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教育業界

業界の現状と展望

主に進学向け、社会人向けの2つに大別される

主に進学向け、社会人向けの2つに大別される

教育業界では、初等教育(小学校)、中等教育(中学校・高校)や、高等教育(専門学校・高等専門学校・短期大学・大学・大学院)での学習や受験などに関連するものに加えて、社会人はもちろん、乳幼児から高齢者まで、何らかの形で「学ぶ」に関するサービスを提供する。
小・中・高校生を対象とした「進学向け」と、キャリアアップを目的とした「社会人向け」の2つに大別され、進学向けでは少子化により子どもの数は減っているものの、新しい業態やサービスといった販路拡大により、堅調な伸びを見せている。

社会人向けでは高齢化に伴い定年後の自己啓発や各種講座へのニーズが高まっている。また、キャリアアップ、独立志向、再就職のために各種資格や外国語検定の取得を目指す人も増加傾向にある。さらに、外国語を中心とした乳幼児向けの教育プログラムも拡充している。

コロナ禍で一時的に落ち込んだ市場はコロナ前の規模に。

矢野経済研究所は、2021年度の教育産業全体の市場規模(学習塾・予備校、家庭教師派遣、幼児向け通信教育、学生向け通信教育、社会人向け通信教育、幼児向け英会話教材、資格取得学校、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児受験教育、知育主体型教育、幼児体育指導、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集の主要15分野)を調査。
事業者売上高ベースで、前年度比5.0%増の2兆8,399億1,000万円としている。

少子化が続く厳しい市場環境が避けられない中でも、教育関連市場は、底堅い需要を見せ売上は堅調だった。2020年こそコロナ禍で前年度比2.7%減となったが、2021年度でコロナ前の2019年の事業者売上高(2兆7,746億8,000万円)を上回るにいたった。
感染防止策を講じた上での学習サービスを概ね提供できたことに加えて、オンラインの併用によるサービス提供体制が整ったこともプラスに働いた。
2022年度についても、事業者売上高ベースで前年度比1.7%増の2兆8,882億4,000万円と予想している。

少子化で二極化が進む学習塾。早期の囲い込みと独自性が重要に

教育業界の課題は引き続き、少子化に伴う市場規模縮小だ。また、大都市と地方都市での事業環境の格差が拡大し、二極化が進んでいる。各社は安定的な生徒数を確保することで、収益性の維持・向上を目指している。いかに魅力や独自性を発揮し、早期に囲い込んで顧客化するかにも智恵を絞っている。さらに、近年は個別指導を取り入れる学習塾が増加傾向にあり、集団指導から個別指導への移行は大きな流れとなっている。個別指導では、学校の補習だけでなく、受験を意識した授業に力を入れる学習塾も増えている。

一方で、創業者の引退に伴う事業継承が課題となる塾もある。ほかにも、オンライン授業を実施したことで、これまで教室がなかったエリアへも商圏が拡大し、全国の学生が潜在顧客になったことをプラスに捉える企業もあり、再編が徐々に顕在化していく可能性もある。

増加傾向にある小中・中高一貫教育校

1998年の学校教育法改正により、公立学校での中高一貫校が新設されるようになった。
それまでの中高一貫教育は、中学校と高等学校のそれぞれが最低1校ずつ必要であったが、改正後は単一の学校(中等教育学校)が6年間の一貫教育を行えるようになった。

6年間一貫教育を行うことで、これまで高校で教えていた内容の前倒し履修や、部活も含め中高の円滑な交流が可能になるなどの利点がある。加えて、小中合わせて9年間の義務教育を一貫して行う学校も徐々に増えてきている。

「ゆとり教育」から「学力重視」へ。新学習指導要領実施

小学校では2011年度から、中学校では2012年度から、そして高校では2013年度から新学習指導要領の下での教育が始まっている。
新しい学習指導要領では、子どもたちの「生きる力」を今まで以上に育むことを目標としており、知識の詰め込み学習ではなく、学んだことを実際の生活で使える=活用できることが重視されている。

また2018年2月には2020年度以降の小中学校の教育内容を定めた次期学校指導要領改正案を発表。プログラミング教育が必修化されたほか、英語の授業も始まった。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、高等学校では2022年度からの全面実施を予定している。

業界関連⽤語

フリースクール

フリースクールとは、いじめや勉強についていけない、先生が嫌いなどの理由で学校に行けない子供たちを受け入れ、自立や学びの機会を提供する施設で、全国に400カ所以上ある。私立学校の認可を受けたフリースクールもあるが、NPO法人やボランティア、個人経営の施設が多い。教育理念や方針などはまちまちで、かかる費用も一様ではない。

EdTech(エドテック)

Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、インターネットなどを活用した教育サービス。有名なものに、欧米の超有名大学の講義も受講できる大規模公開オンライン講座サービスのMOOC(Massive Open Online Courses)がある。すべての学校で1人1台の情報端末を配布する、高速大容量通信ネットワークを整備するなどの、ITC教育の環境整備を進めるギガスクール構想や、EdTech導入補助金交付など、様々な施策が立ち上がっており、これまでになかった教育の提供や変革が期待される。

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)

国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムで、国際的な視野を持った人材を育成するため生徒の成長段階や進路に応じて4種類のプログラムを提供している。日本でも、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得した者は、高校卒業者と同等以上の学力があると認定されている。文部科学省もグローバル人材育成の観点から、国際バカロレアの普及・拡大を推進している。文部科学省によれば、国際バカロレアのプログラムは、全て導入することも、どれか1つのみ導入することも可能となっている。国際バカロレアの認定を受けている学校は、2022年5月時点で、世界159以上の国・地域において約5,500校。国内では191校(学校教育法第一条に規定されている学校は72校。2022年12月31日現在)となっている。

OECD生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessment, PISA)

経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査。頭字語からPISAと呼ばれる。
義務教育の修了段階の15歳児の知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度生かせるかを評価する調査。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、2000年の第1回以降、3年ごとに実施されている(2021年の試験はコロナ禍で2022年に延期)。
2018年の調査では日本は平均得点が高い上位グループに位置しているが、科学的リテラシーは5位、数学的リテラシーは6位、読解力は15位と、いずれも前回より低下した。(1位はすべて中国の北京・上海・江蘇・浙江)。

リカレント教育

リカレントとは、反復や循環、繰り返すという意味で、リカレント教育とは、学校教育から一旦離れて社会人になってからも、必要に応じて教育機関で教育を受ける、社会での仕事と教育機関での勉強を繰り返す教育モデルのこと。なお、リカレント教育も、広い意味では生涯学習の一部と言えるが、MBAや会計士、語学能力の向上、プログラミングのスキルアップなど、仕事に活かすための知識やスキルを習得することが主な目的で、豊かな人生を送るための生きがいとして生涯に渡って学びを続ける学習(生涯学習)とは目的が異なる。

大学ファンド

世界トップレベルの研究基盤の構築と支援を長期的・安定的に行える財源の確保を目的として設けられた大学ファンド。10兆円規模の公的資金を原資に、年3,000億円程度の運用益を目標に掲げている。2022~2023年度に支援大学を選定、世界と伍する研究大学となるためのポテンシャルを有する大学を「国際卓越研究大学(仮称)」として国が認定する。ファンドは、2021年度から運用を始め、2025年から1校あたり年間数百億円規模のファンド運用益を配分する計画になっている。

アクティブ・ラーニング

文部省の用語集によれば、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」で、「教室内でのグループ・ディスカッションディベートグループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」とされている(一部を抜粋)。日本語では「能動的学習」と言われており、児童、生徒、学生等の学修者が受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうよう設計されている。講師には、議論を上手くハンドリングし、学修者が自ら考え、それぞれの考えを引き出していく能力が求められる。近年は、大学入学試験において、知識を問うだけではなく、知識や資料を活用して考える問題や、表現力を問われる問題が増えており、アクティブ・ラーニングを授業に取り入れる学校も多い。

どんな仕事があるの︖

教育業界の主な仕事

・講師
生徒への学習指導。時には進路や生活などの相談に乗り、指導も行う。

・教室マネジャー
講師のマネジメントやイベント企画の立案・実行など、1つの教室運営にかかわるすべてを担う。

・広報
生徒獲得のための広報宣伝活動を行う。少子化による子供の絶対数減少の中、広報の力がますます問われる。

・教務事務
入塾・入学の手続きや生徒の管理、講師のサポートなどを行う。

・教材・講座の企画、制作
市場のトレンドや需要を的確につかみ、売れる教材や講座の企画や制作に当たる。

・学校教員
小中学校教員は、義務教育として定められた科目を教え、高等学校教員は、それぞれ専門とする教科を教える。
また、いずれも生徒の生活面や進路についての指導にも当たる。大学教員は、教授、准教授、講師または助手を指し、専門分野に特化した教育、研究、進路指導を行う。

・学校職員
教育研究以外の事務や労務を中心とした学生生活全般の支援、学校運営を行う。
また、文化推進のための情報発信や文化活動の企画・運営や学校の広報活動も行う。

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※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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