば、自動的にカードの取扱高も増えるので、取扱高は今後も成長が続くことになるだろう。コロナ禍で一時的に、クレジットカードによるショッピングは減少したものの、2021年には前年比9.9%増の69兆6,066億円とカード取扱が復活。


一方で改正貸金業法の施行で総量規制が導入された。多重債務者救済のために、個人が借り入れできる総額を制限するもので、借り入れ(キャッシング)は年収の3分の1と定められている。日本貸金業協会の統計資料によれば消費者向け無担保貸付のうち約半分がクレジット業態(キャッシング付きクレジットカードやローンカード)となっており、クレジットカード業界でも対応を迫られた。
2021年は、1月~4月までは大きく前年を下回っていたこともあり、年間では2.3%減の1兆2,956億円となったが、2022年は1月~11月はいずれも前年同月を上回っている。

カード会社は大手だけでも20社以上が乱立しており、それぞれの会社が自前のシステムを構築するなど高コスト体質が指摘されている。さらに、キャッシュレス決済の加速で、手数料など決済手段の多様化に関するコストは加盟店が負担しており、クレジットカード会社間の手数料が公開されておらず不透明との指摘もある。政府も手数料開示を進める動きを見せており、業界再編を含めシステムの共有化などの効率化が進む可能性を唱える声もある。

企業のあらゆる動産を取り扱うリース業界。生き残りをかけた業界再編も

矢野経済研究所のリース市場に関する調査によれば、リース業界は、コロナ禍で2020年度、2021年度と2年連続で取扱高が減少したが、2022年度はESG脱炭素への対応に向けた設備投資復調の兆しがあり、取扱高も回復しそうだ。ただし、2022年度は前年度比15.0%増の4兆8,500億円まで回復すると見込んでいるが、2023年度は前年度の反動で4.1%減の4兆6,500億円と減少。2025年度は4兆8,000億円まで再び復調すると予測している。

リース業界はこれまでも再編を繰り返しており、今後も事業領域の拡大と生き残りをかけて、資本提携合併といった動きが加速する可能性がある。2021年は三菱UFJリースと日立キャピタルの合併や、三井住友ファイナンス&リースが不動産ファンド大手のケネディクスを子会社化といった事例があったが、2022年もこうした動きは活発だ。2022年5月に三井住友ファイナンス&リースが、欧州の航空機リース会社を15億ドル(1ドル130円で1950億円)で買収すると発表。また、2022年6月には、三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の東銀リースは、三菱UFJ銀行、農林中央金庫、東京センチュリーの4社間で資本業務提携を結んだ。今後も、業界再編や提携が進むのかが注目される。

なお、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、ロシアに駐機していた航空機が差し押さえられ、取り戻すことができないでいる。さらに、リース会社と保険会社との間でも、見解の相違があり、保険金も受け取れない状況が続いている。日本の企業でも、ロシアの航空会社に機体をリースしている会社もあり、業績の重荷になる可能性もある。

引き続き縮小が見込まれる消費者金融

引き続き縮小が見込まれる消費者金融

「その他金融」には、一般個人に無担保で融資を行う消費者金融や、特定の商品を将来の一定の日時に一定の価格で売買することを現時点で約束する商品先物取引などがある。
消費者金融業界では、1993年に業界初の株式上場企業が誕生して以来、業界の知名度は著しく向上、利用者も増加した。しかし2006年12月に改正貸金業法が成立(完全施行は2010年)すると、多くの業者が新規貸し付けの審査を厳格化。徐々に市場規模は縮小してきた。しかし、2016年3月末を底に貸付残高は持ち直しつつある。銀行やカード会社の残高は減少傾向にあるものの、消費者金融会社の残高は増加傾向にある。

金融庁「貸金業関係資料集(2021年版)」によると、1986年のピーク時には4万7,504社あった貸金業者は、2021年3月末には1,638社にまで減少。また、1999年3月末に54兆5,309億円あった貸付残高(消費者向けは約16兆円、事業者向けは約38兆円)は、2016年に21兆9,252億円まで減少した。その後は徐々に増加傾向にあり、2022月3月末には、前年比6.4%増の35兆1,007億円となった。なかでも、コロナ禍の影響で、2021年と2022年は、事業者向貸付残高が例年以上に増加したことが要因だ。貸付先の所得の減少や事業休止により返済余力が低下するといったリスクは懸念材料だ。

なおコロナ禍で、借入は例年以上に増加しており、2021年3月末時点では前年比23.0%増となった。ただし、貸付先の所得の減少や事業休止により返済余力が低下するといったリスクは懸念材料だ。

資本主義経済に不可欠な商品先物取引業界

商品先物取引とは、穀物、繊維、原材料、エネルギー資源など国民生活や企業経営において欠かすことのできない物質を、将来の一定期日に買ったり売ったりすることを約束して行う取引のこと。価格は取引を行う時点で決め、この価格が実際の取引における価格指標として活用される。
価格変動から生じるリスクを回避する手段として、資本主義経済に不可欠な存在とされている。取扱商品品目の拡大などを背景に、近年、市場は拡大を続けている。
コロナ禍で、商品先物相場も混乱したが、値動きが激しくなるほど、リスクを回避しようとするいわゆるヘッジ需要が膨らむため、取引自体は活性化した。また、2022年にはアメリカで大幅な利上げが行われており、為替が短期間で円安に振れるなど、一つのニュースが、相場をこれまで以上に大きく上下に動かす可能性は常にあり、注視が必要だ。

業界関連⽤語

リースとレンタルの違い

リースもレンタルも、いずれも貸主が物品を購入し借主に貸し出す賃貸借契約だが、契約期間や契約内容においてさまざまな違いがある。大きな違いは、リースの場合は借主のニーズに応じて物品を購入するため新品が提供されるが、レンタルの場合はレンタル会社が所有している物品を貸し出すため、中古品の場合がほとんどということ。また、一般的に、中長期に利用する場合はリース契約を、1日や1週間といった短期利用の場合はレンタル契約を行う場合が多く、同じ物品なら、利用料はリース契約の方が割安に設定されている。

ただし、一日から長期まで、社員の増減に応じて臨機応変の対応ができることや、資産管理の手間が省けるなどの理由もあって(リースの場合は資産管理台帳を作成し全てのリース物件を個別に管理しなければならない)、これまではリース契約が多かったパソコンを中長期のレンタルで貸し出すケースも増えている。また、カーシェアリングや自転車シェアリングもレンタルに含まれる。

フィンテック

金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、スマートフォンなどを使った決済や資産運用、ビッグデータ人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービスのこと。

フィンテック企業の老舗としては、PayPalがよく知られていたが、いまでは、Apple PayやGoogle Pay、中国アリババグループの決済手段であるAlipay、中国テンセントのWeChat Payなどが台頭。スマートフォンユーザーを中心に利用者は急拡大している。国内でもLINE PayやPay Payなど、各社が進出、百花繚乱状態だ。各社がフィンテックに注力するのは、利便性向上もさることながら、ビッグデータとしてユーザーの消費動向が把握できることがある。さらに、取引を補足することで脱税を防ぐといった意味もある。

外国証拠金取引

担保となる資金(証拠金保証金)を取扱会社に差し入れることで、24時間リアルタイムで通貨の売買を行う取引。「FX(Foreign eXchange)」といわれることも多い。取扱会社によって異なるが、5~10万円程度の保証金で売買が可能となる。

実際の売買では、保証金の数倍から数十倍の取引ができるので、少額の資金で大きな利益を得ることもできるが、大きな損失を出すこともあり、リスクの高い取引である。かつては、証拠金に対して100倍を超える取引ができる会社もあったが、現在は一律で25倍に規制されている。金融庁では、相場変動に対する健全性を評価し、今後は事業者ごとに25倍の上限を引き下げていく方針だ。

BNPL

BNPLとは、「Buy Now Pay Later」の略で、文字通り今買って後で支払う、後払いのこと。近年クレジットカードに代わるサービスとして、ECサイト利用者から注目を浴びている。クレジットカードと同様、決済手数料は加盟店が負担するが、分割手数料が無料になることがクレジットカードと大きく異なる※。コロナ禍でECサイトの利用者が増えていることや、クレジットカードがなくてもECサイトで買物ができること、分割手数料が無料なことなどもあり、利用者は拡大傾向にある。スウェーデンのKlarna、米国のAffirm、オーストラリアのAfterpayといったフィンテック企業が市場拡大を牽引している。矢野経済研究所の調査によれば、BNPL市場は堅調に拡大しており、2022年度の取扱高は1兆3,290億円と推計。2025年度には1兆9,090億円に拡大すると予測している。


※サービスを提供する企業によって、また分割回数や使うサービスによって異なる。また支払いが遅延した場合などに手数料が発生することもある。

NFT

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本では「代替不可能なトークン」や「非代替性トークン」などと呼ばれている。これまでのデジタルデータは、コピーや改ざんが容易だったこともあり、ネット上に氾濫するデジタルデータには、希少価値が無いに等しかった。
しかし、代替できない唯一無二のデータであるNFTは、ブロックチェーン上に所有権が明確化されているため、オリジナルのいわゆる一点モノであることが証明される。誰もが自分が描いた絵画や写真などにNFTを発行して、NFTマーケットプレイスで売買することも可能になる。ただし、売買が成立しても、得られるのは所有権で、著作権まで譲渡されることはほとんどない。

国内では法的な定義や販売ルールなどが明確に定められておらず、一度の取引が高額になることもあるNFTは、マネーロンダリングの面からも悪用される可能性を指摘する声もある。

ナンバーレスカード

クレジットカードのセキュリティ対策のため、文字通り、券面にカード番号などの印字がないカードのこと。裏面にカード情報が集約された片面だけがナンバーレスのカードと、両面から印字をなくした両面(完全)ナンバーレスカードの二種類がある。片面ナンバーレスカードは、表面にカード番号などの情報がないため、覗き見などのリスクが減少する。
ただし、裏面にはカード情報が記載されているので、紛失や盗難では従来のカードと同様のリスクがある。一方の両面ナンバーレスカードは、スマホアプリと連動して使うことを想定しており、盗難や紛失時にも不正利用のリスクは大幅に減少する。

どんな仕事があるの︖

クレジット・信販・リース業界の主な仕事

・加盟店営業
飲食店や衣料品店などに自社カードの提携を勧めたり、加盟店に対してカード利用が増えたりするような施策・提案を行う。

・与信管理
クレジットビジネスにつきもののリスクを最小限に食い止めるための仕事。カード申込者に対して自社および信用情報機関に蓄積されたデータを利用して、返済能力があるか審査を行う。

・システム開発
経営支援システムをはじめとした社内業務システムの運営や、セキュリティー対策の考案・実施などを行う。

・債権管理
支払期日を過ぎても支払われなかった債権に対して、その債務者に支払いを促す。支払いが困難な債務者には、現実的に支払える返済計画を提示するなどのアドバイスも行う。

その他金融業界の主な仕事

・営業
顧客の資産運用の提案が主な業務。先物相場は政治、経済、さらに農作物は天候にも左右されるので、幅広い分野での情報収集が求められる。

・営業支援
消費者金融業界では、窓口で融資の受付や相談を行う一方で、ネットやFAX、コールセンター受付分の申込などを整理する。また、必要に応じて信用情報機関への問合せも行う。

・債権回収
貸し付けたお金の回収を行う業務。支払期日を過ぎても支払われなかった場合に、ルールにのっとって電話で返済を催促したり、催促状を作成して郵送したりする。

クレジット・信販・リース・その他金融業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

業界研究・職種研究 徹底ガイド

ページTOPへ