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鉄鋼・金属・鉱業業界

業界の現状と展望

自動車、家電、建築材料としての鉄をつくる

自動車、家電、建築材料としての鉄をつくる

鉄鋼業界は、鉄を加工してつくった素材を自動車や電化製品、建築用材料などに提供している。原料の鉄鉱石から粗鋼(高炉や電気炉などで鉄鉱石から取り出した製鋼用の鉄)まで一貫生産する高炉メーカーと、鉄くずなどを溶かして粗鋼にする電気炉メーカー、原板を加工する単圧メーカーの大きく3つに分けられる。

堅調な内需に支えられてきたが、課題が多い鉄鋼業界

ウイズコロナへの意識が高まるとともに、鉄鋼需要も回復傾向にある。国内では国土強靱化事業リニア中央新幹線、東京や大阪など大都市圏の大規模再開発事業、物流施設、倉庫など需要は堅調だ。ただし、中長期的な課題としては、人口減少によるマンションなどの住宅建築の減少や、自動車産業の海外現地生産化、ロシアによるウクライナ侵攻による影響、原材料価格やエネルギー価格の上昇、中国の過剰生産能力の削減など、企業活動に与える様々な影響が指摘されている。また、団塊世代のベテラン技術者の退職も増えており、設備の安定的な操業も留意すべきポイントだ。AIなどの導入で安定した生産と効率化を図り、収益性の向上を目指している。

加えて、カーボンニュートラルという難題にも取組まなければならない。現在の高炉は、鉄鉱石を溶かして鉄に変える作業工程で二酸化炭素が発生するため、鉄鋼業界は構造的に二酸化炭素の排出量が多い。
環境省と国立環境研究所がとりまとめたレポート(2022年4月)によれば、2020年度の日本の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素換算で、前年度比5.1%減の11億5,000万トンとなった。コロナ禍で製造業の生産量や、旅客、貨物輸送量の減少による一時的な要因と見られるが、世界の二酸化炭素排出量は増え続けており、2020年には350億トンを超えた。
また、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が2022年3月に発表した、「鉄鋼業における二酸化炭素排出削減に係る 動向と原料炭需要への影響等調査」によれば、日本の鉄鋼業における二酸化炭素排出量は1億3,700万トンと推計されており、国内の総排出量に占める比率は小さくない。
鉄鋼業界が果たす脱炭素へのインパクトは大きく、これまでも積極的に様々な企業努力を積み重ねているが、鉄鋼業界の企業には巨大な設備が求められるため、個別の企業では対応しきれないこともあり得る。政府や社会、取引企業なども含めた総合的な課題解決への取組みの検討も課題と言える。

コロナ禍の影響から立ち直り、急回復の鉄鋼業界

コロナ禍で、多くの製造業が製造を一時的に休止、鉄鋼・金属・工業業界も大きな影響を受けた。国内では長期的な縮小は避けられず年間の粗鋼生産は1億トンを下回ることになるが、自動車産業を中心に鉄鋼需要が回復、製品市況は上昇し、鉄鋼業界はV字回復を果たし、引き続き好調を維持している。
しかし、主原料である原料炭だけでなく副材料やエネルギー価格が上昇する中で生き残り、世界の鉄鋼業界で力を増す中国勢と対抗し業績を拡大させるのは容易ではない。高い技術力が必要な戦略的製品の開発はもちろん、固定費の削減や構造改革、さらには販売価格への転嫁などあらゆる手段を駆使し、聖域なき見直しを進めることが求められている。

堅調な非鉄金属業界だが、多角化と質の向上が重要

堅調な非鉄金属業界だが、多角化と質の向上が重要

鉱業・非鉄金属・金属製品業界は、輸送機器やデジタル家電向けに金属素材や金属加工製品をつくり、販売している。鉄以外の金属、金や銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属を取り扱うのが非鉄金属業界。機械、輸送用機器、電気・電子、通信などあらゆる製造業に欠かせない金属製品を出荷しており、日常的に見かける身近な製品から戦闘機などの特殊な製品まで裾野は広い。伝統的に日本は非鉄金属の精錬や製品化技術が高く、諸外国でも高評価を受けている。
長期的には非鉄金属への需要は拡大傾向にあるが、為替や資源価格の影響が大きいため、世界経済が回復傾向にある中でも、各社が以前から取り組んできた多角化の成果がどれだけ収益に貢献できるかが重要になっている。
また、独自性を発揮できる核となる得意分野の強化や効率化、海外市場での新たな顧客獲得も求められている。

原料不足の課題は、リサイクルに期待

原料となる鉱石のほとんどを輸入しているため、原料を安定的に仕入れることができないというのがこの業界の難点だった。しかし、都市で膨大に破棄される家電製品、IT製品に含まれる貴金属レアメタルも、有用な資源(都市鉱山)としての活用が期待される。
独立行政法人 物質・材料研究機構の試算によれば、日本の都市鉱山には金が6,800トン(全世界の現有埋蔵量の約16%)、銀が6万トン(同約22%)となっており、日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する埋蔵量を有しているとされる。採算性に課題はあるが、金属くずなどのリサイクル原料から銅などの金属を取り出せるようになっている。リサイクル技術が進めば、国内のリサイクル原料から、金属材料や加工材料を手に入れることができるため、安定的に製品をつくることができると注目されている。

EVシフトと脱炭素で需要増が期待できる非鉄・金属業界

コロナ禍で一時的にダメージを受けた非鉄・金属業界だが、いち早く経済回復を果たした中国経済や、EV化、脱炭素社会への取組みに向けた需要増が追い風となりそうだ。様々な分野で使われる銅や、自動車の軽量化に欠かせず、脱プラスチックに伴う缶材料として期待が高いアルミニウム、EVの中核となる次世代電池用素材など、需要増が期待できる素材は多い。中でも、銅は一般的なガソリン車で約23キロ使用されているが、ハイブリッド車では約40キロ、EVではガソリン車の4倍の83キロが必要と言われている。さらに充電装置に関わる設備にも使用されるため、急速な需要の拡大が予想されている。

業界関連⽤語

室温超伝導

一定の条件下で電気抵抗がゼロになる現象を超伝導といい、医療用の核磁気共鳴画像撮影 (MRI) 装置リニアモーターカーなどに応用されている。ただし、現状は超伝導物質をマイナス300度程度まで冷却する必要があり、より高い温度で超伝導現象となる材料の研究が盛んに行われている。2020年10月には、大気圧の約250万倍に達する超高圧という条件ながら、約15度という温度でも超伝導を実現したとの報告がなされた。実用化への課題は多いが、巨大な冷却装置が必要ない室温超伝導が実現すれば、エネルギーのより一層効率的な利用が可能となり、期待が高まっている。

鉄鋼スラグ

鉄鋼スラグとは、鉄鉱石から鉄を製造する過程で生じる副産物。粗鋼生産量の増減に応じて上下するが、2020年度の生産量は高炉スラグが1,890万トン、製鋼スラグ1,128万トン。そのままでは産業廃棄物になってしまうため、古くからスラグの有効利用が模索されてきた。現在では、自社での再利用に加えて、土木工事、セメント用材、道路用材、肥料、ロックウールなどとして活用されており、省資源、省エネルギーの観点からも評価されている。

アルセロール・ミタル(ミッタル)

ルクセンブルクに本社を置くアルセロール社と、オランダに本社を置くミタル社が、2006年に経営統合して誕生した世界有数の鉄鋼メーカー。2019年までは14年間、粗鋼生産量で世界一を守っていたが、コロナ禍で、2020年は前年比19.4%減の7,846万トンに減少。その座を、前年比20.8%増の1億1,500万トンを生産した中国宝武鋼鉄集団に譲ることとなった。上位10社のうち、中国企業が7社を占め、2位にアルセロール・ミタル、5位に日本の日本製鉄、6位に韓国のPOSCOがランクインしている。

レアアース

金属は、鉄・銅・亜鉛のように生産量が多く大量消費される「ベースメタル」と、金・銀・白金など腐食に強く希少な「貴金属」に大別される。 さらに近年注目を浴びる「レアアース」。経済産業省では「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、現在工業用需要があり今後も需要があるもの」と定義、31種類が対象とされている。強力磁石に欠かせないネオジムなど、日本の産業を支える重要な金属だ。

水素還元技術

鉄の原料となる鉄鉱石は酸化鉄。そのままでは使えないため、高炉内で酸化鉄を溶かし石炭の炭素を使って還元(酸化鉄の酸素を取り除く作業)を行っている。その際、鉄鉱石は鉄に変化し、石炭は酸素と結びつき二酸化炭素を発生する。これまでの石炭の代わりに水素を使って還元を行うのが水素還元技術。水素を使えば、二酸化炭素は発生せず水だけが生じる。政府では、2030年には商用第一号機の稼動を目標にしている。

電磁鋼板

電磁鋼板とは、電気を流した時に強い磁力を得ることができる鋼板のことで、バッテリー駆動のEVはもちろん、ハイブリッドEV(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)のような電動モーターを採用する自動車のほとんどで採用されている、高い技術力が必要な戦略製品の1つ。電磁鋼板には、圧延方向にのみ特に優れた磁気特性を持つ方向性電磁鋼板と、全方向に優れた磁気特性を持つ無方向性電磁鋼板に大別され、世界的に増加が見込まれる電気自動車用モーターで無方向性電磁鋼板の需要拡大が見込まれている。

温泉から金を採取?

海洋研究開発機構と大手重工業会社のIHI(アイ・エイチ・アイ)が、温泉の中に溶け込んでいる微量の金を取り出す特殊な方法を開発した。金は主に地下深くにあるマグマの中に含まれている。その金が、マグマの近くにある数百度の熱水に溶け出し、地上まで上昇し冷え固まったのが金の鉱脈だ。開発者らは、温泉にも含まれている可能性があると考え、秋田県の玉川温泉で実験を開始。藻の一種である「らん藻」が金を吸着する性質があることを利用し、実験を行ったところ、実際に金の採取に成功した。金の新たな回収方法になる可能性もあり、期待を込めて実験を重ねている。

どんな仕事があるの︖

鉄鋼・金属・鉱業業界の主な仕事

・営業
自動車や家電、建築用などに使われる鉄鋼を、顧客であるメーカーや卸会社に提案・販売する。

・資材調達/購買
各工場からのニーズを取りまとめて、国内外から原料や素材を仕入れる。

・商品開発
既存商品を改善するほか、新しい機能を持つ新商品をつくることができないか計画を立てて、試作や開発を行う。

・基礎研究
次世代向け製品に役立てるため、最先端技術の研究を行う。

・生産管理
制作現場の全工程を理解し、品質、コスト、時間を管理する。品質管理と効率面のコントロールが重要な仕事。

鉄鋼・金属・鉱業業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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