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業界の現状と展望

環境衛生からセキュリティまで快適環境を支える

オフィスビルは、朝早くから夜遅くまで多くのスタッフが集まる空間だけに、電気や通信、空調、給排水、エレベーターなどの各設備のほか、環境衛生や警備、防災など、快適なビル環境を保つためのいろいろな管理が必要となる。

それを取りまとめるのが、ビル管理・メンテナンス会社の仕事。
空き室があればテナント誘致をしたり、長期的に運営できるよう修繕計画を立てたりするなど、常に快適で魅力的なビルであり続けるために尽力している。

市場は安定するも、人材確保に課題。派生する関連サービスや新規事業も

市場は安定するも、人材確保に課題。派生する関連サービスや新規事業も

オフィスビルに関しては、再開発地区や都心では、高いセキュリティや通信環境を備えた最先端ビルなど、年々高機能化している。それに伴い、管理する側の専門知識や技術も一層の多様化、高度化が求められている。人材の確保が難しい中で、優秀な人材の育成も課題となっている。

管理・メンテナンスの対象はオフィスビルに限らず、病院、マンション、官公庁、商業施設などさまざまで、まだ拡大の余地はあると考えられる。また、ビル管理業務の拡大を目指す一方で、長期的にはビル管理以外への進出の可能性を示している企業も多く、ビル管理から派生する関連サービス領域への進出や、異業種との協業もあり得る。

今後はよりきめ細かなニーズに基づいた対応が重要になってくる。大手の寡占が進むと見られる一方、抱えている仕事内容が多様であることから、特定の業務・分野についての専門性を高めた中小の企業が強みを発揮できる業界でもある。

コロナ禍で、テレワークの実施や事務所スペースの削減、商業施設の営業自粛などがあった中でも、大きく落ち込むことはなかった国内ビル管理市場。矢野経済研究所によれば、2022年度の国内ビル管理市場規模は前年度比1.0%増の4兆3,855億円と見込んでいる。コロナ禍にあっても、職場環境の変化やオフィスのレイアウトを見直す動きがあれば、オフィスの改修工事が発生するため、緊急時においてもコンスタントなストック収入があることが特徴だ。

業界では、引き続き人材不足という課題を解消しつつ、新たな業務運営のあり方も模索している。コロナ禍で密を避けるため、人の手によらない管理業務のニーズが高まったこともあり、清掃ロボット警備ロボットの活用なども進展。労働集約型産業と言われる業界にとって、デジタル化による効率化のメリットは大きい。また、大手の管理会社の中には、値上げをしぶる物件からの撤退も視野に、量から質への戦略に転換するところもある。一方、独立系の管理会社がそうした撤退物件の受け皿となり、管理だけでなく修繕工事などの周辺サービスも含めて受注するケースも増えつつある。

注目を浴びるセキュリティ関連市場

注目を浴びるセキュリティ関連市場

セキュリティ業界では、法人・個人を問わず、防犯システムの導入や警備などを行っている。泥棒(空き巣・居抜き・忍び込み)といった身近な犯罪の脅威だけでなく、世界各地で発生するテロによる爆発事件や凶悪犯罪に直面している現在。自宅への防犯カメラの設置など個人の防犯意識の高まりに加え、高齢者向けサービスの多様化、ドローンを利用した飛行型警備用ロボットなど、さまざまな切り口でセキュリティ市場が注目されている。

街頭監視、駅や空港、宿泊施設や商業施設、オフィスビルなどでの入退室・情報管理、サイバー空間など、多様なニーズが徐々に現実のものとなっており、セキュリティ関連製品の需要も本格化している。

また、個人が自宅でホームセキュリティサービスに加入するケースも増加傾向、「あおり運転」対策のためにドライブレコーダーを取り付けるなどの、自動車分野の伸びも期待されている。

他にも、指紋が鍵になるシステムや、ネットワークカメラ(防犯・監視カメラ)や赤外線センサーで監視するシステム、24時間対応のコンシェルジュサービスなど、付加価値の高いセキュリティサービスにも注目が集まっている。

最先端技術を使った警備システムの構築と事業化に注目

コロナ禍でのイベント中止や規模縮小は、業界にとって大きなマイナス要因となった。一方で、コロナ禍で、安心・安全への意識が高まったこともあり、警備の必要性や重要性が再認識された面もある。ただし、東京オリンピック・パラリンピックを異例の14社によるJV(共同企業体)で臨んだように、人材不足の解消は大きな課題だ。

全国の警備員の3割は65歳以上の高齢者と言われており、警備員というと、高齢者が多いというイメージがある。確かに、交通誘導などを中心業務とする中小規模警備会社では、高齢化が進んでいる。一方で、大手企業が得意とする機械警備(防犯カメラや特殊なセンサーが異常を感知すると警備員が現場に急行する)や、規模の大きな商業施設や多目的ビルなどで、警備員を常時配置する常駐勤務を担う大手警備会社では、若手や中堅社員が主戦力になっている。

近年は、人との接触をできる限り避ける非接触技術AIを使った顔認証や防犯カメラ画像分析、5Gによるバーチャル警備員警備ロボットドローンの現場導入など、人の手によらない新しいセキュリティシステムや監視システムの研究・開発に余念がない。

業界関連⽤語

戦場での武器と化したドローン。貧者の武器として脅威も

国内のドローンは、農業、自然災害救援、測量、セキュリティ、建設など、様々な民生用分野で活躍。ドローンの利用が、作業の効率性と安全性を向上させるので、多くの人にとって重要なツールとなっている。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻で、ドローンが強力な攻撃用武器として使用されていることが明らかになった。
ドローンを使って、敵の動静を探ったり、場所を特定したり、攻撃を加えることが現実に行われてしまった。また、ミサイルとは速度や攻撃力はまったく異なるが、「自爆用ドローン」と言われるドローンは、目的地に向かって飛行し攻撃を加える。AIを搭載した高性能なドローンでは、上空を旋回することで位置情報や距離などを正確に割り出し、攻撃を加えることができる。

元々ドローンは、第二次世界大戦以前の古くから武器として開発されており、アフガニスタン戦争イラク戦争でも爆撃に使用されていたが、ウクライナで、高性能化したドローンが戦況に与える影響を目にすることが増えるほどに、ドローンの研究・開発は日々進化。同時に、ドローンを防ぐ防空システムの開発も進むことになる。 さらに、近年は民生用ドローンに手製の爆発物を取り付けるなど不正改造が行われたドローンも登場。「貧者の武器」とも呼ばれ、悪意ある第三者が、こうした攻撃に使えるドローンを大量に所有すれば、世界的な脅威になりかねない。

建物のLCC

Life cycle costの略で、建物を建設してから、運用、廃棄に至るまでにかかるすべてのコスト。
建物は竣工後も、修繕・更新費、運用費、保守・管理費などが必要で、解体廃棄に至るまでに要するコストは建設費の3~4倍といわれている。

そのため、建物の運営や修繕・更新などのプロパティマネジメントを適切に行うかどうかで、発生する費用や建物の寿命が大きく変わる。また、建物によって異なるので、最適かつ長期的なマネジメントが必要。

プロパティマネジメント(Property Management)

土地や建物などの不動産に関する管理や最適化を行う業務で、建物の物理的な管理・維持、テナントや賃借人の誘致・交渉、賃料の請求・回収、トラブル時の対応などがある。

十分なメンテナンスを怠ると、経年変化で設備の陳腐化や資産価値の下落をもたらすことになり、資産価値の向上には、最新のIT化への対応や、防災対策などを加えた、適切なプロパティマネジメントが求められている。

ソフトターゲット

警備や監視が手薄で攻撃されやすい標的のこと。多くの人が集まる繁華街や施設などはテロの標的になりやすく、海外では博物館、劇場、レストラン、空港、コンサート会場といった場所で実際にテロ事件が発生している。また、近年は爆発物や銃といった武器を使わず、人混みに車両が突入するというケースも増えている。日本でもソフトターゲットに対する対策が急務といえる。

どんな仕事があるの︖

ビル管理・メンテナンス業界の主な仕事

・設備・施工管理
電気、空調、エレベーターなど設備の定期点検を担当し、安全な運営を支える。

・運営管理
ビル運営をスムーズにするための管理を担当。入居者やテナントとの賃貸契約や契約更新、要望への対応などを担当する。

・営業
立地や建物の種別を踏まえてビルの管理計画を立て、オーナーに提案する。

・プロパティマネジメント
ビルを1つの財産と考え、テナントの募集から設備メンテナンスまで、資産価値を高めるためのプランを練って、運営を管理する。

セキュリティ業界の主な仕事

・営業
企業や個人に向けて、安全を守るシステムや機器、サービスを提案する。

・警備スタッフ
ビルや住宅で契約に応じた警備サービスを行う。

・技術
安全を守る機器やシステムの点検やメンテナンスを行う。

・企画開発
新しいセキュリティサービスや機器の企画開発をする。

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※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

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