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冠婚葬祭業界

業界の現状と展望

婚姻件数の減少や少子化、少人数婚が影響

婚姻件数の減少や少子化、少人数婚が影響

冠婚葬祭業界は、人が生まれてから亡くなり、その後に執り行われる法事までを含めた催し物全般を取り扱う分野。「冠」とはもともと元服(成人を示すために行われる儀式)に由来するもので、今では成人式などでのお祝いを指すことが多い。「婚」は結婚式、「葬」は葬式のこと。「祭」は法事など先祖の霊をまつること全般をいう。
中でも、結婚相談、結婚情報サービス、結婚式場など「婚」にかかわるブライダル業界は規模が大きい。

厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、2021年の婚姻件数は50万1,116組で、前年より2万4,391組下回ったものの、矢野経済研究所では、ブライダル関連6市場(挙式披露宴・披露パーティ、新婚家具、新婚旅行、ブライダルジュエリー、結納式・結納品、結婚情報サービス・仲介業の主要6分野)は、復調傾向にあると見込んでいる。中でも、全体市場の半分以上を占める挙式披露宴やパーティ市場が回復に転じたことが大きいと指摘している。市場規模は、2021年は前年比17.6%増の1兆4,945億円、2022年は同9.7%増の1兆6,400億円と予測している。
近年は、婚約指輪を買わない、結納をしない、入籍しても挙式披露宴を行わないなどのナシ婚や、親族を中心に少人数に絞り込む少人数婚、新婚旅行に行かないというカップルが増えているなど、結婚式単価そのものが下がっていることは課題とされていた。コロナ禍と関係なく結婚に対する価値観の多様化は以前から始まっており、ブライダル業界では、挙式披露宴やパーティに続く事業の柱を模索する動きはあった。

結婚やプロポーズを支援する事業、結婚式を挙げずに好みのロケーションで写真撮影だけ行うフォトウエディング事業など、従来通りの挙式披露宴にとらわれず、顧客の様々なニーズに応じた柔軟な対応やサービスの提供が求められている。また、近年は、マッチングアプリなど市場はさらに多様化しており、規模の拡大が期待されている。

競争の激化と葬儀の多様化で売上は横ばい

葬儀業界は、葬儀一式を請け負う。宗教や慣習などに関する相談やトラブル対応など、アドバイザー的役割も果たしている。近年は少しずつ葬儀の形が変化し、故人が好きだった音楽を式場に流す「音楽葬」や樹木を墓標とする「樹木葬」、身内だけで行う「家族葬」、火葬のみを行う「直葬(火葬式)」など、新しい葬儀のスタイルも増えている。

また、葬儀の料金体系は利用者にとってわかりづらいと言われていたが、生前にあらかじめ葬儀方法・料金を決めておく生前予約の定着や、必要最低限のサービスをパックにして低料金で提供する業者も登場しており、葬儀自体が多様化している。
厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、2021年の死亡数は143万9,809人。前年を6万7,054人も上回る結果となった。2020年は11年ぶりに死亡数が前年比で減少したが、2021年は戦後最多の死亡数となった(なお、出生数は81万1,622人で、こちらも過去最小)。高齢化社会の日本では、死亡数自体は増加傾向にあり、75歳以上の高齢者の死亡数は2012年からは、全死亡数の7割を超えている。
今後は、コロナ禍で控えていた参列の増加は予想されるが、葬儀自体を簡素化する流れは長期化しそうだ。葬儀業界にとってはプラスとなる要素はあるものの、市場自体は必ずしも活況とは言えない。


理由としては、流通業、電鉄各社、ホテル、生花店、農協などからの新規参入が相次いでおり、既存業者との競争が激化していることがある。さらに、高齢の死亡者が多いため知人などの参列者が少ないこと、近所付き合いの希薄化や核家族化で、葬儀自体の規模が小さくなっていることも影響している。中には、遺族の事務手続きや遺品・遺産整理などのいわゆる「終活サービス」事業に進出する企業もある。

コロナ禍で変化した冠婚葬祭のあり方

コロナ禍で、外出の自粛に加えて、3密を避けることが求められたため、多くの人が集まる冠婚葬祭業界には痛手となった。結婚式自体を延期・中止するケースも多く、挙式する場合も参列者を少人数に絞るなど、規模の縮小を余儀なくされた。葬儀では、参列者をごく近い近親者だけに絞る、会葬者への飲食提供を中止するなどの対策がとられ、通夜や告別式を行わず火葬だけを選択するケースもあった。

最近ではオンラインでの式なども登場。コロナ後に冠婚葬祭の規模や内容がコロナ前と同様に回復するかは不透明だ。ウエディング同様に、顧客の様々なニーズに応じた柔軟な対応やサービスの提供が求められており、今は将来の冠婚葬祭のあり方を見直す新たな局面にあると言えそうだ。

業界関連⽤語

令和婚

例年11月22日(いい夫婦の日)がある11月は婚姻件数が多くなる傾向にある。2019年は元号が平成から令和に代わったこともあり、令和元年(1年)11月11日に婚姻届けを出したカップルも加わり、「令和婚」と話題になった。人口動態統計速報(令和元年11月分)によれば、令和元年11月の婚姻数は、前年比30.0%増の7万6,064件と大幅増となった。

 

僧侶派遣

お寺との付き合いがない人が増えており、葬儀会社に僧侶の手配や紹介を依頼することも多い。しかし、僧侶への支払金額や内容が不明瞭との声もあり、近年は僧侶の手配サービスを専門に行う業者が増えている。特徴は、料金が明確で安価、いわゆる“心づけ”も不要なこと。さまざまな宗派の僧侶を定額で日本全国に手配する「お坊さん便」は、大手通販サイトアマゾンでの取り扱いもあり、よく知られている。

ハウスウエディング

一軒家を結婚式の会場として貸し切り、挙式をするウエディングスタイル。「我が家にゲストを呼んで式を挙げる」というコンセプトで、アットホームな雰囲気が人気となっている。
会場を貸し切ることで、さまざまな趣向を凝らすことができるため、オリジナリティーを重視するという最近のニーズにもマッチして、市場は年々拡大している。

家族葬

家族などの近親者だけで葬儀を行うこと。なお密葬は、近親者やごく親しい友人だけで行う葬儀のことをいい、日を改めて別途本葬(お別れ会やしのぶ会など)が行われる。
従来は本葬を行わずに、密葬だけを行うことはほとんどなかったが、近年は、家族葬密葬ととらえて、本葬を行わない密葬も増えている。なお、お通夜・告別式を行わず、火葬のみを執り行う葬儀は火葬式直葬という。

宇宙葬

新しい葬儀スタイルの一つで、故人の遺骨や遺灰を専用カプセルに納めて、宇宙空間で散骨する。もともとはアメリカで始まった葬儀スタイルだが、近年は日本でも宇宙葬に対応する会社も増えている。専用カプセルを人工衛星で打ち上げて、流星となって大気圏で燃え尽きる流れ星供養や、地球の外周を回り続ける人工衛星プラン、宇宙の果てをめざす宇宙探検プラン、専用カプセルを月まで送る、月面供養と言われるプランもある。なお、巨大なバルーンに入れて成層圏まで送るバルーン葬も、広義の宇宙葬に含まれることもある。

どんな仕事があるの︖

冠婚葬祭業界の主な仕事

・ウエディングプランナー
結婚を考える顧客のカウンセリングをし、会場や演出、費用などのプランを作成する。

・メモリアルディレクター
葬儀の企画、予算の見積もり、会場の設営、儀式の司会進行などを行う。

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冠婚葬祭業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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