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百貨店・スーパー・コンビニ業界

業界の現状と展望

業態は違うがそれぞれに厳しい競争の渦中にある

業態は違うがそれぞれに厳しい競争の渦中にある

高級イメージや名物催事、あるいは「デパ地下」という言葉がすっかり定着した「百貨店」、食料品を中心に日常の買い物に不可欠な存在である「スーパーマーケット」、さまざまな商品の買い物や、ATM、宅配便、コピーやFAXといったサービスがワンストップで済む利便性が受けている「コンビニエンスストア」。
消費者に身近な存在であるこれらの店舗だが、それぞれに厳しい競争を繰り広げており、店舗数を絞る、再編が進むなど激動の時代にある。

コロナ禍の最悪期を脱し、百貨店の売上は回復傾向に

コロナ禍で、売上高はピーク時の6割程度といわれる百貨店業界。少子高齢化による消費後退や、拡大するネット通販とも対峙しなければならず、ドラッグストアなどの専門店との競争も厳しくなっている。
そのため、顧客の来店を促す魅力的な店舗運営を各社が模索している。自社で売場のありようを企画する「自主編集売場」を拡充させる百貨店もあれば、専門ショップにスペースを貸し出すことで収益を得る、脱百貨店化に軸足を置いている百貨店もなど、手法は様々だ。

百貨店は、コロナ禍で2020年はその影響が大きかったが、経済活動の正常化に伴い売上は回復傾向にある。 日本百貨店協会によると、2022年の全国百貨店の売上高は前年比13.1%増(店舗数調整後、以下同)の4兆9,812億円。全国10都市の売上は同16.9%増、10都市以外の売上も同3.5%増といずれも前年を上回った。中でも、大阪(同22.4%増)は2割以上の売上増。東京(同19.7%増)も2割近い売上増となった。他にも、京都(同16.1%増)、神戸(同14.5%増)、福岡(14.2%増)、札幌(同13.0%増)、名古屋(同12.9%増)が2桁増を記録した。
アフターコロナウィズコロナを見据えて、百貨店業界では新たな取組みを開始。動画やチャットを使ったオンラインでの接客もスタートし、デジタル化への対応を加速させている。中には在庫を持たず、販売を目的としない店舗も登場しており、来店者が商品を気に入れば、QRコードを読み取るなどしてECサイトを通じて購入してもらう仕組みだ。
さらに、インターネット上の仮想空間「メタバース」上にバーチャルな百貨店を出店。バーチャル百貨店では、来場者が自由に店内を回り、商品を確認、購入することができる。スタッフがアバターとして登場し、来場者をお出迎え。商品説明などの接客を行っている。リアル百貨店と比べれば、取扱商品や店頭スタッフ数は異なるが、メタバースであれば、遠方からも参加でき、アトラクション要素を盛り込むこともできる。リアル店舗、ECサイトに次ぐ第3の販売チャンネルとして期待されている。

高額なリベンジ消費に対応できる外商部門を強化

専門知識と丁寧な接客は百貨店ならではのセールスポイント。厳しい環境下でも、富裕層向けの高額商品の取扱いは増加傾向にあり、高付加価値商品へのニーズは高い。商品の二極化が進むと考える百貨店もあり、上客向けの「外商」部門を強化する動きも見える。デジタル化による効率向上と同時に、百貨店ならではの商品開発やラインナップ、上質な店舗接客が融合した工夫と施策が大切になりそうだ。

コロナ禍で消費者の嗜好も変化。売場作りの模索が続く中で、コンセプトスーパーが拡大

日本チェーンストア協会(56社10,683店舗)によれば、2022年の総販売額は前年比1.9%増(店舗調整後、以下同)の13兆2,656億円と、3年連続のプラスとなった。
9兆1,593億円で総販売額の69.0%を占める食料品が同0.2%減、2兆5,155億円で19.0%を占める住関品が同6.9%増、7,344億円で5.5%を占める衣料品は同4.0%増となった。
食料品は、引き続き内食化需要は強いが、結果的には微減となった。コロナ禍においても政府からの行動制限要請がなかったことから、旅行などの外出機会の増加や、昨年の内食化需要の反動減の影響もあった。天候の影響が大きい衣料品は、1~3月は厳しかったが、その後は堅調に推移。住関品は、年間を通じて堅調だった。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻もあり、穀物やエネルギーの価格が上昇しており、メーカー側だけでは値上げ分を補えず、食料品を中心に値上げを表明する企業が増えており、メーカー側と販売側とのせめぎ合いは必至の状況だ。

さらに、チェーンストア業界では、拡大しているネット通販や専門店との競争も激化している。そのため、仕入れ・物流などの効率化やリーズナブルなPB商品の拡充、大手メーカーとの共同開発の強化、ネットスーパー体制への加速など、収益力アップを目指してさまざまな取り組みが行われている。特に、コロナ禍で実店舗での購入を敬遠する人もおり、大手を中心にネットスーパー体制を強化していく流れはますます活発化しそうだ。
加えて、近年は、特定ジャンルの商品や、一定のコンセプトに見合う商品を販売する「コンセプトスーパー」も拡大している。オーガニックフードを取り揃えたスーパーや、豊富な冷凍食品だけを取り揃えた新業態のほか、こだわりの逸品やここでしか買えない限定商品を取り揃えるなど、各社は様々なチャレンジを続けている。コロナ禍を経て、より健康志向が高まった人もいれば、冷凍食品の人気に見られるように、簡便化や時短に価値を見出す人もいる。各社は新業態の店舗を展開することで、従来とは異なる消費トレンドの変化に対応できる売場作りを常に模索している。

ワンストップショッピングで来客数も客単価は増加

買い物以外にも日常のあらゆる用事を済ますことができるコンビニ。ATMはもちろん、オンラインで注文した商品の受け取りやクリーニングの受け付け、商品の宅配などサービス内容は広がるばかりだ。

日本フランチャイズチェーン協会がコンビニエンスストア大手7社を対象に行った調査によると、コンビニの2022年年間売上高は全店(既存店+新規店)ベースで前年比3.7%増の11兆1,775億円。年間来店客数が全店ベースで同0.9%増の157億969万人と4年ぶりの増加、年間平均客単価も全店ベースで同2.8%増の711.5円と増加した。一ヶ所で様々な商品の買物を済ませるワンストップショッピングが顕著になっており、全店・既存店ともに売上高が前年を上回る結果となった。コロナ禍によるまん延防止等重点措置の全面解除や、全国旅行支援の実施に伴う人流の回復などに対応した商品開発・品揃え(冷凍食品、おにぎり、弁当、揚げ物、ソフトドリンクなど)を行ったことが功を奏した。
なお、2022年12月末現在のコンビニの店舗数は5万5,838店となっている。

コンビニ各社の課題

生活インフラとして地域に根ざし順調に売上を伸ばしてきたコンビニ業界だが、すでに飽和状態という声もある。同業他社との競争に加えて、近年ははドラッグストアなどが食品販売にも注力しており、競争が厳しくなっている。そのため、来店客数の増加を見込んでコインランドリーやフィットネス施設、書店、保育園といった、これまでのコンビニのイメージとは異なる併設店を展開するなど、個性やサービスの強化に努めている。

ただし、コンビニでの業務はすでに多岐にわたっており、人材不足や人件費増といった課題に加えて、新規事業やサービスの拡充は従業員にかかる負担も増加する。そのため、業務効率化のため、従業員が接客せずに無人決済店舗無人レジの導入、陳列棚を工夫するなどの対応を進めている。
と同時に、人手不足はコンビニの24時間営業体制にも影響している。24時間営業については、各社の取り組みは異なっており、加盟店の申し出や判断で時短が可能なコンビニもあれば、本部と加盟店の双方の合意が必要としているコンビニもある。

また、社会環境の変化に速やかに対応できる商品ラインナップの拡充や、配達対応店舗の拡大など、時代の変化への対応も求められている。中でも、住宅地では身近なコンビニで買物を済ませる場面が増えており、各社は住宅地エリアでの店舗を強化。同時に成長戦略の柱として、ラストワンマイル戦略(業界関連用語参照)を重視しており、自社で配達網を整備したり、大手宅配サービス会社と提携したりと対策を進めている。

業界関連⽤語

コンシェルジュ

コンシェルジュというと、レストランや観光施設の予約などホテルで宿泊客のリクエストに対応する接客担当者というイメージが強いが、百貨店やスーパーなどでもこうしたコンシェルジュによるサービスを導入するところが増えている。豊富な経験と専門知識を持ったコンシェルジュを売場に配置することで、パーソナルできめ細やかなサービスやサポートを提供している。

シャワー効果と噴水効果

百貨店などで売上に効果的とされる販売戦略。「シャワー効果」は、最上階にレストラン街を充実させたり、上階にバーゲンや物産展などの人気の催物会場を配置したりするなどして、上から下への人の流れを作り、途中の階で何かを購入してもらうという戦略。
一方、「噴水効果」は、人気の高い食品売場や集客力の高いテナントなどを下の階に配置することで、下から上への人の流れを作る戦略。デパ地下といわれて人気の高い食品売場が1階や地下にあるのは、こうした理由がある。

食品流通の3分の1ルール

食品流通業界の商慣習で、食品の製造日から賞味期限までを3分割し、「納入期限は、製造日から3分の1の時点まで」「販売期限は、賞味期限の3分の2の時点まで」を限度とするもの。賞味期限が6カ月の場合、3分の1の2カ月目が販売者への納品期限、3分の2の4カ月目が消費者への販売期限となる。膨大な食品ロスやコスト増加の原因といわれており緩和の動きがある。
一方で、賞味期限にこだわりすぎる消費者意識の変化も求められる。

低糖質商品とブランパン

カロリーのコントロールではなく、糖質を多く含む食べ物をコントロールすることで、摂取後の血糖値の上昇やインスリンの分泌を抑えて、太りにくい体をつくろうとする低糖質ダイエットがブームになっている。そのためコンビニも、糖質を抑えた商品の展開に注力している。中でもローソンのブランパンは、低糖質ダイエットには欠かせない人気商品となった。いまではコンビニ各社だけでなく様々な食品メーカーが低糖質のパンを販売している。

ラストワンマイル戦略

物流業界の課題として語られることが多いラストワンマイル。物流サービスにおいて、最終拠点から、エンドユーザーへ商品を届ける最後の区間のことを意味する。近年はEC市場の活況もあり、ラストワンマイルでのサービスのあり方が問われている。ラストワンマイルのサービス向上は、物流事業者はもちろん販売事業者への評価にもつながり、販売戦略の大きな要素となっている。自社で配送網を整備してサービス拡充を目指す企業もある。

どんな仕事があるの︖

百貨店業界の主な仕事

・経営企画
予算編成や業務管理、店舗開発、情報システム構築、人事管理など、会社全体の経営方針の策定や経営改善策の企画立案・推進を行う。

・バイヤー
世の中のトレンドを予測し、商品を仕入れる。月や週単位での売上計画策定、期間限定ショップの誘致、折り込み広告の商品選定なども行う。仕入れではその店舗がある地域の土地柄や顧客の層を分析し、それに合った商品をそろえることが重要。

・セールスマネージャー
売り場全体の責任者。販売員をまとめ、企画やバイヤーなどの関連部署と連携を取りながら売上増を図る。

・販売
ディスプレーなどの売り場作り、顧客が商品を購入する際のアドバイスを行う。顧客のニーズをくみ上げて売上につなげるのも大切な仕事。担当売場で直接顧客と接し、顧客の望む商品やサービスを提供する。

コンビニ業界の主な仕事

・ストアインストラクター
店舗に合った品ぞろえ、製造数の改善、衛生管理など、店長をはじめ、新入社員、パート、アルバイトを指導する。

・マーチャンダイザー
オリジナル商品を開発する。商品評価、テスト販売、販売戦略についての情報発信、販売効果の検証など、開発から販売までの流れを一貫して受け持つ。

・情報システム
データベース・ネットワーク構築、POSなど、チェーンストア運営のために必要不可欠な情報システムを管理・運営する。

・スーパーバイザー
直営店の店長やスタッフ、およびフランチャイズオーナーに対し経営指導を行う。販売データ、顧客データを分析し、売上増のための対策を練る。本部と加盟店とのパイプ役。

・店舗開発
立地選定のため通行量や人口密度、顧客の層などを調査する。加盟店のオーナー候補者に店舗運営を説明し、新規出店契約を結ぶ。出店したい土地・建物の所有者や経営者に直接アプローチするのも仕事。

百貨店・スーパー・コンビニ業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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