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電子・電気・OA機器業界

業界の現状と展望

コロナ禍の特需は一服。今後は、高価格でも売れる高機能製品がポイントか

電子・電気機器業界では、生活に必要な家電や電気用品をさらに便利、快適にするための研究・開発が日々重ねられ、次世代向けの商品が、消費者や企業向けに企画、販売されている。

一般社団法人電子情報技術産業協会の「2022年民生用電子機器国内出荷統計」によれば、2022年の民生用電子機器(映像機器・オーディオ関連機器・カーAVC機器)の国内出荷実績金額は1兆2,492億円で、前年比4.8%減となった。
在宅勤務巣籠もり需要が一段落したことや、カーAVCでは、半導体などの部品不足や上海でのロックダウンなどの影響を受けて、自動車生産が計画通り進まなかったことも影響した。
一方、一般社団法人日本電機工業会によれば、2022年の民生用電気機器(冷蔵庫やエアコン、洗濯機などのいわゆる白物家電)の国内出荷金額は2兆5,724億円で、前年比2.0%増と2年ぶりのプラスとなった。上海ロックダウンの影響はあったものの、各社は解除後の生産・供給の正常化を進めることで、影響を少しでも抑え込むことに注力した。
ただし、台数ベースでは、前年比で減少している製品が多い。記録的な猛暑が後押ししたルームエアコンでも、台数ベースでは前年比で3.3%減の905万9千台。前年を上回ったのは、IHクッキングヒーター(前年比3.2%増)と電気シェーバー(同4.8%増)のみで、電気冷蔵庫(同2.6%減)や電気洗濯機(同6.0%減)、電子レンジ(同4.3%減)、ジャー炊飯器(同2.8%減)は、いずれも台数ベースでは前年を下回っている。これは、原材料や輸送費などの高騰による製品単価上昇の影響が大きく、年間では1991年に次ぐ過去2番目の低い出荷金額となった。

現状では中国と韓国がリードする蓄電池業界。ポストリチウムイオン電池で盛り返したい日本勢

これまでは、リチウムイオン電池は、スマホやパソコン、家電製品などが主な用途だったが、今ではHVEVといった車載用が主流になりつつある。リチウムイオン電池は、リチウムコバルトニッケル等のレアメタルを使用するため原材料費が高く、EVでは製造コストの3分の1を電池が占めると言われている。現状では、中国と韓国がリチウム電池の生産をリードしており、そのため、電子・電気機器業界ではレアメタルの安定的な確保と同時に、リチウム電池に続く、ポストリチウムイオン電池の研究開発に余念がない。
自動車業界が実用化を加速している全固体電池、正極に硫黄を使用するリチウム硫黄電池フッ化物電池(金属)空気電池、貴重で高価なレアメタルを使用しないナトリウムイオン電池など次世代電池の候補は多い。現状ではリチウムイオン電池が主流だが、価格面の問題だけでなく、安全性(自然発火や、寒さや暑さに弱いなど)にも課題があり、巨大な市場をめぐって大手からベンチャーまで世界中の企業がしのぎを削っている。

堅調な半導体需要。さらなる需要拡大も期待

需給逼迫は一服するが、中長期では半導体の自社開発も含めた戦略的見直しも必要

産業の米も言われる半導体。世界半導体市場統計(WSTS=World Semiconductor Trade Statistics)によれば、2021年はコロナ禍の影響があったものの、5Gスマートフォンの生産拡大や、在宅勤務や巣籠もり需要に伴うパソコンやデータセンター、その他関連機器の需要が増加。前年比26.2%増の5,559億ドルとなった。2022年の半導体市場は、自動車生産の回復や産業用機器は堅調だったが、在宅勤務による特需が一段落。中国の大都市でのロックダウンが続き、物流や生産が混乱したことや、長期化が懸念されるロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあった。年後半は個人向け電子機器需要が低迷。メモリ部門が前年比12.6%減の194億ドル減少したこが影響し、トータルでは前年比4.4%増の5,801億ドルと、成長が鈍化すると見込んでいる。
2023年については、5GIoT化の進展、データセンターの能力拡大、自動車のEV化や高性能化、再生可能エネルギー投資など半導体需要は底堅いと見ているが、2022年同様にメモリ分野の減少を見込んでいる(前年比17.0%減)。トータルでは、前年比4.1%減の5,566億ドルと予測している。なお、日本市場については、為替が円安に振れたこともあり、2021年は前年比23.4%増の4兆8,038億円(1ドル110.0円と想定)、2022年は同30.7%増の6兆2,785億円(1ドル130.6円と想定)、2023年は同6.2%増の6兆6,684億円(1ドル138.1円と想定)と予測している。

周回おくれの日の丸半導体。将来を見越した巨大な投資が求められる

短期的には世界市場の減少が見られるが、米中対立やロシアのウクライナ侵攻を経験した現在、半導体は重要な戦略物資の1つとみなされている。TSMCやサムスン電子、インテル、IBMなどはアメリカ各地で数兆円単位の投資を行うことを明らかにしている。アメリカ政府も、国内での半導体生産や研究開発などに7兆円以上の政府予算を投じる法律が成立している。
日本国内においても、経済産業省を中心にファウンドリー(半導体製造を専門に行う会社)最大手のTSMCを熊本に誘致。当初の設備投資額は約70億米ドル(1ドル130円で9,100億円)と言われており、日本政府も、最大4,760億円の補助金を支給している。2025年までの生産開始を目指している。
また、2022年11月に、トヨタ自動車やNTT、ソニーグループなど国内企業8社が出資し、新しい半導体製造会社「Rapidus(ラピダス:ラテン語で速いという意味)」を設立。政府も700億円の補助金支給を決定しており、官民で最先端の次世代半導体の国産化を目指すことを明らかにした。かつては世界を席捲した日本企業だが、徐々に競争力を失い、日本の半導体は20年近く遅れていると言われている。ラピダスでは、これまで十分に連携できなかった海外メーカーとの連携も強化し、回路の線幅が2ナノメートルの半導体の製造ラインを確立。2027年をめどに2ナノメートル単位の半導体の量産化を目指している。

厳しい環境ながら既存事業の改善で収益を向上

厳しい環境ながら既存事業の改善で収益を向上

OAとは、Office Automation(オフィスオートメーション)の略。OA機器業界では、オフィスでの業務を効率化・自動化する、コピー機やFAX、プリンタといった機器の研究開発、販売を行っている。
オフィス作業の効率化・自動化はあらゆる企業にとって欠かせない。日本メーカーのOA機器は高性能で高品質との評価が高く、これまで世界中のオフィスに導入されてきた。ただし、IoTの進展や導入、ペーパーレス化の動きもあり、OA機器を巡る状況は厳しい。

また、コロナ禍にあって、在宅勤務などテレワークが浸透。オフィス向けの事務機器需要を押し下げた。一方で、自宅で使えるコンパクトなプリンタやスキャナ、コピー機への需要が急拡大するというビジネス環境の変化もあった。
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会の事務機械出荷実績によれば、2022年の1〜6月までの事務機器の国内外を合わせた出荷金額は前年同期比10.2%増の8,047億円となった。国内向けは、同0.2%増の1,854億円、海外向けは好調で同13.6%増の6,193億円だった。
金額比率の高い、複写機・複合機は国内外合わせて前年同期比で2.5%増と堅調、ページプリンター(MFP:複数の機能を持つプリンター)は同19.9%増、ページプリンター(SEP:プリント機能のみのプリンター)は同 22.5%増、ビジネスインクジェットプリンターは同24.0%増、大判インクジェットプリンターは同 8.2%増、データプロジェクターは同17.1%増、電卓&電子辞書は同15.22%増、シュレッダーは同16.4増で、減少したのはECR/POS(金銭登録機)の同23.4%減、同14.7%減のデジタル印刷機だけだった。
各社はすでに、従来の箱(ハードウエア)を売って、トナーやインクなどの消耗品で収益を上げるというビジネスモデルから、事業規模や内容に合わせた機器の提案、導入、メンテナンス、サポートまでをトータルに行うソリューション販売へのシフトを目指している。ペーパーレス化の加速もあり、データの記録や保管といったIT支援サービスも求められており、様々な機器やソフトウエアとの連携を強化して、効率的で最適なビジネス環境を構築するソリューション需要は増大すると見られている。

業界関連⽤語

MEMS(メムス)

Micro Electro Mechanical Systemsの略で、センサーアクチュエーター(モーターやシリンダーなど、電気信号やエネルギーを物理的運動に変換するもの)、電子回路などを、シリコンウェハーなどの上に作り込んだ超小型システムで、半導体製造技術を応用した微細加工技術で作られる。平面状に電子回路を集積するLSI(大規模集積回路)と異なり、立体的に積み上げることで、電気的な機能に加えて機械的な機能を組み込むこともできる。自動車やスマートフォン、ゲーム機、医療機器など、幅広い業種の製品への採用が急増しており、市場規模も拡大している。次世代産業を支える技術の一つとしての期待も大きい。

量子コンピューター

実用化に一歩近づいた次世代コンピューターの一つ。一般的なコンピューターでは、すべてのデータを「0」と「1」の2種類の信号で表しデータ処理を行うが、量子コンピューターでは、これまでとは全く異なる量子力学的な動作原理を活用し演算プロセスを実現する。
そのため、「0」と「1」が共存した状態で同時にデータ処理を行え、スーパーコンピューターをはるかにしのぐ、大量データを一度に処理することが可能になるとされる。

TEC値

TECとは、Typical Electricity Consumption(標準的な電力消費)のことで、省エネ基準として使用されている値。プリンタ・複合機を、午前4時間(15分×16回)と午後4時間(15分×16回)の2回稼働させた場合の、スリープ時の電力+プリント時の電力+レディ時の電力を1日とし、1週間(5営業日 + 週末)トータルした積算電力量がTEC値となる。単位はkWh/週。国際エネルギースタープログラムの基準となるため、各社はTEC値を下げるための改良を常に行っている。

AI半導体

AI(人工知能)のためにつくられた専用半導体部品。コンピューターに搭載されるCPUGPUは年々高性能になっているが、ビッグデータブロックチェーンAIなどの大規模演算を行うには処理能力が追いつかなくなってきている。
そこで登場が待たれるのが、GPUのようにCPUを補助し、AIの演算を行う専用チップ(AI半導体)。将来的に急拡大する市場と見込まれており、各社が激しい開発競争を繰り広げている。

EUV露光装置

露光装置とは高度な光技術で半導体の回路をシリコンウエハーに印刷するための機械。半導体は回路幅を微細化するほど処理能力を高めることができ、最先端の半導体では回路の線幅を3ナノメートル(ナノは10億分の1)まで微細化した半導体を量産している。EUV露光装置は、極端紫外線と呼ばれる非常に短い波長の光を用いた装置で、従来の技術では加工が難しい20ナノメートルよりも微細な回路の加工を可能にしている。現在、こうした微細加工ができるEUV露光装置はオランダのASML社の独占状態にあり、いずれ理論的限界とも言われる2ナノメートルの半導体も登場してこよう。国内企業8社が出資して設立した、半導体製造会社「Rapidus(ラピダス)」は、最先端の次世代半導体の国産化を目指すことを明らかにしており、2027年をめどに2ナノメートルの半導体の製造ラインを確立し量産化を目指している。

EMS・OEM・ODM

EMSは、Electronics Manufacturing Servicesの略で、電子機器の製造を受託するサービスを意味する。親会社の指示で製造業務に特化した「下請け」とは異なり、契約を基に量産規模でロット生産を行う。資材や部材の決定や調達、設計、配送など製造以外の工程を行うこともあり、鴻海精密工業など台湾企業が上位を占めている。OEMは、Original Equipment Manufacturingの略で、設計などは自社ブランドを持つ発注元が行い、製造だけは発注先が行うケース。日本では、相手先ブランド名製造とも言われる。ODMは、Original Design Manufacturingの略で、相手先ブランドによる製品を手がけるのはOEMと同じながら、企画・設計の段階から製造までの一連の工程を請け負う、OEMの発展形。

スピントロニクス

エレクトロニクス(電流や電圧を信号や情報として利用する技術)と、電子が持つ磁石の性質(スピン)を同時利用する技術がスピントロニクス。従来のエレクトロニクスとスピントロニクスの技術を融合することで、高性能で省電力と言った、これまでの半導体の限界を超える新しい半導体が登場することが期待されている。様々な電子機器の性能を桁違いに向上させることができる技術として、注目されている。

どんな仕事があるの︖

電子・電気・OA機器業界の主な仕事

・営業
自社商品を、顧客である販売店や企業に提案・販売するほか、販売店には新商品の売り方、売り場づくりなども提案する。

・企画
マーケティングデータや世界情勢などを分析し、新しい商品やサービスを企画する。

・資材調達/購買
世界各地の製造工場からのニーズを取りまとめて、国内外から材料となる素材や部品を仕入れる。

・マーケティング
コールセンターなどに寄せられる意見や要望、市場調査などを踏まえて、ユーザーがどんな商品、機能を求めているのかを分析し、商品企画や開発につなげる。

・システム/ネットワークエンジニア
主に企業向けに、自社商品の使い方やネットワーク構築の提案や技術的なサポートを担当する。

・商品開発
既存商品を改善するほか、新商品の企画を立てて、試作や開発を行う。

・基礎研究
次世代向け製品に役立てるため、最先端技術の研究を行う。

・生産管理
スケジュールや計画を立てて、スムーズに生産できるよう手配する。

電子・電気・OA機器業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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