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建設・設備関連業界

業界の現状と展望

造るのは身近なものから国家レベルの物まで

建設業界では、住宅をはじめ、超高層マンションやビル、さらには空港やダムなどあらゆる建築物の建設や土木工事を、一方、設備工事業界は、電気工事や空調工事、上下水道の給排水工事など建築物に付随する設備全般の工事を担っている。
建築物により、規模や用途、工事方法などが異なるため、個別に生産計画を立てる必要があり、顧客の注文を受けてから生産をスタートする「受注生産方式」を取るのが建設業界の大きな特徴。

建設業のうち約9割は中小工務店で、それぞれ、道路舗装やトンネル、高層ビル、空調工事などの得意分野を持っている。そうした中で、土木と建設の両方の工事を手掛け、工事の計画から施工管理までを行うのが総合建設業、いわゆるゼネコン(和製英語ゼネラル・コントラクターの略)だ。建設業界はゼネコンを頂点とした重層的なピラミッド構造となっているのが特徴で、中でも、国内外で大規模建造物の工事を請け負う、大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店の大手5社は、売上高・歴史・会社規模などが大きいことから「スーパーゼネコン」と呼ばれ、ピラミッドの頂点にある。

需要は堅調ながら材料費高騰、人材不足など課題は多い

1992年度の84兆円をピークに2010年度から2012年度にかけて、約42兆円まで落ち込んだ建設投資(政府投資+民間投資)だが、政府による後押しや民間需要の増加もありその後は好調に推移。人口減少による住宅建設の減少が避けられない中でも、訪日外国人の増加にともなう宿泊施設の建設、東京五輪関連施設の整備、さらには、リニア中央新幹線や高速道路の大規模更新といった大型インフラプロジェクト建設投資を後押ししてきた。
東京五輪関連需要がなくなり、コロナ禍の影響が残る中でも建設需要は堅調に推移している。国土交通省では、2022年度の建設投資は、前年度比0.6%増の66兆9,900億円と見通している。政府投資は同3.7%減の22兆5,300億円と減少しているが、民間投資が好調で、中でも民間非住宅建設投資は同7.2%増の19兆200億円となっている。また、リフォーム・リニューアル市場も堅調だ。確かに、国内の道路や橋、トンネル、河川管理施設、港岸壁施設などの老朽化した社会インフラの修繕・更新、自然災害に備えた防災・減災対策工事に加えて、大都市圏の大規模再開発プロジェクト、大阪・関西万博(正式な名称は2025年日本国際博覧会で開催地は大阪市の夢洲)、大型倉庫や物流施設の建設ラッシュなどもあり、建設需要は旺盛だ。
ただし、課題も多い。規模が大きくなるほど、ディベロッパー側の値下げ圧力も強くなり、受注競争が激化、採算性の悪化が懸念されている。また、ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響で、すでに高値圏にある原材料費はさらに上昇し、増収だが減益を見込む企業も多い。
建設業界では、高齢化に伴う技能労働者不足を補い、生産性を向上させ、働き方改革を実現するという課題も残されており、BIM/CIM(業界関連用語参照)の活用や施工ロボットの開発といったICTの積極的導入による技術的イノベーションの確立が求められている。
2020年10月、鹿島建設、清水建設、竹中工務店の3社は、建設業界全体の生産性および魅力の向上を促進することを目的に、ロボット施工・IoT分野での技術連携に関する基本合意書を締結した。技術連携を広く業界全体に働きかけ、建設業が抱える諸課題の解決を目指している。

環境に配慮したコンクリートの活用

建築材料として使用されるコンクリートは、製造過程で多くの二酸化炭素を排出するため、その削減効果は高く、建築業界が脱炭素社会に資する役割は大きい。国内外の企業が環境に配慮したコンクリートの実用化に向けた研究開発を進めており、製造過程での二酸化炭素の排出を抑えるだけでなく、二酸化炭素を吸収するコンクリートや、回収した二酸化炭素を内部に安定的に固定するコンクリートなどの開発が進んでいる。

業界関連⽤語

国土強靭化基本計画

「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向け、PDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルを繰り返し見直しながら、国土の“健康診断”を行い、国土の強靱化を推進する計画。ハザードマップの作成や避難訓練の実施、堤防や避難施設の整備といったソフト・ハード両面からの対策を組み合わせた効果的な取り組みを目指している。

サブコン・マリコン

建設業界には、独自の専門技術を活かして活躍する会社が多い。中でも、建築物の電気設備や空調設備、防災設備などを施工している会社はサブコンと呼ばれ、建築工事の一部を担っている。また、海洋土木を得意としているマリコンと呼ばれる会社もある。他にも、道路舗装を得意にしている会社や、駅舎・トンネル工事・線路メンテナンスといった鉄道事業に強みを持つ会社、地盤改良などの特殊土木に強みを持つ会社などがある。

VE方式

Value Engineeringの略で、入札・契約の際に、発注者が施工業者からコストダウンが可能な技術的提案を受け入れる入札方式。建設業界では技術開発の進展が早く、施工方法などで固有の技術や工法を有する企業も多い。そこでVE方式を用いれば、発注者側にとっては建築物の機能を低下させることなくコストを削減することができ、施工業者側にとっては蓄積した技術やノウハウを生かせるメリットがある。

i-Construction(アイ・コンストラクション)

建設現場において2016年度から国土交通省が本格的に推進している取り組み。測量から設計、施工、検査、維持管理などすべての建築工程でICT(Information and Communication Technology)を導入、建設現場における生産性向上や企業の経営環境の改善、賃金水準の向上など、魅力ある建設現場を目指している。

BIM/CIM

BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling, Management)は、計画、調査、設計段階から3次元データを導入し、事業全体におよぶ関係者の情報を共有、一連の建設生産や管理システムの効率化や高度化を目指す仕組み。これまでは、2次元の図面を使って各種作業を行っていたが、2次元図面から完成形をイメージするには経験が必要で、さらに情報共有にも複写や回覧が求められていた。3次元データを使うことで、情報共有がしやすくなり生産性の向上も期待できる。なお、BIMは主にビルや建築物で、CIMは橋やダムなどの土木構造物で利用される。

どんな仕事があるの︖

建設・設備関連業界の主な仕事

・建築士
建築物の設計、工事監理を行うほか、業務の適正化を図り建築物の質を向上させる。建築士には1級、2級、木造建築士があり、建築物は構造と規模ごとにランク付けされ、それぞれの設計範囲が定められている。

・技術士
技術士法に基づく国家資格で、科学技術の専門業務を行うことができる。「技術上の問題を発見し、それを解決する業務」、すなわち技術コンサルタントとしての業務を求められることが多い。技術士全体の8割強が一般企業やコンサルティング会社に勤務し、残りは官公庁に勤務しているほか、技術士事務所を開業して独立技術コンサルタントとして活躍しているといわれる。

・施工管理技士
工事管理者向けの国家資格で、公共工事における監理技術者になることができる。公共工事の入札参加審査に必要なため、人気の高い資格でもある。

・工事監理と施工管理
設計を担当した建築士が設計図通りに工事が行われているかを施工現場で確認することを工事監理、工事施工の指揮監督を行うことを施工管理という。

・技能士
国家検定による資格で、とび、鉄筋施工、建築大工、左官、れんが積み、防水施工、内装仕上げ施工、配管などがある。

・CADオペレーター
CADと呼ばれる図面作成支援ソフトを使って、コンピューター上で図面を作成する人、または職種のこと。在宅勤務が可能であるケースや、持っているスキルによっては比較的高収入を得ることが可能なこともあり、近年女性を中心に人気を集めている。

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建設・設備関連業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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