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専門店業界

業界の現状と展望

家電量販店は横ばい、ドラッグストアは好調、ホームセンターは減少と差が出た専門店の状況

家電量販店、ドラッグストア、ホームセンター、カー用品店、衣料品店、雑貨・家具、おもちゃ、眼鏡、家具など、特定ジャンルの商品に特化して販売する専門店。豊富な専門知識と品揃えで規模を拡大してきた。
経済産業省の「商業動態統計」によれば、2022年の家電大型量販店の売上は4兆7,084億円。巣籠もり消費の反動もあり売上げを落とした前年だったが、2022年はほぼ横ばいの数字に落ち着いた。
家電大型量販店では、カメラ類(前年比7.9%増)、通信家電(同11.7%増)、住宅設備家電(同6.5%増)などの売上が良かった。一方で、ビジュアル家電(同9.7%減)、オーディオ家電(同4.9%減)など、マイナスになった分野の製品もあるが、概ね前年との大きな差違はなかった。
ドラッグストアの2022年の売上は、前年比5.5%増の7兆7,094億円と好調だった。月次ベースでも、毎月前年比で増加しており、堅調に推移している。中でも、11月は前年同月比7.9%増、12月は同11.1%増と順調な売上高となった。一方で5月は同1.7%増と、他の月との比較では伸び率が低かった。分野別では、トイレタリーが前年比3.3%減となった他は、すべて前年を上回った。その他(同10.9%増)、調剤医薬品(同9.4%増)、ビューティケア(化粧品・小物)(同7.6%増)、食品(同6.9%増)、OTC医薬品(同6.1%増)などの売上が伸びた。店舗数も17,622店から18,428店に増えている。

ホームセンターは、10月と12月以外は前年同月比で売上が減少した月が多く、2022年の売上は前年比1.4%減の3兆3,419億円となった。分野別では、その他(同2.0%増)、カー用品・アウトドア(同0.4%増)がやや売上増となったが、それ以外の分野は前年比で売上減となった。ただし、インテリア(同7.1%減)を除き、減少幅はいずれも数パーセント程度に落ち着いている。店舗数も4,377店から4,437店に増加した。

今後はアフターコロナでの勝ち残り戦略が問われることに

コロナ禍で、専門店業界では、取り扱い商材だけでなく、立地や主要客層などの違いによって、大きく明暗が分かれた。外出自粛の影響が大きい都市部の店舗の業績は厳しく、郊外の店舗の業績が支えるという構図も垣間見えた。2020年はテレワークや巣籠もり消費の特需で、家電量販店の業績が押し上げられたものの、2021年は、前期からの反動減もあった。2022年になって、極端な行動制限もなくなり、ようやく通常運転となった感がある。家電量販店業界は、従来から過当競争を指摘する声もあり、今後は勝ち残りへの戦略が問われている。
すでに、ECサイトの強化に加えて、住宅リフォームや太陽光発電システムの設置、家具、アウトドア用品、雑貨、酒類、食品など、各社はすでに非家電事業での収益確保を図っているが、コロナ後の生き残りをかけて、ビジネスモデルの転換が進みそうだ。

ドラッグストア業界では、調剤医薬品、ビューティケア(化粧品・小物)、食品、OTC医薬品などが好調で、2022年もコロナ禍で持ち上がった高水準の前年売上を上回った。ドラッグストア業界は、商品やサービスの差別化が難しいこともあり、スケールメリットを追求。これまでも、M&Aを繰り返し、規模を拡大してきた。売上高で業界1位のウエルシアホールディングスは、2022年2月期決算で売上1兆円を突破。業界2位のツルハホールディングスは2023年5月期の売上見通しを9,688億円としており、1兆円目前だ。今後は、毎年の薬価改定が待ち構えることで厳しさを増す調剤薬局に関しても、ドラッグストアを含めた再編が注目されている。また、売上増を求めるか、利益確保を優先するかの企業方針も、M&A戦略に影響しそうだ。

ホームセンターは、もともと郊外に店舗を持っていることに加え、日用品の買いだめ需要や、巣籠もり需要で家庭菜園やDIYを始める人が増加。コロナ禍で活況となった業界、引き続きPB(プライベートブランド)商品の強化や、従来とは異なる高級感を打ち出した店舗の展開、海外市場の開拓など、様々な工夫が求められている。

業界関連⽤語

ドラッグストアの業界再編

ドラッグストア業界では以前から、大手が中小を合併するケースが多かったが、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合は、業界大手同士の統合となった。ドラッグストアには、医薬部門に強みを持つ会社もあれば、食品や化粧品を強化している会社もあり様々。引き続き売上上位の企業が群雄割拠状態にあり、売上高が1兆円を越える企業も登場した。

顧客満足度(CS= Customer Satisfaction)と従業員満足度(ES= Employee Satisfaction)

自社製品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているのかを数値化したのが顧客満足度。かつては生産性や効率を多少犠牲にしても、顧客満足度を高めることがよい結果を生むといわれてきた。
たしかに、業績向上につながるかもしれないが、そのことを意識しすぎると従業員のやる気が下がり、かえって業務効率が悪くなることがある。
そのため、顧客満足度を向上させるためには、まず従業員満足度を向上させなければならないという考え方が一般的になっている。

カテゴリーキラー

ある特定の商品分野(衣類・家電・スポーツ用品・住居用品など)において、圧倒的な品ぞろえと安さを武器に展開する大型専門店のこと。また、カテゴリーキラーを集めたショッピングセンターのことをパワーセンターと呼ぶ。専門性と低価格が特徴で、都市郊外に出店することが多い。アウトレットストアやオフプライスの店を集めた「アウトレットモール」と並んで、新しい業態の商圏として注目されている。

共通ポイントシステム

スーパーや小売店、飲食店、美容室、アミューズメント施設、ドラッグストア、量販店などがそれぞれに発行しているポイントを、業種をまたいでためたり支払いに充てたりすることができるシステム。ロイヤリティマーケティングの「Ponta(ポンタ)」、楽天の「楽天スーパーポイント」、NTTドコモの「dポイント」、イオンの「WAON」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」などが有名。

調剤併設型ドラッグストア

医薬品や化粧品に限らず、食品、美容用品、健康関連用品、日用品など様々な商品を販売するのがドラッグストア。一方で、医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を販売するのが調剤薬局。近年は、利便性や集客力の向上を目的に、調剤薬局を店舗内に併設するドラッグストアが増えている。

(メーカー)指定価格

消費者が、家電量販店で高額商品やまとめ買いをする際、数店舗を回り、金額やサービス内容の交渉を行って、最も条件の良い店舗で購入するのが一般的だった。そうした中で、パナソニックによる値引き不可の取引形態、「(メーカー)指定価格」が話題になっている。特徴は、メーカーであるパナソニックが販売価格決定権を持つ一方で、販売店側の在庫リスクもメーカー(この場合はパナソニック)が負担するという取引形態だ。消費者はどの販売店でも同じ価格で購入でき、メーカーは販売店が必要な数量を納入し、売れなかった場合は返品できる。ただし、すべての商品が対象ではなく、いわゆるフラッグシップモデルと呼ばれる、販売競争力の高い商品群が中心になっている。「指定価格」による取引は、近年話題になっているが、実は2020年から始まっており、「指定価格」製品の売上高も伸びている。パナソニックによれば、2020年度は全体の2%、21年度は8%を占めており、22年度は20%まで高めたいとしている。

どんな仕事があるの︖

専門店業界の主な仕事

・営業販売
対面販売を基本とする専門店の「顔」。購入の際の参考になるよう、商品に関する専門知識を顧客に提供する。

・バイヤー
商品の仕入れ・管理を行う。旬の商品を仕入れるための情報感度の高さ、メーカーとの交渉能力が求められる。海外メーカーとの共同開発を手掛けることも。

・店舗開発
集客を左右する新店舗立地の選定、地権者との調整、テナントビルの確保など、店舗展開に関する一切の業務を行う。

・ストアマネージャー
店舗の責任者として、スタッフをまとめたり売上を管理したりするなど、現場のすべてを仕切る。

・スーパーバイザー
店舗を巡回し、よりよい売り場づくりやスタッフ教育など総合的なアドバイスを行う。

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専門店業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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